
Long-Term Data on Efficacy and Safety of Selexipag for Digital Systemic Sclerosis Vasculopathy
全身性硬化症における手指血管障害に対するセレキシパグの有効性と安全性に関する長期データ
Di Battista M, Alessandra Della Rossa, Marta Mosca
National Centre for Immunisation Research and Surveillance, Westmead, New South Wales.
J Rheumatol. 2024 Sep 1;51(9):899-903.
<サマリー>——————————————————————–
SSc関連の肺動脈性高血圧症に承認されている経口選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬であるセレキシパグ(ウプトラビ®)治療は、重度指血管障害を有するSSc患者(8名)において、12カ月後のレイノー現象の1日あたりの発作回数と平均持続時間を減少させた。全患者において6か月以内に手指潰瘍は完全に治癒し、手指皮膚スコアは漸減した。爪郭ビデオ毛細血管鏡検査での毛細血管の構造変化は認めなかったが、レーザースペックルコントラスト分析での手指の平均灌流が有意に改善した。安全性プロファイルは既存の報告と一致した。
——————————————————————————–
P:重症のSSc指血管障害を呈し、他のすべての血管作動薬療法に反応しない、または禁忌であるSSc
E:セレキシパグ
C:治療前後の比較
O:12ヵ月後の有効性と安全性
<わかっていること>
著者らの予備報告:J Rheumatol. 2023 Aug;50(8):1029-1031.
・重度の指血管障害(レイノー現象と手指潰瘍)を伴うSSc患者9名にセレキシパグを投与し、投与3か月後において、レイノー現象の1日あたりの発作回数(P=0.01) と平均持続時間 (P=0.04) が減少
・手指潰瘍数の減少傾向(有意差なし)を認め、レーザースペックルコントラスト分析での手指の平均灌流が有意に改善(P=0.02)。
<わかっていないこと>
・セレキシパグのSSc指血管障害への長期的な有効性と安全性
<今回の研究目的>
・セレキシパグのSSc指血管障害への12ヵ月後の有効性と安全性長期データ
<セッティング>
【研究期間】2020年10月~2023年3月
【倫理】セレキシパグの適応外使用は、希少疾患に関する現地規則 (法律648/96) に従い、病院関係者によって承認
<研究デザインの型>
・前向き観察研究
<Population、およびその定義>
・日常生活を著しく損なう重症のレイノー現象および手指潰瘍を呈し、他のすべての血管作動薬療法(Ca拮抗薬、PDE5阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬、イロプロスト静注)に反応しない、または禁忌であるSSc患者
<主な要因、および、その定義>
・経口選択的プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬であるセレキシパグ(ウプトラビ®)
<Control、および、その定義>
・治療前後の比較
<主なアウトカム、および、その定義>
【評価項目】ベースライン時と3、6、12か月後に評価
1. レイノー現象に関する質問票
・過去1週間に発生したレイノー発作の1日あたりの平均回数
・過去1週間に発生したレイノー発作の平均持続時間(分単位)
・ VAS 0~10(考えられる最悪の痛み):過去1週間のレイノー発作中の平均的な痛み
2. 手指潰瘍の数
3. 手指の修正ロドナン皮膚スコア(mRSS:各指0-3, 最終的に0-6.6の範囲)
4. 爪郭ビデオ毛細管鏡検査 (NVC)
・ベースラインと12か月後、第2~5指まで両側で200倍の倍率で観察
各指について 2枚の写真を撮影し、その後、1㎜あたりの毛細血管の平均数を数え、カットロ基準】に従って、早期、活動性、または後期のパターンに分類
5. 手の末梢血灌流をレーザースペックルコントラスト分析(LASCA)によって評価
・検査の3時間前は喫煙やアルコールまたはカフェインの摂取は禁止
・24 (±1) °C の温度制御された部屋で15分間環境順応し、スキャナ (PeriCam、Perimed) を手の甲側から垂直に20 cm上に配置し、機器はメーカーの指示に従って調整
・各手は1分間の記録 (画像取得速度: 10 画像/秒、フレーム: 11 × 11 cm、レーザー波長: 785 nm) し、関心領域を第2指から第5指まで両側に描き、総指灌流(任意の灌流単位[PU])と灌流の近位遠位勾配(PDG)を評価
・各患者について総灌流とPDG灌流の平均値を計算
<解析方法>
・連続データは平均とSDで記述。カテゴリデータは絶対頻度と相対頻度で記述
・すべての臨床変数と灌流変数について、ベースラインから12か月までの変化を評価するために、対応のあるサンプルt検定(両側)
・連続変数間の関係を評価するために、ピアソン相関係数を計算し、有意性は0.05に設定(疾患特性との関連については調整されていないP値で報告)
