
High risk of bloodstream infections, diverse causal pathogens, and association with haemodialysis and plasma exchange in ANCA-associated vasculitis
ANCA関連血管炎における菌血症のリスクは?
Bruun NT, Kofod DH, Carlson N, Hornum M, Fosbøl EL, Østergaard L, Volstedlund M, Finsen SH, Moser C, Rydahl C, Ivarsen P, Gregersen JW, Egfjord M, Szpirt WM, Nelveg-Kristensen KE; Danish Vasculitis Association (DANVAS)
Department of Nephrology, Copenhagen University Hospital-Rigshospitalet, Denmark, Copenhagen.
Rheumatology (Oxford). 2025 Aug 19:keaf438. doi: 10.1093/rheumatology/keaf438.
——————————————————-
<サマリー>
・AAV患者は血流感染症リスクが増加し、特に診断後1年以内にリスクが高い
・血漿交換と血液透析は1年目の感染リスク増加と関連している
・AAV患者は対照群と比較して血流感染症病原体の範囲がより広い
P:デンマーク国民レジストリ
E:AAVの診断
C:性別と年齢でマッチングした一般集団
O:血流感染症(BSI)の発生率(1000人年あたり):BSI後の1年死亡率
副次アウトカム:BSIの原因微生物の分布、複数BSIエピソードの発生
——————————————————-
<わかっていること>
・AAVの免疫抑制治療の進歩により過去数十年間で生存率は大幅に改善している。
・免疫抑制治療による感染症、感染症関連の入院、死亡リスク増加は関連している。
・強力な免疫抑制治療を行う診断早期に最もリスクは高い。
<わかっていないこと>
一般集団と比較したBSIリスク、原因微生物の違い、中心静脈カテーテルとの関連を調べた研究はほとんどない。
<今回の研究目的>
新規AAV患者におけるBSIの発生率、その後の死亡リスク、BSIリスクの経時的変化、細菌種分布を調査し、CVCの影響を明らかにする
<セッティング>
デンマークレジストリ(国民患者、医薬品統計、国民死因、微生物学データベース)
<研究デザインの型>
後ろ向きマッチドコホート研究
<Population、およびその定義>
デンマークのナショナルデータベース
<主な要因、および、その定義>
1995年1月1日〜2018年5月14日までにGPAまたはMPAと診断された患者937名
<Control、および、その定義>
年齢・性別、診断日マッチングした(Exposure density sampling)一般集団 3,476名
<主なアウトカム、および、その定義>
・初回BSI 特定の微生物学的原因を伴う少なくとも1つの陽性血液培養として定義
・起炎菌
<交絡因子、および、その定義>
年齢、性別、診断年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、既存のCKD、高血圧、糖尿病、血液透析、血漿交換
<解析方法>
・両群の患者背景の差はカテゴリ変数はカイ二乗検定、連続変数で正規分布ならスチューデントの t 検定、正規でないならマン=ホイットニー検定で評価
・標準化平均差(SMD)をすべてのベースライン変数について計算し、AAV患者と対照群間の共変量バランスを定量化し、0.10を超える値を意味のある不均衡として解釈
・死亡を競合イベントとして扱う競合リスク解析を行いAalenn-Johnsen推定量を求め、gray検定で群間の曲線差を検定
・交絡になり得る項目(年齢、性別、包含年、COPD、既存 CKD、高血圧、糖尿病、血液透析(HD)、血漿交換(PLEX))で調整しCox比例ハザードモデルでハザード比を算出
・感度解析としてカテーテル感染でBSIが増えるという影響を外すため、血漿交換、血液透析に曝露した人を外して解析
<結果>
・2010年から2018年の間に937名の新規AAV患者を同定し、これは年間100万人あたり20.1例の新規症例
