
Association between depression and rheumatoid arthritis: two longitudinal follow-up studies using a national sample cohort
うつ病と関節リウマチの関連性:全国サンプルコホートを用いた2つの縦断的追跡研究
So Young Kim,
Department of Otorhinolaryngology–Head and Neck Surgery, CHA Bundang Medical Center, CHA University, Seongnam, Korea
Rheumatology 2020; 59:1889–1897
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<サマリー>
韓国成人において、RAはうつ病のリスクを高めるが、うつ病はRAのリスクを高めなかった。
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<研究1> P:韓国成人 E:うつ病あり C:うつ病なし O:RA発症
<研究2> P:韓国成人 E:RAあり C:RAなし O:うつ病発症
<研究デザイン>
・縦断的観察コホート研究
<Population>
・2002年から2013年までの韓国医療保険審査評価院-全国サンプルコホートのデータ(HIRA-NSC)
・20歳以上
・<研究1>うつ病患者(38087人)、対照群(152348人) 1:4のマッチング
・<研究2>RA患者(7385人)、対照群(29540人) 1:4のマッチング
・うつ病の診断は、ICD-10のコードから抽出し、2回以上治療を受けた患者
・RAの診断は、ICD-10のコードとbDMARDsかcsDMARDsを使用した患者
・マッチング項目:年齢(5歳刻み)、性別、収入(ランク1-5)、居住地域(都市田舎)
・除外基準:マッチング不一致、死亡例、20歳未満、(研究1)研究開始前にRA診断、(研究2)研究開始前にうつ病診断
<主な要因、およびその定義>
・(研究1)うつ病あり、(研究2)RAあり
<コントロール>
・(研究1)うつ病なし、(研究2)RAなし
<主なアウトカム、およびその定義>
・(研究1)RA発症のリスク、(研究2)うつ病発症のリスク
<解析方法>
・層別Cox比例ハザードモデル
・データは、チャールソン併存疾患指数(CCI)で調整。CCIの中からリウマチ性疾患の項目は除外
・解析ソフト:SPSS。
<結果>
研究1:うつ病から関節リウマチへのリスク(総参加者数1125691人)
・うつ病群のRA発症率:0.7%(1260/38,087)
・対照群のRA発症率:0.6%(883/152,348)
・統計的有意差あり(P=0.020)だが、調整後ハザード比(HR)は有意差なし(HR=1.09、95% CI: 0.94–1.25、P=0.255)
・年齢・性別によるサブグループ分析でも有意なHR上昇は認められず
研究2:関節リウマチからうつ病へのリスク(総参加者1125691人)
・RA群のうつ病発症率:5.5%(408/7,385)
・対照群のうつ病発症率:4.3%(1246/29,540)
・統計的に有意(P<0.001)
・調整後ハザード比(HR)は1.20(95% CI: 1.07–1.34、P=0.002)で、RA患者はうつ病リスクが有意に高かった
・30歳以上、特に女性でうつ病リスクが高くなる傾向
・30–59歳:HR=1.17(95% CI: 1.01–1.36、P=0.036)
・60歳以上:HR=1.29(95% CI: 1.08–1.55、P=0.006)
・女性:HR=1.19(95% CI: 1.05–1.35、P=0.006)
<メカニズム>
・30歳以上と女性のRAはうつ病の発症率が高い。その理由としては、炎症性サイトカインが高いからか。特にIL-1β、TNFα、IL-6, ケモカインなど。
・既報ではRAとうつ病の双方向の関連が報告されていたが、これまでの研究では、HT, DM, CKD, 脳卒中、心臓病などの併存疾患の発症率が異なる。本研究ではCCIを導入し調整したので、このような結果になった。
<Limitation>
・韓国限定
・RAやうつ病の疾患活動性、重症度の評価ができていない
・未測定交絡因子の存在(肥満、喫煙、飲酒、職業、身体活動強度など)
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・RA患者はうつ病の発症率が高いのでその点を考慮して診療にあたる
・うつ病患者はRAの発症率を上昇させないので、その点は考慮しなくてもよい
<この論文の好ましい点>
・全大韓民国大規模研究
・CCIにて調整をおこなっていること
・収入、居住地域といった社会経済的要因を考慮していること
担当:三輪裕介