Journal Club【20121219】


「Evaluation of weekly-reduction regimen of glucocorticoids in combination with cyclophosphamide for ANCA-associated vasculitis in Japanese patients」

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21898055

Rheumatol Int 2012 32 2999-3005

 

<背景>

・EULAR推奨の従来の治療はCYC併用のGCを1ヶ月、その後徐々に減量である。副作用を考えて、GCを週単位で減量する別のレジメンがBSRから報告。

<目的>

・今研究の目的は日本人AAV患者において、EULARで推奨される月ごと減量レジメンと週単位減量レジメンとを比べ安全性と効果を評価。

<内容>

・後ろ向きに2000年4月から2010年12月までで新たにAAVと診断された成人患者(MPAかWG)のカルテをレビュー。

・アウトカム評価:最初の12ヶ月間の寛解・再発・感染症・ステロイド糖尿病の率である。

<結果>

・24人患者が登録。

・全患者が寛解した、そして12ヶ月での再発率は2群で明らかな有意差はなかった。(p=0.16)

・週単位での治療にて治療された患者は感染症になりにくかった(p=0.03)

・週単位のレジメンは効果があり、月単位よりも副作用が少ないかも。

<まとめ>

・今研究では6ヶ月で全例が寛解。2群間で12ヶ月の再発率に有意差なし。

・VDIの6と12ヶ月後は有意差なし。12ヶ月での再発率はおよそ10%であった。

・最初の12ヶ月の感染症は週単位群で明らかに少ない。CYC の累積量がAAV患者の感染リスクを上げるといわれている。今回、週単位群のほうが月単位群より累積CYC量は多かったが、感染症の率は週単位群は月単位群より多くなかった。週単位群での感染率の少ないのは早期GC減量が感染症死亡を減らしているかもしれない。

・早いステロイド減量がステロイドDMの減らす可能性がある。

・今研究でステロイドDMと診断された患者は皆、食後血糖200以上で診断された。

空腹時血糖とA1cをはかるだけでは不十分である可能性を示している。継続的に食後高血糖を確認するのは、隠れたステロイドDMを見逃さないのに必要な事である。

・今研究は日本のAAV患者においてCYC併用のレジメンで、月単位群と週単位群を比較した初めての研究。週単位群は再発を増やさず寛解導入する際に月単位群と同じくらい効果がある。加えて、感染と糖尿病によい。

<リミテーション>

・セレクションバイアス、カルテの不完全、短い観察期間

 

 

担当:柳井 亮

「The efficacy and safety of abatacept in patients with non-life-threatening manifestations of systemic lupus erythematosus-results of a twelve-month, multicenter, exploratory, phaseⅡb, randomized, double-blind, placebo-controlled Trial」

J.T.Merrill

Arthritis Rheum.2010;62:3077-3087.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20533545

 

<目的>

・アバタセプトを3臓器 皮膚(円板状皮疹)、心内炎症(心囊炎)、または肺臓炎、胸膜炎のうち1種類以上、あるいは多発関節炎(5関節以上)で活動性ループスの再燃の治療および予防に用いることができるかを確認する。

<方法>

・SLEと診断され、3臓器のうち1種類以上で活動性ループスが再燃した18歳以上の男女の患者を対象とし、少なくとも1か月間、プレドニゾン(30mg未満)の投与量が安定していなければならないとした。

・primary endpointは1年間の二重盲検投与期間中にSLEの臨床的再燃率(British Isles Lupus Assessment Group[BILAG]カテゴリAまたはB)とした。

・secondary endpointは、二重盲検投与期間の最初の6か月以内にSLEの臨床的再燃率(BILAGカテゴリAまたはB)、試験期間中にBILAGカテゴリAまたはBの再燃率、およびSLE患者でのアバタセプトの安全性の評価とした。

・アバタセプト群(~10mg/kg 体重固定用量)とプラセボ群に2:1に割り付けた。

<結果>

・118人がアバタセプト群、57人がプラセボ群に無作為に割り付けた。

・12ヵ月後のBILAGによる新たな再燃率はアバタセプト群で79.7%、プラセボ群で82.5%であった。

・事後解析におけるBILAG  Aの再燃率はアバタセプト群及びプラセボ群で40.7%と54.4%であった。

・そして、医師により評価された再燃率はアバタセプト群63.6%とプラセボ群82.5%であり、治療差は多発関節炎グループで最も大きかった。

・患者報告による治療効果評価(SF36、睡眠障害、疲労)においてアバタセプト群は治療効果を示した。

・有害事象の頻度はアバタセプト群とプラセボ群と同等であった(90.9%対91.5%)。

・重篤なAEはアバタセプト群でより高かった(19.8対6.8%)。

・大部分の重篤なAEは単独の発現であり、本研究(ステロイド漸減期を含む)の最初の6ヵ月の間に起こっていた。

<結論>

・primary endpointおよびsecondary endpointは達成出来なかったが、患者報告による治療効果は重篤ではないSLE患者におけるアバタセプトの有効性を示唆した。

