
Urinary tract infection and continuation of sodium-glucose cotransporter-2 inhibitors in diabetic patients
2型DM患者でのUTI罹患後のSGLT2i中止の臨床予後?
Mei-Zhen Wu, Ran Guo, Chanchal Chandramouli, Lin Liu, Anthony Ma-On Tung, Christopher Tze-Wei Tsang, Yi-Kei Tse, Yap-Hang Chan, Chi-Ho Lee, Jia-Yi Huang, Jing-Nan Zhang, Wen-Li Gu, Qing-Wen Ren, Ching-Yan Zhu, Yik-Ming Hung, Carolyn S P Lam, Kai-Hang Yiu,
Division of Cardiology, Department of Medicine, the University of Hong Kong-Shenzhen Hospital, China
European Heart Journal, 2025, ehaf788
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<サマリー>
SGLT2阻害薬使用中の2型糖尿病患者では、新規UTI発症が心血管・腎イベントおよび死亡リスクを増加させた。さらに、UTI後のSGLT2阻害薬中止は予後を悪化させ、UTI再発は減少しなかった。
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コホート1
P:SGLT2iを内服する2型糖尿病患者
E:UTI発症
C:UTI非発症
O:心血管イベント、腎イベント
コホート2
P:SGLT2iを内服しUTIを発症した2型糖尿病患者
E:SGLT2i中止
C:SGLT2i継続
O:心血管イベント、腎イベント、UTI
<わかっていること>
・SGLT2阻害薬は2型糖尿病患者において心血管・腎イベントを減少させる有効な治療
・SGLT2阻害薬による尿糖排泄増加は尿路感染症リスクを高める可能性
・UTI自体は、腎機能低下や心血管イベント、死亡リスクの上昇と関連することが報告
・UTIはSGLT2阻害薬中止の主要な理由の一つ
<わかっていないこと>
・SGLT2阻害薬使用中に新規UTIを発症した患者の長期的な心血管・腎予後は?
・UTI発症後にSGLT2阻害薬を中止した場合と継続した場合の予後は?
・SGLT2阻害薬中止がUTI再発リスクを実際に低下させるか?
<今回の研究目的>
・SGLT2阻害薬を処方された2型糖尿病患者において、新規UTI発症が心血管・腎イベントおよび死亡に与える影響を明らかにすること
・UTI発症後にSGLT2阻害薬を中止した場合の心血管・腎予後およびUTI再発リスクを評価すること
<セッティング>
・Clinical Clinical Data Analysis and Reporting System (CDARS)
※香港の公的医療機関(全体の80%以上の医療サービス)をカバーする大規模・縦断データベース。1993年から運用され、約740万人の住民データを含む。
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・後ろ向き観察研究
<Population、およびその定義>
・SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン)を処方された2型糖尿病患者
・除外基準
・18歳未満
・SGLT2阻害薬開始前にUTIの既往がある患者
・ベースライン時にHbA1cまたはeGFRの測定値がない患者
・UTI発症前120日以内にSGLT2阻害薬が処方されておらず、SGLT2阻害薬と関連しないと判断されたUTI症例
・UTIと死亡が同日に発生した患者
<主な要因、および、その定義>
コホート1
・UTI(尿培養結果+ICDコードにてUTIの診断)あり
コホート2
・SGLT2中止
<Control、および、その定義>
コホート1
・UTI発症なし
コホート2
・SGLT2継続
<主なアウトカム、および、その定義>
・主要アウトカム:
主要心血管複合アウトカム(心不全による入院、脳卒中、心筋梗塞、または全死亡)
主要腎複合アウトカム(eGFR50%低下、末期腎不全、または全死亡)
・副次アウトカム
・再発性尿路感染症
・MACE(心不全による入院、脳卒中、心筋梗塞、または心血管死)
・腎特異的複合アウトカム(eGFRの50%低下、末期腎不全、または腎死亡)
・心血管死
・全死亡
・追跡期間:主要アウトカムの発生、死亡、または研究終了日(2022年8月31日)のいずれかまで
<解析方法>
【コホート1】incident UTIの有無と、主要心血管複合アウトカム、MACE、主要腎複合アウトカム、腎特異的複合アウトカム、心血管死亡、全死亡、との関連を評価
・IPTWを用いてベースライン調整
・調整変数:年齢、性別、糖尿病罹病期間、併存疾患、抗糖尿病薬、その他薬剤、喫煙、アルコール依存、肥満、HbA1c、eGFR
