日本人ANCA関連血管炎患者を対象としたリツキシマブ使用の全国規模コホート研究:2年間における有効性および安全性【Journal Club 2026/1/21】

Nation wide cohort study of Japanese patients with ANCA associated vasculitis using rituximab Effectiveness and safety after two years
日本人ANCA関連血管炎患者を対象としたリツキシマブ使用の全国規模コホート研究:2年間における有効性および安全性
Kenji Nagasaka , Koichi Amano , Hiroko Nagafuchi , Ken-Ei Sada , Yoshinori Komagata , Masahiro Yamamura , Masaru Kato , Tomomi Endo , Izaya Nakaya , Tsutomu Takeuchi , Yohko Murakawa , Takahiko Sugihara , Masaya Saito , Taichi Hayashi , Shunsuke Furuta , Kazunori Karasawa , Shogo Banno , Shuichiro Endo , Masako Majima , Hiroaki Dobashi , Shinya Kaname , Naoto Tamura , Yoshiriro Arimura , Masayoshi Harigai
Modern Rheumatology, Volume 35, Issue 6, November 2025, Pages 967–973

—————
<サマリー>
全国前向きコホート研究。日本人MPA/GPA患者に対するRTXの有効性と安全性を2年間評価。RTX導入75例中、約75%が寛解を達成し、再燃は約20%。重篤な有害事象は約4割、主因は感染症で、特に導入後6か月以内に多かった。RTXは日本のMPA/GPAにおいて2年間を通じて有効かつ許容可能な安全性。
—————

<わかっていること> 
・JPVASは、RTXで治療されたMPAとGPAを対象とした観察研究(Remission Induction therapy with Rituximab:RemIRIT)。RemIRIT研究における6か月までの解析では、以下の知見
 ①寛解と関連する因子は認められなかったものの、非寛解群では重篤な有害事象、重篤感染症、および死亡の割合が、寛解群と比較して有意に高い
 ②SIsのリスク因子は、75歳以上および肺合併症

<わかっていないこと、今回の研究目的>
・RemIRIT研究における2年間の有効性および安全性について報告

<セッティング>
・2年間の観察研究、JPVASのメンバーが所属する36施設の大学病院および教育病院が参加
・2015年12月から2017年12月にデータ収集

<研究デザイン>
・前向きコホート

<Population、およびその定義>
・RTXで治療されたMPAおよびGPAの全患者(厚生労働省の診断基準)

<取得データ、および、その定義>
・患者背景、併存疾患、performance status、、身体所見、検査所見は、登録時(ベースライン)、登録後3、6、12、18、24か月、および再燃時に収集、BVAS、VDI、有害事象、EuroQoL five dimensions、SF-36

<治療>
・RTX:日本の添付文書に記載された標準レジメンに従って投与、各研究者の判断により修正
・RTX治療:RTX開始時のBVASが0より大きい場合を寛解導入療法、0に等しい場合を寛解維持療法
・GC、免疫抑制薬:担当医の裁量で決定

<アウトカム、および、その定義>
・主要評価項目: 6か月以内に寛解*を達成した患者の割合
 *寛解:少なくとも1か月以上の間隔をあけた2回連続の評価でBVASが0
・副次評価項目:
・生存および再燃*
 *再燃:活動性血管炎によって引き起こされる臓器病変の再発または新規出現と定義、重度または軽度分類
・安全性:重篤な有害事象、重篤感染症
・SAEs:死亡、生命を脅かす事象、予定外入院、入院期間の延長、重篤な障害または機能障害、先天奇形または異常、重大な検査値異常(CTCAEグレード3以上)、およびSI
・SI:入院または静脈内抗菌薬投与を要する感染症(上気道感染症を除く)、全身投与の抗ウイルス薬または抗真菌薬を要する疾患、およびニューモシスチス肺炎や結核などの日和見感染症

<解析方法>
・カテゴリ変数:カイ二乗検定およびFisherの正確確率検定
・連続変数:Mann–WhitneyのU検定
・再燃と関連する因子の評価:Cox比例ハザードモデル

