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Comparison of a voclosporin-based triple immunosuppressive therapy to high-dose glucocorticoid-based immunosuppressive therapy: a propensity analysis of the AURA-LV and AURORA 1 studies and ALMS
ループス腎炎における低用量GC+ボクロスポリン+MMF vs 高用量GC+IVCY vs 高用量GC+MMFの効果と安全性の比較
Dall’Era M, Kalunian K, Solomons N, Truman M, Hodge LS, Yap E, Askanase AD.
University of California San Francisco School of Medicine, San Francisco, California, USA.
Lupus Sci Med. 2024;11:e001319
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<サマリー>
PSマッチを用いてvoclosporin、MMF、低用量GCからなる3剤免疫抑制療法と、高用量GCを主体とした2剤免疫抑制療法を比較した。治療開始から6か月間において、voclosporinを含む3剤免疫抑制療法は、高用量GCを主体とする2剤免疫抑制療法と比較して、安全性が高く、タンパク尿の減少も早く大きい
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<背景>
・治療開始後の早期のタンパク尿減少は、ループス腎炎における長期的な腎機能を保ち、および死亡率低下と関連
・活動性ループス腎炎では、高用量GCを用いた二剤併用免疫抑制療法が頻繁に使用
・AURA-LVおよびAURORA 1では、MMFおよび低用量GCを用いたボクロスポリンベースの三剤併用免疫抑制療法により、安全性と早期のタンパク尿減少を証明
・本研究では、少量GC、ボクロスポリンベースの三剤併用免疫抑制療法と、ALMSでの高用量GC、シクロホスファミド静注、およびMMFによる治療法の安全性と有効性を比較
<研究デザインの型>
・RCTを利用した二次解析
<Population、およびその定義>
・AURA-LV試験(n=89):ボクロスポリン23.7mg 1日2回 + MMF 2g/日 + ステロイド(最大25mg/日)
・AURORA 1試験(n=178):ボクロスポリン23.7mg 1日2回 + MMF 2g/日 + ステロイド(最大25mg/日)
・ALMS試験(n=185):MMF 3g/日 + ステロイド(最大60mg/日)
・ALMS試験(n=185):IVC 0.5-1.0g/m²/月 + ステロイド(最大60mg/日)
<主な暴露、および、その定義>
・ボクロスポリン+MMF vs IVCY or MMF
<主なアウトカム、および、その定義>
・有効性:3ヶ月と6ヶ月での尿蛋白量減量
①ベースラインから3か月までにUPCRが25%以上低下
②6か月までにUPCRが50%以上低下
③6か月時点でUPCRが0.5 g/g未満まで低下
・安全性
<解析方法>
・以下の項目を用いたPSマッチングで179組を作成
年齢、性別、LNの罹病期間、SLEの罹病期間、アルブミン、C3、C4、血清Cr、dsDNA、eGFR、UPCR、腎生検組織型、地域
・メイン解析:ロジスティック回帰モデル(調整変数:ベースラインUPCR、腎生検組織型、地域)
・ベースラインからの変化:治療群とベースライン値を共変量とする一般線形モデルから算出された最小二乗(LS)平均と95%信頼区間
・時間イベント:中央値、Kaplan-Meier、Cox比例ハザードモデルからHR
<結果>
・voclosporin投与群の179名(78名AURA-LV、101名AURORA 1)
・ALMS:91名IVC投与群、88名MMF投与群
・ベースライン時背景は3つの治療群間で類似
・ヒドロキシクロロキン使用者:voclosporin群は45.3%であり、IVCY群(18.7%)、MMF群(15.9%)より高率
