うつ病と関節リウマチの関連性の検討 【Journal Club 2025/07/09】

Association between depression and rheumatoid arthritis: two longitudinal follow-up studies using a national sample cohort

うつ病と関節リウマチの関連性:全国サンプルコホートを用いた2つの縦断的追跡研究

So Young Kim, Min ChanyangDong Jun OhHyo Geun Choi
Department of Otorhinolaryngology–Head and Neck Surgery, CHA Bundang Medical Center, CHA University, Seongnam, Korea
Rheumatology 2020; 59:1889–1897 

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<サマリー>
韓国成人において、RAはうつ病のリスクを高めるが、うつ病はRAのリスクを高めなかった。

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<研究1> P:韓国成人 E:うつ病あり C:うつ病なし O:RA発症        

<研究2> P:韓国成人 E:RAあり C:RAなし O:うつ病発症

<研究デザイン>
 ・縦断的観察コホート研究

<Population>
 ・2002年から2013年までの韓国医療保険審査評価院-全国サンプルコホートのデータ(HIRA-NSC)
 ・20歳以上
 ・<研究1>うつ病患者(38087人)、対照群(152348人) 1:4のマッチング
 ・<研究2>RA患者(7385人)、対照群(29540人) 1:4のマッチング
 ・うつ病の診断は、ICD-10のコードから抽出し、2回以上治療を受けた患者
 ・RAの診断は、ICD-10のコードとbDMARDsかcsDMARDsを使用した患者
 ・マッチング項目:年齢(5歳刻み)、性別、収入(ランク1-5)、居住地域(都市田舎)
 ・除外基準:マッチング不一致、死亡例、20歳未満、(研究1)研究開始前にRA診断、(研究2)研究開始前にうつ病診断

<主な要因、およびその定義>
 ・(研究1)うつ病あり、(研究2)RAあり

<コントロール>
 ・(研究1)うつ病なし、(研究2)RAなし

<主なアウトカム、およびその定義>
 ・(研究1)RA発症のリスク、(研究2)うつ病発症のリスク

<解析方法>
 ・層別Cox比例ハザードモデル
 ・データは、チャールソン併存疾患指数(CCI)で調整。CCIの中からリウマチ性疾患の項目は除外
 ・解析ソフト:SPSS。

<結果>
研究1:うつ病から関節リウマチへのリスク(総参加者数1125691人) 
 ・うつ病群のRA発症率:0.7%(1260/38,087)

 ・対照群のRA発症率:0.6%(883/152,348)
 ・統計的有意差あり(P=0.020)だが、調整後ハザード比(HR)は有意差なし(HR=1.09、95% CI: 0.94–1.25、P=0.255)
 ・年齢・性別によるサブグループ分析でも有意なHR上昇は認められず

研究2:関節リウマチからうつ病へのリスク(総参加者1125691人) 
 ・RA群のうつ病発症率:5.5%(408/7,385)

 ・対照群のうつ病発症率:4.3%(1246/29,540)
 ・統計的に有意(P<0.001)
 ・調整後ハザード比(HR)は1.20(95% CI: 1.07–1.34、P=0.002)で、RA患者はうつ病リスクが有意に高かった
 ・30歳以上、特に女性でうつ病リスクが高くなる傾向
   ・30–59歳:HR=1.17(95% CI: 1.01–1.36、P=0.036)
   ・60歳以上:HR=1.29(95% CI: 1.08–1.55、P=0.006)
   ・女性:HR=1.19(95% CI: 1.05–1.35、P=0.006)

<メカニズム>
 ・30歳以上と女性のRAはうつ病の発症率が高い。その理由としては、炎症性サイトカインが高いからか。特にIL-1β、TNFα、IL-6, ケモカインなど。
 ・既報ではRAとうつ病の双方向の関連が報告されていたが、これまでの研究では、HT, DM, CKD, 脳卒中、心臓病などの併存疾患の発症率が異なる。本研究ではCCIを導入し調整したので、このような結果になった。

<Limitation>
 ・韓国限定
 ・RAやうつ病の疾患活動性、重症度の評価ができていない
 ・未測定交絡因子の存在(肥満、喫煙、飲酒、職業、身体活動強度など)

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
 ・RA患者はうつ病の発症率が高いのでその点を考慮して診療にあたる
 ・うつ病患者はRAの発症率を上昇させないので、その点は考慮しなくてもよい

<この論文の好ましい点>
 ・全大韓民国大規模研究
 ・CCIにて調整をおこなっていること
 ・収入、居住地域といった社会経済的要因を考慮していること

担当:三輪裕介

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