・すべての分析はRソフトウェア(R Core Team、2023)を使用
<結果>
【患者背景】
・8名 (女性63%、平均年齢50.1歳)
・全ての患者に手指潰瘍の既往があり、ベースラインで6名(75%)が合計10個の継続中の手指潰瘍を有していた。2名はPAHを併発し、PDE5iとERAの併用療法
・個人的な問題で4か月後に投薬中止した1名を除き、すべての患者に12か月間投与
・最終投与量は1mg~1.4mg 1日2回
【参考】1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始。忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。なお、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する
【評価項目】
1. レイノー現象に関する質問票
・過去1週間に発生したレイノー発作の1日あたりの平均回数が有意に減少(5.8 [SD 2.3] vs. 1.6 [SD 1.0] ,P < 0.001)
・過去1週間に発生したレイノー発作の平均持続時間(分単位)が有意に減少(32.8 [SD 24.0] 分 vs. 11.1 SD [10.5] 分,P = 0.01)
・過去1週間のレイノー発作中の平均的な痛みの程度(VAS)は、統計的有意性はないも一定の減少値(5.0 [SD 3.8] vs. 2.1 [SD 3.4] ,P = 0.07)
2. 手指潰瘍の数:すべての患者で6ヵ月以内に完全な治癒(P = 0.03)
3. 手指の修正ロドナン皮膚スコア(mRSS:各指0-3, 最終的に0-6.6の範囲)が徐々に減少し、12か月後には有意に減少(2.8 [SD 1.4] vs. 1.1 [SD 1.7]、P = 0.03)
4. 爪郭ビデオ毛細管鏡検査 (NVC) では毛細血管の構造変化は認めず
1ミリメートルあたりの毛細血管数(5.1 [SD 1.4] vs. 5.3 [SD 1.6]、P > 0.90)およびSScパターン分類に関して、ベースラインと12か月の間で有意な変化なし
5. レーザースペックルコントラスト分析 (LASCA)
・季節変動を克服し、総指灌流が増加(35.9 [SD 16.1] vs 76.0 [SD 21.9] PU、P = 0.004)
・灌流の近位遠位勾配(PDG)は、統計的に有意ではないわずかな増加(1.4 [SD 0.2] vs 1.7 [SD 0.5]、P = 0.10、表 2)。
・女性被験者は男性被験者よりも手指潰瘍の治癒率が高く(P=0.03)、総指灌流の改善率(P = 0.02)も高値
・年齢はLASCAで観察された相対灌流ゲインと逆相関し(P = 0.03、r –0.78)、12か月後の総灌流の増加率は若い被験者の方で顕著
・疾患期間に関して相関なし
・抗セントロメア抗体陽性は、抗トポイソメラーゼI陽性よりも臨床結果(RPの毎日のエピソード、P = 0.02、RPの平均期間、P = 0.03)およびLASCA(総灌流P = 0.05)が良好
6. 安全性プロファイル
・既存の報告と一致
・最大耐量に達したときに最も頻繁に報告された有害事象は頭痛と低血圧(低用量に戻すとすぐに改善)
・1人の患者は、顎の痛み(アセトアミノフェンに反応)
・トランスアミナーゼ上昇(正常値の上限の3倍以上)が見られたが、3か月前にERAを開始していた影響と判断
<結果の解釈・メカニズム>
・投与1年間で、SSc指血管障害に対するセレキシパグの冬季も含む持続的な有効性が確認
・SScのレイノー現象におけるセレキシパグの有効性を評価した唯一のランダム化比較試験(RCT phaseⅡ:Arthritis Rheumatol. 2017;69:2370-2379.)では、セレキシパグ(n=36 83%が平均0.8mg1日2回)とプラセボ(n=38)の間では、レイノー現象の頻度の減少(主要評価項目:レイノー現象の週平均回数)に対する有意な治療効果なし(指潰瘍に対する効果を評価しておらず、8週間の治療期間 (3 週間の漸増、5 週間の維持))
・本研究では、12か月のより長い観察期間と1.6mg1日2回投与量が、SSc指血管障害を改善した結果をもたらしたと考察
・セレキシパグの有効性は、男性、高齢、抗トポイソメラーゼI陽性、NVCにおける後期SScパターンなど、微小血管障害が重症化すると治療反応性が悪い可能性
<Limitation>
・患者数が少ないこと
・対照群がないこと
<結果と結論が乖離していないか?>
・No
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・n=8と患者数が少なかったが、6か月ですべての患者で手指潰瘍は消失しており冬季も含む12か月の持続的な有効性が確認
・肺高血圧症を合併する、SSc指血管障害患者にセレキシパグは選択肢になりうる
<この論文の好ましい点>
・SSc指血管障害(レイノー現象と手指潰瘍)に対するセレキシパグの効果を評価する、レーザースペックルコントラスト分析を含めた新しいRCTの提案を促す結果
担当:若林邦伸