・重篤なAEの増加は、更なる評価を必要とした。

<limitation>

・BILAGのAとBのみでC以下は対象に入れていない。

・治療群でAZAやNSAIDsが使用されていることで治療効果に影響ありうる。

・SLEなのにANA(+)が75%、ANA(-)でdsDNA(-)が19.5%も存在した。

・腎病変について検討されていない。

 

担当:三輪 裕介

 

「The risk of pulmonary embolism and deep vein thrombosis in rheumatoid arthritis: a UK population-based outpatient cohort study」

Hyon K Choi et al

Ann Rheum Dis. 2012 Aug 28. [Epub ahead of print]

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22930596

 

<背景/目的>

・入院を要するRA患者にいてDVT/PEの発症リスクが増加する報告は散見されるが、外来通院が大半をしめるRA患者におけるDVT/PEのリスクを検討した報告はない。

・この報告はRAそのもがDVT/PEのリスクを高めるか否かを検討している。

<患者/方法>

・データソースはUKのTHINに登録されているRA患者9589名とコントロール95776名

・DVT/PE発症の記載があり、抗凝固法を受けた患者をDVT/PE患者と定義。年齢、性別、BMI、喫煙歴などをマッチングしRA群とコントロール群の発症リスク(Relative Risk)を検証

<結果>

・多変量解析ではRA群でDVT/PEの発症リスクは相対危険度で2.16と有意に上昇

・RA発症時期ごとに同検討を行ったところRA発症1年未満の早期RAでRR3.27とそれ以降の患者群と比較し有意にRRの上昇

<結論>

・入院/外来にかかわらず、RAそのものが発症リスクであり早期RAではリスクは高まる

<考察>

・外来患者含めたRA患者のDVT/PEの発症リスクの大規模研究の報告は初めて

・RA患者でDVT/PEを合併しやすい理由として①血流障害②炎症に伴う凝固異常③血管内皮細胞障害などが挙げられている

<Limitation>

・早期RAでDVT発症リスクが高まったことから疾患活動性との関連が考えられること

・DMARDsやステロイドなどのRA治療との関連も考えられることをあげ今後の課題としている

 

担当:高橋 良

 

「Management of pregnancy in SLE」

Alsha Lateef and Michelle Petri

 Division of Rheumatology, University Medicine of Cluster, National University Health System, Singapore

Nat Rev Rheumatol  2012;8:710-718

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22907290

 

<SLEでの妊娠合併症>

通常妊娠と比較してSLE合併妊娠では健常な妊娠と比較すると母体および胎児への合併症のリスクが高い。

再燃

  • ・妊娠中の再燃率は25-65%
  •      ・・・studyのデザインがさまざま(人種の違い・再燃の定義の違いなど)
  • ・通常妊娠でも関節痛や軽度貧血、軽度血小板減少、軽度蛋白尿が出現する事があるためSLEの活動性の評価が困難
  • ・妊娠時の活動性がある状態は母体および胎児への合併症のリスクが3-4倍
  • ・腎症の存在は母体および胎児への合併症や腎症悪化のリスクが2-3倍
  • ・だいたいの再燃は軽度から中等度だが、10-40%は重症
  • ・再燃臓器としては、腎、筋骨格系、血液障害

母体側の合併症

・13555例のSLE合併妊娠での検討では、母体の死亡率は20倍に上昇し、他の合併症(子癇前症、HT、出血、重症感染症)は2−8倍に上昇

・子癇前症は16-30%と高値(通常は5-7%程度)であり、リスク因子としては腎症、aPL陽性、HT、低補体

・腎症悪化と子癇前症の鑑別は難しく、他の臓器障害や円柱の出現や低補体が補助的な指標

・子癇前症の血液検査として、PIGF, VEGF, sFLT1, sENGがあるが感度は低値

・出産後に改善すれば子癇前症と診断確定

胎児側の合併症

・胎児死亡、早産、子宮内発育不全、新生児ループスのリスク上昇。

・胎児死亡は、1975年以前は45%であったが、200-2003年には17%まで減少。最近の報告では85-90%の生存率。

・SLEの高活動状態や腎症が胎児死亡のリスク。その他のリスクとして、aPL陽性、血小板減少、蛋白尿とHT。

・早産が一番多い胎児側の合併症であり、SLE患者の出産の50%以上で合併。

・早産のリスク因子として、SLEの高活動状態や腎症であり、その他としては甲状腺疾患、HT、蛋白尿、aPL陽性。

・IUGRは10-30%で見られ、リスク因子としてSLEの高活動状態や腎症。

 