<結果>
【ベースライン】
・82例の患者が登録、79例が少なくとも1回のRTX投与
・寛解導入でRTXの75例中、17例は6か月以内に中止、5例は6か月以降に中止(Figure 1)
・6か月以降の中止理由は、死亡(n=2)、転院(n=2)、および追跡不能(n=1)
・寛解維持療法としてRTXを投与された4例のうち、1例は18か月後に追跡不能
・6か月以降の治療
 寛解導入療法としてRTXを投与され、6か月を超えて観察された57例
 そのうち35例(61.4%)は追加のRTX治療
・寛解導入療法としてRTXを投与された患者の背景データ
 ・年齢中央値は73歳、MPO-ANCA陽性およびPR3-ANCA陽性は78.7%および22.7%
 ・MPA:61.3%
 ・血清クレアチニン値の中央値は 1.05(0.74–1.83)mg/dl
 ・BVASに基づく呼吸器症状は48.0%、BVASに記載されない肺合併症は28.0%
【6か月以降のRTX投与パターン】
・定期的投与は、6か月ごとの3つのパターン
 ・最多:375 mg/m²または500 mgを6か月ごとに1回投与する方法(n=15)
 ・次:375 mg/m²または500 mgを6か月ごとに2回投与(n=10)
 ・1000 mgを6か月ごとに1回投与(n=1)
 ・その他のパターン:375 mg/m²または500 mgを9か月ごとに1回投与(n=3)、375 mg/m²を12か月ごとに投与(n=1)
 ・残る5例は不定期投与であり、このうち1例は寛解後にRTXを投与されず、再燃直後に寛解導入療法としてRTXを投与
【再投与患者の背景】
・6か月以内にSAEを認めなかった45例のうち、33例(73.3%)が6か月以降にRTXを投与、6か月以内にSAEを認めた12例では2例(16.7%)のみが6か月以降にRTXを投与(P=0.001)
・6か月以内にSIを認めなかった51例のうち35例(68.6%)がRTXを投与、6か月以内にSIを認めた6例では、6か月以降にRTXを投与された患者は存在せず(P=0.002)
【GCの1日投与量中央値(PSL換算)】
・6か月以降に徐々に減少し、6か月時 10(7.1–10)mg、12か月時 7(5–8.5)mg、18か月時 7(4–7)mg、24か月時 5(3–5.3)mg
【6か月以降のIS】
・21例が免疫抑制薬を使用し、そのうち3例は合計5回薬剤変更
・RTX継続例(n=35)中、9例が併用免疫抑制薬に、アザチオプリン(AZA)(n=6)、メトトレキサート(MTX)(n=2)、タクロリムス(n=2)、ミゾリビン(MZB)(n=1)
・6か月以降にRTXを投与されなかった患者(n=22)で、12例が免疫抑制薬を併用、AZA(n=8)、ミコフェノール酸モフェチル(n=3)、MTX(n=2)、MZB(n=1)
【寛解維持療法としてRTXを開始した患者】
・寛解維持療法としてRTXを開始した4例のうち、3例がRTX治療を継続
・2例は375 mg/m²または500 mgを6か月ごとに1回、1例は1000 mgを6か月ごとに1回投与
・GCの1日投与量中央値は、6か月時 10(8.3–11.3)mg、12か月時 8(5.8–9.3)mg、18か月時 6.5(5–7.5)mg、24か月時 6(4–7)mg
・RTXを継続した3例のうち、1例ずつがAZAおよびMZBを併用
【B細胞数およびIgG値の変化】
・末梢血中のCD19陽性B細胞数は、RTX投与後に減少
・評価された症例において、CD19陽性B細胞数の中央値は、2年間にわたり2/μl未満で維持(補足図S1)
・その後、2年間にわたり中央値は約800 mg/dlで推移(補足図S2)
・血清IgG値も治療後に低下し、3か月時点で最低値(補足図S2)
【寛解】
・寛解導入療法としてRTXを投与された75例のうち、56例(74.7%)が2年間の観察期間中に寛解を達成
このうち、53例(70.7%)は6か月以内に、3例(4.0%)は6か月以降に寛解を達成
・寛解を満たし、かつGC用量(PSL<5 mg/日)の条件を満たした患者数は、75例中29例(38.7%)
・初回RTX投与回数に関して、4回以上投与(1000 mg×2回投与を含む)された群(n=44)では、35例(79.5%)が寛解に至ったのに対し、それ以外の群(n=31)では21例(67.7%)が寛解。両群間の寛解率に有意差なし(P=0.2)。また、背景となる臨床的特徴にも差なし(補足表S3)
【再燃】
・寛解を達成した56例のうち、11例(19.6%)が再燃し、そのうち2例は6か月以内に再燃
・寛解から再燃までの期間の中央値は189日(151–368日)であり、11例中8例(72.7%)の再燃は、寛解達成後1年以内に発生
・重度再燃は5例、軽度再燃は3例、分類不能再燃は3例
・再燃の有無によって、背景となる臨床的特徴、寛解までの期間、および寛解後のRTX使用に差なし
・再燃した11例のうち、7例はRTXによる治療を受け、8例でGC用量が増量
・7例は再度寛解を達成し、3例は寛解に至らず、1例は他院への転院のため観察を中止
・寛解維持療法としてRTXを開始した4例では再燃なし
【重篤な有害事象】
・寛解導入療法としてRTXを投与された75例において、2年間の観察期間中に33例で63件の重篤な有害事象が認められ、発生率(incidence rate:IR)(95%信頼区間)は100人年(person-years:PYs)あたり55.0(43.0–70.3)件
・11例が死亡し、死亡率は100 PYsあたり9.6(5.4–17.2)
・有害事象の大部分は最初の6か月以内に発生し、24例で39件のSAEが認められ、IRは100 PYsあたり120.5(88.2–164.7)。この期間中に9例が死亡
・7か月目から24か月目までの期間では、12例で24件のSAEが認められ、IRは100 PYsあたり29.2(19.6–43.4)
・6か月以降に発生した有害事象は表1に要約
・6か月以降にSAEを認めた12例のうち、4例は6か月以降にRTXを投与されており、これにより6件の事象が発生
・最も頻度の高いSAEは感染症であり、3例で4件発生
・残る8例は、6か月以降にRTX投与を受けていないにもかかわらずSAEを経験
・6か月以降の死亡は2例であり、1例は6か月以降に発生した感染症による死亡、1例は6か月以内に発生した大腸癌による死亡
【重篤感染症】
・寛解導入療法としてRTXを投与された患者において、7か月目から24か月目の期間に、8例で12件の重篤感染症が発生し、発生率(IR)は100人年(PY)あたり14.6(8.3–25.5)。最初の6か月における発生率である100 PYあたり64.9(42.5–99.2)よりも低率
・6か月以降に発生したSI。帯状疱疹および細菌性肺炎が最も頻度が高く、それぞれ3例ずつ
・6か月以降にRTXを投与された患者(n=35)のうち、3例で4件のSIが観察され、その内訳には帯状疱疹2件が含まれていた。残る1例では、原因不明の感染症および敗血症性ショックが別個の事象として発生
・寛解維持療法としてRTXを開始した4例のうち、6か月以降に2例で3件のSAEが発生した。その内訳は、1例が帯状疱疹、残る2例が尿路上皮癌