・その後、Cox比例ハザードモデル
【コホート2】incident UTIを発症した患者集団において、SGLT2阻害薬中止と継続の影響をTTEにより評価
・IPTWを用いてベースライン調整
・調整変数:年齢、性別、糖尿病罹病期間、併存疾患、抗糖尿病薬、その他薬剤、喫煙、アルコール依存、肥満、HbA1c、eGFR、重症UTI、DKA
・その後、Cox比例ハザードモデル
【サブグループ解析】年齢、性別、心血管疾患の有無、糖尿病罹病期間ACE阻害薬またはARB使用、喫煙、HbA1c、eGFRによるサブグループ解析
【感度解析】
1)インデックス日設定に伴う不死時間バイアスを補正するため、SGLT2阻害薬処方日からインデックス日までの期間で1:2マッチングを実施
2)西暦またはCOVID-19パンデミック(2020年3月11日以前/以後)を調整因子として追加
3)治療割り当て猶予期間を180日に延長
4)ベースラインおよび追跡期間中にDKAまたは透析を有する患者を除外
5)UTI診断後1年以内の全死亡を競合リスクとしたFine–Grayモデルを用いて再発性UTIリスクを評価
Coxモデルの比例ハザード仮定は、log-minus-log生存曲線により評価し、仮定違反が認められた場合には時間依存共変量をモデルに組み込んだ。
<結果>
・SGLT2阻害薬を処方された2型糖尿病患者61,606人のうち、3,921人(6.36%)が追跡期間中に新規UTIを発症
・新規UTIを発症した患者は、UTI非発症患者と比較し
主要心血管複合アウトカム:有意にリスク高(HR 3.18, 95% CI 2.88–3.51)
主要腎複合アウトカム:有意にリスク高(HR 2.51, 95% CI 2.32–2.72)
全死亡:有意にリスク高(HR 3.40, 95% CI 3.00–3.86)
・新規UTI発症後、32.31%の患者がSGLT2阻害薬を中止
・UTI後にSGLT2阻害薬を中止した患者は、継続した患者と比較して
主要心血管複合アウトカム:有意にリスク高(HR 1.35, 95% CI 1.20–1.53)
主要腎複合アウトカム:有意にリスク高(HR 1.35, 95% CI 1.21–1.51)
心血管死亡:有意にリスク高(HR 1.38)
全死亡:有意にリスク高(HR 1.49)
・SGLT2阻害薬の中止は再発性UTIリスクの低下と関連せず(HR 0.96、95% CI 0.22–4.29)
・年齢、性別、心血管疾患の有無、糖尿病罹病期間、HbA1c、eGFRなどで層別化したすべてのサブグループ解析においても、SGLT2阻害薬中止は心血管・腎アウトカムの悪化と関連
・感度解析:主要結果は一貫
<結果の解釈・メカニズム>
①新規UTI発症と心血管・腎イベント増加のメカニズム
・UTIなどの感染症により炎症反応が惹起→凝固亢進状態→心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中など)のリスクが上昇する可能性
・病原体が動脈壁細胞へ直接作用し、動脈硬化や血管障害を悪化させる可能性
・炎症が、糖尿病・高血圧・腎機能低下といった心血管・腎リスク因子と相互作用し、イベント発症リスクを増幅させる可能性
・UTI発症イベントは、脆弱性の高い患者状態を反映しただけの可能性
② SGLT2阻害薬中止後に予後が悪化したメカニズム
・SGLT2阻害薬の心腎保護効果の喪失
・UTI後の中止は高リスク患者が多かった可能性(実臨床では、高齢・腎機能低下・重症UTI患者ほどSGLT2阻害薬が中止されやすい)
<Limitation>
・残余交絡の可能性
・UTIに関連する症状の有無やリスク因子に関する詳細情報が欠如(例:閉経状況、社会経済的状況、栄養因子など)
・尿培養結果+ICDコードにてUTIの診断としたたため、発生率が相対的に低めになった可能性
・服薬遵守/アドヒアランスの情報が限られている
<結果と結論が乖離していないか?>
・乖離していない
・ただし、UTI発症イベントは脆弱性の高い患者状態を反映しただけの可能性や、UTI後の中止は高リスク患者が多かった可能性(実臨床では、高齢・腎機能低下・重症UTI患者ほどSGLT2阻害薬が中止されやすい)をみただけの可能性があり、解釈には注意を要する
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・新規UTIが心血管・腎イベントおよび死亡リスク増加と関連することを示し、UTI発生を減らすことが重要であろう
・SGLT2阻害薬使用者では、UTIの早期検出と注意深く経過観察する必要性
・UTI後の中止が心血管・腎イベントおよび死亡リスクと関連し、かつ、再発性UTIリスクを下げなかったため、UTIを発症したとしても予後を考えると継続を検討すべき(メリット、デメリットを熟考)
<この論文の好ましい点>
・実臨床でのRQである点
・可能な限り、観察研究での因果の歪みを矯正しようとしている点
・Discussionにて、clinical implication、Strength & limitationが項目だてされている点
担当:矢嶋宣幸





