急性CPP結晶性関節炎に対する10mgと30mgの経口プレドニゾロンの有効性と安全性は変わる?【Journal Club 2025/03/12】

Efficacy and safety of 10 mg versus 30 mg of oral prednisolone for acute CPP crystal arthritis: findings of a randomized controlled trial

急性CPP結晶性関節炎に対する10mgと30mgの経口プレドニゾロンの有効性と安全性:ランダム化比較試験

Wuttirak Leelasattakul · Wanjak Pongsittisak · Siriporn Manavathongchai · Panchalee Satpanich
Rheumatology Division, Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine Vajira Hospital, Navamindradhiraj University, Bangkok, Thailand.
Clinical Rheumatology, 2024;24:3879-3888

——————————————————-

<サマリー>
急性CPP結晶関節炎の治療で、プレドニゾロン10 mgと30 mgの有効性と安全性を比較した無作為化試験を実施。症状の完全消失までの時間は両群で同等(中央値7日)であり、臨床的改善や再発率ともに有意差はなかった。プレドニゾロン10 mgと30 mgは、CPP結晶関節炎の急性期管理において同等の効果を示した。

——————————————————-

P(患者集団): 急性CPP結晶関節炎の患者(発症72時間以内)
I(介入): 30 mg/日 プレドニゾロン(7日間)
C(比較): 10 mg/日 プレドニゾロン(7日間)
O(アウトカム): 症状の完全消失までの時間(主要評価項目)、臨床的改善までの時間、副作用、再発率

 

<セッティング>
 ・タイのバンコクにある大学病院(期間は2021年11月23日から2024年4月30日)

<研究デザインの型>
 ・無作為化対照オープンラベルRCT

<Population、およびその定義>
 ・18歳以上、発症72時間以内のCPP結晶関節炎患者
 ・関節穿刺によりCPP結晶を確認して診断
 ・敗血性関節炎や制御不能な感染症を除外

<主な要因、および、その定義>       
 ・プレドニゾロンの投与量(10 mg vs. 30 mg)

<Control、および、その定義>
 ・10 mg/日 プレドニゾロン群

<主なアウトカム、および、その定義>
 ・主要評価項目:症状の完全消失までの時間
 ・副次評価項目:臨床的改善までの時間、再発率、副作用

<交絡因子、および、その定義>
 ・年齢、性別、BMI、関節炎の発症期間、関与関節数、基礎疾患(高血圧、糖尿病、慢性腎疾患)

<解析方法>
 ・多変量解析:一般化線形モデルを使用し交絡因子を調整
 ・交絡調整:最小二乗平均値を用いて解析
 ・欠測対処:最後の観察値を保持する方法(LOCF)を適用
 ・二次解析・感度解析:VASスコアの経時的変化を視覚化

<結果>
 ・症状の完全消失までの中央値は両群とも7日(p=0.73)。
 ・30 mg群の臨床的改善は早かったが(1日 vs. 3日, p=0.03)、調整後は有意差なし(p=0.27)。
 ・再発率は14.3%で、30 mg群の方がやや高い傾向があったが有意差なし(p=0.08)。
 ・両群の副作用発生率に有意差なし(p=0.87)。

<結果の解釈・メカニズム>
 ・プレドニゾロン10 mgと30 mgの効果は同等で、低用量でも十分な治療効果を発揮する可能性
 ・高用量(30 mg)は初期改善が早いものの、交絡因子を調整するとその差は有意でなくなる。
 ・再発率は30 mg群でやや高い傾向があるが、統計的に有意ではない。

<Limitation>
 ・研究期間が短く、長期的な再発率の評価が不十分。
 ・オープンラベル試験であり、バイアスの可能性。
 ・プレドニゾロン以外の治療法(NSAIDsやコルヒチン等)との比較がない。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
 ・CPP結晶関節炎の治療において、低用量(10 mg)のプレドニゾロンが有効である可能性。
 ・高齢者や基礎疾患を持つ患者において、副作用を考慮し低用量から開始する選択肢を推奨。
 ・長期的な再発率や他の治療法との比較を行う追加研究が必要。

<この論文の好ましい点>
 ・無作為化対照試験(RCT)であり、エビデンスレベルが高い。
 ・患者選定において関節穿刺による診断を行い、診断精度が高い
 ・臨床的に有意義なプレドニゾロンの投与量の検討。

<この論文にて理解できなかった点> 
 ・長期的な影響についての評価が不足している。
 ・低用量プレドニゾロンの効果が十分であるメカニズムの詳細な検討が必要。

 

担当:斉藤拓哉

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始