・3,476名がマッチングされた対照群として含まれた。
・AAV患者ではわずかに男性優位(n=486、51.9%)で、年齢中央値は66歳(IQR 52-73)、追跡期間中央値は3.0年(IQR 1-5)
・AAV患者は対照群と比較して、高血圧、糖尿病、腎疾患を含むより多くの併存疾患
・937名のAAV患者のうち80名(8.5%)で計111件のBSIが同定され、3,476名の対照群のうち58名(1.7%)で65件のBSIが判明
・BSIを発症したAAV患者は高齢(年齢中央値72.5歳)で、主に男性であった(43例[53.8%])。BSIを発症した対照群と比較して、AAV患者は以下併存疾患を有していた:腎疾患(24例[34.8%])、糖尿病(16例[23%])、高血圧(27例[39%])、虚血性心疾患(10例[14.5%])、肺出血(12例[17.4%])、COPD(9例[13%])、既往の癌(14例[20.3%])。
・1000人年あたりのBSI発生率はAAV患者で34.5、対照群で4.8(P for difference <0.0001)。
・AAV診断から初回BSI発症までの期間中央値は261日(IQR 63-839)で、対照群は1001日(IQR 428-1395)
・AAV患者で観察された87件の初回BSIのうち、56件(64%)が最初の12か月に発生
・AAV患者のうち、34名(42.5%)が初回BSI時に血液透析を受けており、13名(16.3%)がPLEXを開始
・AAV診断後60日以内に、BSIエピソードを経験した19名の患者のうち12名(63.2%)がPLEXを開始、うち、同時に血液透析を受けた6名を含有(31.8%)
・初回BSI後の1年死亡率は、AAV患者で80名中29名(36.3%)、対照群で58名中20名(34.5%)で、AAV患者の死亡までの期間中央値は51.0日(IQR 14-128)、対照群は41.5日(IQR 15-225)(P = 0.531)。
・全追跡期間中の血流感染症(BSI)の累積発生率は、AAV患者で対照群と比較して有意に高い
・AAV患者の1年BSI発症リスク:HR 10.5(95% CI 5.58-11.9)
・血液透析実施患者:HR 34.8(95% CI 3.35-360.8)
・血漿交換実施患者:HR 14.6(95% CI 3.79-56.6)
・診断後120日でリスクが急速に低下し、その後HR約3で安定
・BSI後1年死亡率:AAV患者36.3% vs 対照群34.5%(有意差なし)
・大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌、連鎖球菌がAAV群と対照群の両方でBSIの主要な原因
・大腸菌は対照群で最も一般的な起炎菌だった(n=20、30.8%)が、AAV患者では原因菌がより多様で、症例の約半数(54[48.6%])がCoNS、肺炎桿菌、緑膿菌、真菌などの他の病原体によるもの
・複数のBSIエピソードを示す対照群では、大腸菌、腸球菌、黄色ブドウ球菌のみが原因菌として出現し、大腸菌が多かった。一方、複数のBSIエピソードを有するAAV患者では細菌病原体のスペクトラムがより大きな多様性
・BSI時にHDまたはPLEXを受けていたAAV患者では、ほとんどの感染が黄色ブドウ球菌、CoNS、腸球菌
・対照的に、BSI時にHDまたはPLEXを受けていないAAV患者の起炎菌は、主に大腸菌と連鎖球菌が優勢で、対照群と同様
<結果の解釈・メカニズム>
・AAV治療における高いBSI発生率は、導入療法初期の強力な免疫抑制と侵襲的処置により生命予後は改善したが、疾患関連死から治療関連死への移行が新たな課題
・血漿交換については、PEXIVAS試験やMEPEX研究などの大規模RCTが、死亡率や腎予後の改善効果を示せず、むしろ感染リスクの増加を報告しており、本研究の実臨床データは、中心静脈アクセスを要するPLEXが初年度BSIリスクを著明に増加させることを示し、RCTの知見を補完
<Limitation>
・レジストリデータのため入院中投与薬剤(シクロホスファミド、リツキシマブ)のデータなし
・疾患活動性のデータがない
・微生物学的データは採取部位が記録されていない
・コアグラーゼ陰性グラム陽性球菌はコンタミネーションの可能性あり
・研究期間が2010年〜2018年
<結果と結論が乖離していないか?>
乖離していない
<この論文の好ましい点>
菌種のデータがあり、これまで報告されていない新たなデータになる。
文責:小黒奈緒