
Continuation Versus Temporary Interruption of Immunomodulatory Agents During Infections in Patients With Inflammatory Rheumatic Diseases: A Randomized Controlled Trial
炎症性リウマチ疾患患者における感染時の免疫調整薬継続 vs 一時中断 無作為化比較試験
Merel A A Opdam, Nathan den Broeder, Reinout van Crevel, Lisa Schapink, Léon Raymakers, Jasper Broen, Lise M Verhoef, Alfons A den Broeder
Sint Maartenskliniek, Radboud University Medical Center, Nijmegen, The Netherlands
Clinical Infectious Diseases, 2025;, ciaf442, https://doi.org/10.1093/cid/ciaf442
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<サマリー>
RAなどで免疫調整薬使用中の患者が感染症に罹患した際に、「一時中断」と「継続」のどちらが安全かを検討した多施設RCT。1142例中474例が感染症を経験し、重症感染症は中断群5.1%、継続群3.7%で有意差なし。免疫調整薬の継続は感染転帰を悪化させず、むしろ安全である可能性が示唆された。
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P:リウマチ疾患(RA, PsA, axSpA)、免疫調整剤を使用中の患者
I:感染時に免疫調整薬を継続する群
C:感染時に免疫調整薬を一時中断する群
O:重症感染症(入院や点滴の抗菌薬を要する感染)の発生割合
<わかっていること>
・免疫抑制剤使用中の患者は感染リスクが高い
・感染時の免疫抑制剤中断が一般的に推奨されているが、明確な根拠は乏しい
・一部の免疫抑制剤は過剰免疫反応を抑制し、感染の重症化を防ぐ可能性もある
<わかっていないこと>
・感染症発症時に免疫調整薬を継続することが安全か否か
・中断による疾患活動性増悪やGC使用増加の影響
・感染アウトカムに対する免疫調整薬を継続する実際の影響
<今回の研究目的>
・感染時における免疫調整薬の継続と一時中断の感染転帰を比較すること
・特に重症感染症の発生率の差を明らかにすること
<セッティング>
・オランダ国内の5施設(Sint Maartenskliniek, Máxima Medical Centre)
・登録期間:2020年10月〜2023年7月
・多施設・前向き・オープンラベルRCT 盲検化なし
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・多施設・オープンラベル・ランダム化比較試験(RCT)
<Population、およびその定義>
・RA・PsA・axSpA患者
・年齢16歳以上
・免疫調整薬(bDMARD, csDMARD, tsDMARDなど)を使用中
・登録時点で感染を有さない者
・追跡中にGrade ≥2(内服抗菌薬が必要なレベル)の臨床的に有意な感染を経験した474例(mITT集団)
<主な介入、および、その定義>
・継続群:感染時も免疫調整薬を中止せず継続
<Control、および、その定義>
・感染時に免疫調整薬を一時中断した群
<主なアウトカム、および、その定義>
Primary outcome
・CTCAE Grade ≥3の重症感染症(入院または点滴治療を要する感染症)
Secondary outcomes
・感染持続期間、感染部位・種類
・有害事象
・疾患活動性(患者自己評価 0–10スケール)
<交絡因子、および、その定義>
・TNF阻害薬使用の有無
・副腎皮質ステロイド併用
・COVID-19重症化リスク(CDC分類)
→ これらで層別化してランダム化
→ 解析ではCochran–Mantel–Haenszel法で補正
<解析方法>
・主解析:modified ITT(感染発生例のみ)
→ 重症感染発生率のリスク差(Cochran–Mantel–Haenszel法)
・その他解析:
- Complier Average Causal Effect(CACE)解析:割付順守例のみ評価
- 副次解析:疾患別・薬剤別・併用GC別サブグループ
・ソフトウェア:STATA 17 / RStudio
<結果>
・登録:1,142例(追跡1667患者年)、感染症発生474例(mITT)
・重症感染率:
・中断群:12/233(5.15%)
・継続群:9/241(3.73%)
→ 調整リスク差:+1.71%(95%CI −1.99〜+5.39)
・ CACE解析:順守例に限定すると +4.51%(−7.3〜+16.3)で継続群有利
・感染期間中央値:中断群12日 vs 継続群11日(p=0.63)
・重症感染率は低く(2.6/100患者年)、感染の65%は呼吸器系(うちCOVID-19 25%)
<結果の解釈・メカニズム>
・一時中断により免疫調整薬の血中濃度が下がるまで時間を要し、感染経過への影響は限定的
・中断により疾患活動性悪化→ステロイド増量→感染リスク増大の可能性
・一方、免疫調整薬の継続により過剰免疫反応を抑え、感染重症化を防ぐ可能性
(例:TNF阻害薬、IL-6阻害薬、JAK阻害薬はCOVID-19や敗血症で使用される)
・実臨床でも、免疫調整薬継続の安全性が示唆
<Limitation>
・重症感染発生が少ない
・一時中断群での非遵守(IAを継続した例が多い:45%が実際に中断):
一時中断群(233人)のうち、実際に中断したのは約45%
継続群(241人)のうち、実際に継続したのは約86%
・長間隔投与薬(例:ADAなど)では実際の中断困難である
・オープンラベルであり、実際の対応が主治医判断に左右されうる→逆に臨床に近いかも
・感染報告が患者自己申告ベースを含む
・多様な免疫調整薬を一括評価しており、薬剤それぞれの違いや特徴は不明
<結果と結論が乖離していないか?>
No 主要解析・CACE解析いずれも同方向の結果であり、結論「免疫調整薬継続は安全」は妥当
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・感染時の免疫調整薬の中断は必ずしも必要ではない
・疾患活動性とステロイド増量リスクも考慮する。長期的にGCが増えてしまう可能性あり
・今後は薬剤別・感染種別の大規模RCTやメタ解析が必要
・患者との協議を重視すべき
<この論文の好ましい点>
・実臨床での悩みにかなり近い
・COVID-19もあり現代的で、今後直面しやすい状況など
・感染時免疫調整薬の対応に関する初のRCT
<この論文にて理解できなかった点>
・各薬剤(TNFi, IL-6i, JAKiなど)別の感染転帰差は不明確
担当:斉藤拓哉