・ 新生児ループス(NLS)は抗SSA抗体および抗SSB抗体が影響し、症状としては皮疹、血液障害、肝障害、心臓障害。

・NLSは症状のない抗体のみ陽性の母からも発症。

・皮疹はNLSの10-25%に見られ日光過敏もあり4-6週で改善。

・血液および肝障害はNLSの10-15%で出現し、6-8ヶ月で改善。

・NLSの心臓障害で最も多いのは心ブロックであり、抗SSA抗体陽性のうち2%。

・以前心ブロックを合併した母体では16-18%にて心ブロック合併妊娠。

・他の症状として、内心臓線維弾性症、構造異常、心筋症、うっ血性心不全がる。

・心ブロック合併新生児では高い死亡率であるが、ペースメーカー挿入することにより1年後生存率は80%であった

・軽度の伝導障害から心ブロックへと進展していくため、早期診断が重要である。一般的にドップラー心エコーも用いて行うが、tissue velocity based fetal kinetocardiogramが高い感度として勧められている。

 

<SLE合併妊娠時の管理>

・理想的には、活動性が安定し6ヶ月間以上継続するまでは妊娠は許可しない。

・避妊が重要であるが、コンドームでは失敗が多くピルと同程度の効果があるとされるIUDを選択してもよいと思われる。

・ピルにて再燃が心配されるが、2つのstudyでは再燃させないとの結果であった。しかし、重症例やAPS抗体陽性例は除外されており一概には安全とは言えない

妊娠前評価

・妊娠前に検索するものとして、進行した腎障害、重症肺高血圧症、重症肺障害、重症心臓障害、HELLP症候群や子癇前症の既往歴がある

・APS抗体、抗SSA抗体、抗SSB抗体、甲状腺機能を検索するとともに、SLEの活動性や臓器障害も評価する

・6ヶ月以内のSLE重症病態、最近の脳梗塞、活動性のある腎症のケースは妊娠を遅らせるべきである

妊娠中の管理

・血圧のチェック、SLE活動性マーカーなどを月1回行い、エコーも行う(table1)

 

特殊な状況での管理

1.抗SSA抗体・抗SSB抗体陽性の場合

・心ブロックは18-24週に発症するため、16-26週は毎週胎児エコーを行い、26週以降は2週間ごとに行う。

・PR間隔が延長したらば心ブロックの治療を行うかを考えねばならない。一部は一時的であったり、治療無しで改善するが、胎盤通過性のステロイド(フッ素化ステロイド、デキサメサゾン、デタメタゾン)にて治療を行う。

・心ブロックの治療として、IVIGもあるが、効果についての議論の結論はでていない。

・ハイドロキシクロロキンについてはNLSの心臓障害の発生率をさげるため有用である。

2.APS抗体陽性の場合

・①抗体陽性のみ ②妊娠APS ③全身型APSの3つの群に分けて議論する。

・①抗体のみ陽性の場合でも抗体陰性群と比して合併症が多い。限られたデータではあるものの低容量アスピリンが勧められる。

・②妊娠APSではCochrane reviewでの849例の検討で低容量アスピリン+予防量ヘパリンでの有用性が証明された。

またこの群ではアスピリン+ステロイドとアスピリン+予防量ヘパリンとでは同等の効果が示されている。

・③全身型APSでは低容量アスピリン+治療量ヘパリンでの治療を行うべきである。

 

<SLE合併妊娠時の薬剤>

・table2参照

・シクロフォスファミド、MTX、MMFは最低3ヶ月以上中止してから妊娠を許可する。

・レフルノミドは2年間中止が望ましいが、たまたま妊娠してしまった例では奇形の発症なし。

・AZP(2mg/kg以下)、シクロスポリン、タクロリムス内服中の妊娠は問題なし。

・ビスフォスフォネートは6ヶ月中止後から妊娠許可。

 

担当:矢嶋 宣幸

 

 

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