変形性膝関節症における経口メトトレキサートにより痛みは緩和される?【Journal Club 2024/11/20】

Pain Reduction With Oral Methotrexate in Knee Osteoarthritis A Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial

変形性膝関節症における経口メトトレキサートによる疼痛緩和-無作為プラセボ対照比較試験(PROMOTE試験)

Sarah R. Kingsbury, PhD; Puvan Tharmanathan, PhD; Ada Keding, MSc; Fiona E. Watt, MD; David L. Scott, PhD; Edward Roddy, DM; Fraser Birrell, PhD; Nigel K. Arden, PhD; Mike Bowes, PhD; Catherine Arundel, MSc; Michelle Watson, MSc; Sarah J. Ronaldson, MSc; Catherine Hewitt, PhD; Michael Doherty, MD; Robert J. Moots, PhD; Terence W. O’Neill, MD; Michael Green, MB, ChB; Gulam Patel, MA; Toby Garrood, PhD; Christopher J. Edwards, MD; Phil J. Walmsley, MD; Tom Sheeran, MD; David J. Torgerson, PhD; and Philip G. Conaghan, PhD Ann
Leeds Institute of Rheumatic and Musculoskeletal Medicine, University of Leeds, and National Institute for Health and Care Research (NIHR) Leeds Biomedical Research Centre, Leeds, United Kingdom
Intern Med. 2024;177:1145-1156

——————————————————-

<サマリー>
155人の被験者がMTX群77人・プラセボ群78人無作為に割り付けられた。
変形性膝関節症における通常の鎮痛薬に経口MTXを追加すると、6ヶ月後の疼痛はNRSで0.79低下し、こわばり・機能を評価するスコアでも有意に認められた。
変形性膝関節症の疼痛緩和にMTXが有用な可能性が示唆された。

——————————————————-

P:X線写真で確認できる変形性膝関節症と膝痛(VAS 40mm以上の重症度)があり、通常の鎮痛薬に十分な反応が得られていない患者
E:MTX 10-25mg/週の投与
C:プラセボの投与
O:6ヶ月時点での平均NRS 

<背景>
・変形性膝関節症は世界中で約3億6400万人の成人に影響を及ぼしており、過去20年間で有病率が増加している。治療法はNSAIDsが中心となっているが、その副作用から使用しにくい患者も多い。

<セッティング>
・英国の15箇所のSecondary care clinicで2014年6月13日〜2017年10月13日に実施された。

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・多施設 優越性ランダム化比較試験 二重盲検

<Population、およびその定義>
・ACRの診断基準を満たす原発性変形性膝関節症と診断された18歳以上の患者の中で、24ヶ月以内に撮影されたX線写真でOAに一致する変化が認められ、過去3ヶ月間のほとんどの日に膝痛があり、過去3ヶ月間の膝痛のVASが40mm以上、アセトアミノフェン・NSAIDs・オピオイドなどの鎮痛薬に対する反応が不十分であるか、以前に不耐または禁忌であったこと、同意前の4週間は安定した鎮痛療法(栄養補助食品を含む)を受けていたこと
・除外基準:炎症性関節炎患者, 線維筋痛症, 過去4ヶ月以内の関節ヒアルロン酸の使用, 過去3ヶ月以内のグルココルチコイドの使用(関節内・筋肉内・経口), 2ヶ月以内のHCQなどの使用, OA以外の要因による膝の疼痛, コントロール不良の疾患状態(中東度以上の喘息や炎症性腸疾患など), 再発性感染症
・参加者はRF, 抗CCP抗体, CRPについてはスクリーニングされている

<主な要因、および、その定義>       
・週1回の経口MTXの投与
・10mg/wを2週→15mg/wを2週→20mg/wを2週→以降は25mg/wを上限に増量
・被験者に最大耐用量にできるだけ近付けられるように臨床医の判断でより緩やかな用量増加が許可された
・用量増加の過程でMTXの毒性が見られた場合は、最大耐用量まで減量し、7.5mg/wに耐えられない患者は治療を中止とした

<Control、および、その定義>
・プラセボ
 ※MTX群・プラセボ群ともに週1回の投与の6日後から6日連続でFA 5mgが処方されている

<主なアウトカム、および、その定義>
・主要評価項目:6ヶ月時点での「前の週の膝の疼痛の平均NRS」
・副次評価項目:3, 6, 9, 12ヶ月目に測定したWOMACによる疼痛/機能/強張り, ICOPAP, OMERACTORASI responder index, QOL, 最悪の膝の疼痛(NRS), 他の関節痛(NRS)

<解析方法>
・主要解析はITTで行われた
・割付け、時間、割付けと時間との交互作用、年齢、性別、体格指数、ベースラインの鎮痛薬使用効果、およびモデル化された結果におけるベースラインの結果を含む施設のランダム効果を考慮した、共分散パターン線形混合モデルが使用された

<結果>
・207人がスクリーニングされ155人が無作為に割り付けられた(MTX群:77人 プラセボ群:78人)
・平均年齢60.9歳で50%がKellgren-Lawrence grade3-4で61.9%が両膝に症状あり
・ベースラインの膝関節NRS:MTX群 6.4(SD:1.80) プラセボ群 6.8(SD:1.62)
・6ヶ月後の膝関節NRS:MTX群 5.1(SD:2.32) プラセボ群 6.2(SD:2.30)
・MTX群で0.79ポイントのNRSの有意な改善を認めた(95%CI:0.08-1.51, p=0.030)
・WOMACのこわばりは0.6ポイント(95%CI:0.01-1.18, p=0.045), 機能は5.01ポイント(95%CI:1.29-8.74, p=0.008)
・治療順守の分析では用量反応効果が裏付けられた
・12ヵ月後には、MTX群では鎮痛薬の減少傾向が、プラセボ群では鎮痛薬の増加傾向が認められた

<結果の解釈・メカニズム>
・6ヶ月時点でのMTXの有益性は12ヶ月時点では認められなかった
   →12ヶ月時点での平均MTX用量が減少した影響?
・MTXの鎮痛反応に関する作用機序は十分に解明されていない
・一部の患者ではMRIを撮像していたが、滑膜容積の変化と治療反応性に相関はなかった

<Limitation>
・MTX内服が不耐の場合皮下注射に変更することができない
・12ヶ月という追跡期間は慢性疾患であるOAの観察機関としては短い可能性がある
・OAの有病率に比してサンプルサイズが小さい可能性
・OAには5つの構造的表現型があるとされるが、炎症型の表現型の患者の内訳が不明
・患者背景が日本人と比して高BMIである点や、MTXの使用量/FAの投与方法に違いがある

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・OAの中でもMTXの効果が得られる表現型が存在する可能性を念頭に置いて診療を行う

<この論文の好ましい点>
・MTXとプラセボを比較した二重盲検化RCTである点

 

担当:高橋 克典

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始