・ClassⅣは3群とも50%程度、ベースラインUPCRはいずれの群でも4.2-4.3g
薬剤
・3か月時点の平均経口GC量は、IVCY群21.6mg/日、MMF群21.5mg/日であり、voclosporin群6.6mg/日
・6か月時点でもIVCY群9.7mg/日、MMF群10.0mg/日、voclosporin群5.2mg/日
・3か月および6か月時点で1日7.5 mg以下GC量7.5mg以下は、voclosporin投与群の方が多い
・MMFの平均累積投与量および1日当たり投与量は、ALMSのMMF群がAURA-LVおよびAURORA 1のvoclosporin群よりも高値
安全性
・3か月および6か月時点での全AEはALMSにおけるIVCおよびMMF投与群で多い
・ただし、GFR低下、高血圧、貧血は、voclosporin投与群で多い
・SAEは、治療群間で同程度
・死亡例:6か月間の観察で、IVC群0例、MMF群4例(4.5%:間質性肺疾患、消化管結核、呼吸器感染症、肺炎が各1例)、voclosporin群7例(3.9%:肺炎2例、肺塞栓症2例、結核性心膜炎1例、急性呼吸窮迫症候群1例、多臓器不全症候群1例)
eGFR変化
・voclosporin投与開始後4週間以内にeGFR低下(平均−2.3 mL/分/1.73 m^2)が出現し、その後はeGFRの推移は安定し、平均値は正常範囲を維持
・平均補正eGFR
voclosporin投与群のベースラインで77.4 mL/分/1.73 m^2、24週時点で78.2 mL/分/1.73 m^2
MMF群:ベースライン77.4 mL/分/1.73 m^2、24週時点84.2 mL/分/1.73 m^2
IVC群:78.3 mL/分/1.73 m^2と82.3 mL/分/1.73 m^2
効果
・3か月時点では、voclosporin投与群の方がベースラインからのUPCRを25%以上低下した割合が有意に高い結果
・6か月時点では、UPCRが0.5 g/g以下に到達した割合はIVCY群と比べると数値上はvoclosporin群の方が高いものの有意ではない。一方、MMF群との比較ではvoclosporin群におけるUPCR 0.5 g/g以下への到達率が有意に高値
・ベースラインからのUPCRが50%以上低下した割合も、IVCY群またはMMF群よりvoclosporin投与群が有意に高い
・任意の時点でUPCR 0.5 g/g以下に到達した割合は、voclosporin投与群で52%、IVCY群で40.5%、MMF群で41.8% (voclosporin vs IVC:HR 1.43、95%CI 0.96–2.13、voclosporin vs MMF:HR 1.39、95%CI 0.93–2.07)
・ベースラインからのUPCR 50%以上低下を任意の時点で達成した割合は、voclosporin群で89.9%、MMF群で74.4%、IVCY群で76.3%(voclosporin群vsIVCY群:HR 2.02(95%CI 1.50–2.73)、voclosporin群 vs MMF群: HR 1.67(95%CI 1.24–2.25)
・6か月間におけるUPCRのベースラインからの変化量は、voclosporin投与群で−2.98g/g、IVC群で−2.30g/g、MMF群で−2.75g/g
<Limitation>
・副作用の判定は、試験により異なる
・傾向スコア解析は、まれな有害事象(特定のAEや重篤AE、死亡など)を正しく示さないことがある
・ALMS試験とAURA-LV/AURORA 1試験の実施は15年の差があり、治療変化がある(例えばHCQ使用率)
・事前のMMF使用制限があったALMSの方が、軽症な症例が多く含まれていた可能性
・6Mまでの結果であること
<研究の強み>
・データ収集が前向きであり欠測が少ない
<メカニズム>
・多剤併用療法は、LNの多様な病態に対応しうる。voclosporinはT細胞を介した免疫抑制作用を示すだけでなく、シナプトポジンの脱リン酸化を阻害してポドサイトの保護に関与し、タンパク尿を抑制する効果も報告
・PSL関連のAEは減らすことができる
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・ACR LNガイドライン2024の推奨を支持する結果であり、3剤治療が標準へ
・しかし、重症度高い症例は高用量Cが必要の可能性はありうる
文責:矢嶋宣幸