<結果の解釈・メカニズム>
・22例(38.6%)の患者が6か月以降にRTXを投与されず、6か月以内にSAEまたはSIを経験した患者ではそうでない患者と比較して6か月以降のRTX投与割合が有意に低い
 →医師がRTXの安全性に対する懸念から、再投与を回避した可能性が高い
・寛解達成後のGC用量は、6年前に実施されたJPVASコホート研究と比較して、各評価時点でおおよそ2 mg/日少ない→日本においてGC減量スピードが加速していることを示唆

<Limitation>
・RTX非投与群が存在せず、他治療との直接比較ができない
・RTXおよびGC投与プロトコールが施設・症例ごとに多様
・症例数が限られており、再燃リスク因子や長期安全性の詳細解析が困難
・RTXがAAVに使用が開始された直後のデータであり、軽症なAAVが主に集積されている可能性

<結果と結論が乖離していないか?>
No

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・10年前のデータであり、最新のプラクティスと異なる可能性や、対象となる重症度が変わっている可能性があり、この情報のupdateが必要

<この論文の好ましい点>
・日本人AAV患者におけるRTX治療を全国規模で前向きに評価している点
・6か月以前・以後で安全性を分けて詳細に解析している点
・RCTおよび国内外コホート研究との比較を行い、結果の妥当性を検証している点
・観察研究であることによるバイアスを考察内で明示している点

担当:柳井亮

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和医科大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始