Recommendations for the definition, evaluation, and treatment of nail psoriasis in adult patients with no or mild skin psoriasis: A dermatologist and nail expert group consensus
皮膚乾癬のない、あるいは軽度の成人患者における爪乾癬の定義、評価、治療の推奨: 皮膚科医と爪の専門家グループのコンセンサス
J Am Acad Dermatol. 2019 Jul;81(1):228-240.
【方法】
運営委員会(爪乾癬の経験を有する4人の皮膚科医で構成)
PubMed、Medscape、Medlineを用いて、以下の検索語を用い
”爪乾癬”、”爪乾癬治療”、”爪生物学的製剤”、”爪+全身または局所薬剤名”文献検索
10人以上のケースシリーズを含む出版物のみを、分析の対象とした。
文献レビューに基づいて、爪乾癬の重症度グレードと治療に関する推奨事項に関する2つの調査票が作成され、専門家パネルに回付された。専門家パネルは、運営委員会の監督のもと、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、米国の皮膚科医18名から構成され、調査に参加してもらった。参加者は、臨床診療、臨床試験、またはその両方において、爪と皮膚の乾癬の診断および/または管理に豊富な経験を持っている。
調査の第1ラウンド
参加者各自が、爪乾癬の重症度グレードと成功した治療の評価に関する自由形式の質問を含む、初期アンケートに回答した。
初期アンケートの回答と文献検索の結果をもとに、疾患の重症度と治療法に関する推奨事項に関するより広範なアンケートを専門家パネルに提供した。
第2ラウンド
第1ラウンドで回収したアンケートをライブミーティングを開き徹底的に議論した。
【結果】
爪乾癬治療の推奨
■患者教育:
ケブネル現象を避けるための一般的な予防法が推奨される。爪を噛んだり、裂いたり、外傷、爪ヤスリ、爪化粧品の頻繁な使用、頻繁に水に触れること、人工爪やジェルネイル、甘皮を引っ張ったり、噛んだり、切ったりすること、ハイヒールやつま先の狭い靴を履くこと、足の爪を端から丸く切ることを避けるべきである。
指先作業では手袋を、濡れた作業にはビニール手袋の下に薄手の綿手袋を着用を推奨。
爪は短くし、手や爪に保湿効果のある外用剤を頻繁に使用すること。
外反母趾に適切な靴の中敷のフィッティングを整形外科医に相談。
■併存感染症の検索(白癬など)
■薬剤使用のポイント(Figure1)
・外用薬(TableⅢ)
・局所注射
トリアムシノロン5-10mg/mL
0.1-0.5mL/回を4-8週間おき ×3-6セッションで評価
・全身薬(TableⅤ)の使用も推奨
全身治療は、
①通常、爪≧3か所が侵されているケース
②QOLに重大な影響を及ぼしているケース
③PsAを併発している症例では、関節病変の重症度も全身治療の選択に影響する。
・アシトレチン(日本未承認)は、0.2~0.4mg/kgを6ヵ月間、または少なくとも中等度の改善が認められるまで投与する。
・シクロスポリンは、3~5mg/kgの用量で、中等度の改善が認められるまでの短期治療にのみ推奨。
・メトトレキサートは、少なくとも中等度の改善が記録されるまでは、爪乾癬の治療に、適切なモニタリングのもと、葉酸の併用または非併用(その国の規則による)で、15mg/週までの用量で使用できる。メトトレキサートは、中等度の改善を達成するのに必要な用量に応じて、減量して維持療法として使用することができる。
・生物学的製剤の全身投与は、一般に皮膚と爪の両方の乾癬を改善する。
■抗TNFα阻害薬IFX,ETN,ADA,GLIM
■IL-12/23阻害薬ウステキヌマブ
■IL-17阻害薬セクキヌマブおよびイキセキズマブ、
■ホスホジエステラーゼ4阻害薬アプレミラス
■JAK1/3阻害薬であるトファシチニブ
セルトリズマブ・ペゴルとIL-23阻害剤であるグセルクマブは、それぞれPsAまたは乾癬の治療を受けている患者の爪乾癬に対しても成績が良い。
インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ウステキヌマブについては、爪乾癬の徴候が長期的に維持され、特筆すべき副作用がないことが報告されている。
文責:高橋良