原発性シェーグレン症候群患者におけるイグラチモドの有効性と安全性:多施設共同ランダム化比較試験【Journal Club 2026/2/4】

Efficacy and safety of iguratimod in patients with primary Sjögren’s syndrome: a multicentre randomised controlled trial
原発性シェーグレン症候群患者におけるイグラチモドの有効性と安全性:多施設共同ランダム化比較試験
Xiaochan Chen, et al. Zhejiang University School of Medicine, China.
RMD Open 2025;11:e006180.

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<サマリー>

承認された疾患修飾薬(DMARDs)が存在しない活動性原発性シェーグレン症候群(pSS)に対し、イグラチモド(IGU)とヒドロキシクロロキン(HCQ)を比較した多施設共同オープンラベルランダム化比較試験。24週時点の主要評価項目であるSSRI-30反応率は、IGU群で数値的に高かったものの統計的有意差には至らなかった(57.9% vs 40.0%, p=0.114) 。しかし、主要な副次評価項目である複合指標STAR(39.5% vs 15.0%, p=0.015)および全身活動性指標ESSDAI(21.1% vs 5.0%, p=0.034)において、IGU群はHCQ群に対し有意に高い改善率を示した 。また、IGU群では血清IgGレベルの有意な低下も認められた 。安全性において、IGU群はHCQ群より有害事象が多かったが、その多くは軽度であり、忍容性は良好であった 。
• P (Patient):活動性の口渇・眼燥症状を有し、高ガンマグロブリン血症(IgG ≥16 g/L)を伴う抗SSA抗体陽性の原発性シェーグレン症候群患者(78名)
• E (Exposure):イグラチモド(25mg 1日2回)
• C (Comparison):ヒドロキシクロロキン(0.2g 1日2回)
• O (Outcome):24週時点のSSRI-30反応率(主要評価項目)およびSTAR反応率、ESSDAI、ESSPRI、バイオマーカーの変化(副次評価項目)
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<わかっていること>
• 原発性シェーグレン症候群(pSS)には承認された疾患修飾薬(DMARDs)がなく、標準的に用いられるヒドロキシクロロキン(HCQ)も有効性は限定的
• イグラチモド(IGU)は、小分子免疫抑制剤として関節リウマチに対し承認されており、B細胞の分化抑制や炎症性サイトカイン(IL-6, IL-17等)の産生抑制作用を持つ
• 先行の小規模な試験やメタ解析では、IGUがpSSの疾患活動性を改善させる可能性が示唆

<わかっていないこと>
• 標準治療であるHCQと比較した、IGUの厳密な有効性と安全性に関するランダム化比較試験(RCT)によるエビデンス 

<今回の研究目的>
• 活動性pSS患者を対象に、IGU単剤療法の有効性と安全性をHCQと比較検証

<セッティング>
• 【研究期間】 2021年7月登録開始(ClinicalTrials.gov: NCT04981145)
• 【施設】 中国国内の6つの医療センター

<研究デザインの型>
• 多施設共同オープンラベル並行群間比較ランダム化比較試験

<Population、およびその定義>
• 18歳〜70歳の男女
• 2016年ACR/EULAR分類基準を満たすpSS
• 抗SSA抗体陽性、かつIgG ≥16 g/Lの高ガンマグロブリン血症を伴う
• スクリーニング前4週間以内にステロイドや免疫抑制剤、生物学的製剤を使用していない

<主な要因、および、その定義>
• イグラチモド(IGU):25mgを1日2回、24週間経口投与 

<Control、および、その定義>
• ヒドロキシクロロキン(HCQ):0.2gを1日2回、24週間経口投与 

<主なアウトカム、および、その定義>
• 【主要評価項目】 24週時点のSSRI-30(Sjögren’s Syndrome Responder Index-30)反応率 
 o ※5つの指標(倦怠感、口腔乾燥VAS、眼乾燥VAS、安静時唾液流量、赤沈)のうち、2つ以上で30%以上の改善

• 【副次評価項目】
 o STAR(Sjögren’s Tool for Assessing Response)反応率:2022年に開発された国際的な複合指標。システム活動性、患者症状、涙腺機能、唾液腺機能、生物学的指標(IgG/RF)を統合評価 
 o ESSDAI(医師による全身活動性評価):3ポイント以上の減少を改善と定義 
 o ESSPRI(患者報告による症状評価):1ポイント以上または15%以上の減少を改善と定義 
 o 血清学的指標:IgG、赤沈(ESR)、補体(C3/C4)、RF等の変化 
<解析方法>
• ITT(Intention-To-Treat)解析を主解析とし、欠測値は「治療失敗(non-responder)」として扱う 
• 感度分析としてPP(Per-Protocol)解析も実施
• 連続変数はt検定またはMann-Whitney U検定、カテゴリ変数はχ²検定またはFisherの直接確率法を使用 

<結果>
【患者背景】
• 計78名がランダム化(HCQ群40名、IGU群38名) 
• 平均年齢は約45-48歳、女性が97%以上 
• ベースラインの疾患活動性(ESSDAI, ESSPRI)や血清IgGレベル、唾液量等に両群間で有意差は認めず
【有効性評価項目】
1. SSRI-30反応率(主要評価項目)
 o IGU群:57.9% vs. HCQ群:40.0%(p=0.114)
 o 数値としてはIGU群が17.9%上回ったが、統計的に有意な差認めず
2. STAR反応率(重要副次評価項目)
 o IGU群:39.5% vs. HCQ群:15.0%(p=0.015)
 o IGU群が統計的に有意に高い反応率
3. ESSDAI反応率
 o IGU群:21.1% vs. HCQ群:5.0%(p=0.034)
 o 全身活動性の改善においてもIGU群が有意に改善
4. 血清学的指標
 o IGU群においてIgGレベルが有意に低下した(p=0.046)。RFやESRも低下傾向
5. ESSPRI(患者症状)
 o IGU群:63.2% vs. HCQ群:47.5%(p=0.165)。数値的にはIGU群が良好だが有意差なし
【安全性プロファイル】
• 有害事象の発現率:IGU群 60.6% vs. HCQ群 37.8% 
• 主な有害事象:
 o IGU群:肝機能指標の軽度上昇(肝不全に至るものはなし)、白血球減少など 
 o HCQ群:皮疹、胃腸障害など 。
• 中止例:各群2名ずつが有害事象により投与中止(IGU群は肝機能異常、HCQ群は皮疹と胃腸障害) 
• 重篤な有害事象や日和見感染症の報告なし

<結果の解釈・メカニズム>
• 本試験は、pSS患者に対するIGUとHCQを直接比較した初のRCTであり、IGUが全身活動性(ESSDAI)や最新の複合指標(STAR)においてHCQより優れていた
• IGUがB細胞の活性化を抑制し、高ガンマグロブリン血症を是正することで、pSSの病態の根幹に作用している可能性
• 主要評価項目のSSRI-30で有意差が出なかった理由として、サンプルサイズの不足や、SSRI-30が主観的な乾燥症状に重きを置いているため、全身活動性の変化を捉えきれなかった可能性

<Limitation>
• サンプルサイズが比較的小さく、検出力が不十分であった可能性
• オープンラベル試験であるため、特に主観的な症状評価(ESSPRI等)においてバイアスが生じる可能性
• 24週間という観察期間は、腺外症状の長期的な改善を評価するには不十分である可能性

<結果と結論が乖離していないか?>
No

<この論文の好ましい点>
• 既存の支持された薬剤との比較をすることで、より新たな可能性に期待ができる
• 双方介入リスクが低い同士での比較であり、被験者は募りやすさに繋がったかもしれない
 
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
• 関節症状を訴える割合が20%のなかで、IGUがESSDAIの低下を示した点からは臨床では関節症状以外の症状がある方でも選択肢にして良いかもしれない
• イグラチモド25mg/日でのより安全な使用量での効果も検討したい
• カルシニューリン阻害薬などとの比較での差が出るかどうか
• 今後は、より大規模な検証試験が期待
• 個別の臓器症状への効果などのを知りたい

担当:鷲澤恭平

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