「Predictors of preterm birth in patients with mild systemic lupus erythematosus」
Clowse ME, et al
Ann Rheum Dis. 2013 Jan 29. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23361085
背景)SLE患者では高い疾患活動性が早産のリスクであることは知られているが、疾患活動性の低い患者でも早産を起こすことが多い。
目的)疾患活動性の低いSLE患者の血清バイオマーカーが早産を予測しうるか否かを検討
患者・方法)
妊娠したSLE患者の妊娠20~28週のSLE活動性(SLEPDAI+抗DS-DNA抗体+補体),炎症マーカー(CRP.ESR,ferritin)、ホルモン、腎機能などを測定し、早産に至ったケースと正常期産のケースとを比較した。
結果)1.39名で40妊娠が対象(mild~moderateの活動性 ループス腎炎は1名のみ)
2.23.7%(9/38)が早産(40中2妊娠は死産)
3.18.9%(7/38)が子癇前症を合併
3.20~28週で低C4血症が早産と関連した
4.ESRは全例で上昇、CRPは37%の患者で上昇していたが早産と関連なし
血清ferritin値は妊娠期間と関連した(r=-0.37 p=0.05)。
5.血清Crや蛋白尿は早産、子癇前症のいずれとも関連はなかったが、
1例を除く全例で妊娠中期の血清Cr, 蛋白尿は正常
6.高尿酸血症は子癇前症とは関連はないが妊娠期間と相関した。
Discussion)
1.妊娠中期の低エストロゲン、フェリチン高値、高尿酸血症が低疾患SLE妊娠における早産のリスクであった。
2.本研究では全例低疾患活動性であったため、疾患活動性と早産の関連はみられなかった
3.これまでの報告ではESRは妊娠中の肝代謝亢進を反映し増加するため病勢の評価には適さないが、CRPは一般的に増加しない
といわれている。本研究ではCRPとESRは相関し、それらは予後と関連しなかった。
4.健常人でも妊娠中期のフェリチン上昇が早産と関連すると報告されている。本研究でもフェリチン値と妊娠期間が負の相関をしたことから、フェリチンはSLE患者の早産における炎症の関与の指標と考えられる。
5.ループス腎炎が早産と子癇前症に関与するとの報告があるが、本研究ではループス腎症が1例であったため評価はできない。
6.さらなる大規模な研究を行う必要がある。
以下は高橋考
これまでSLEの疾患活動性が妊娠予後にあたえる影響が大きいことが多々報告されているものの、SLE患者の妊娠における早産や子癇前症といった合併症の大規模研究は少ない。
SLE患者全体での早産率も16%~30%と報告頻度は様々である。健常者の早産頻度は数%(<10%)であることからSLE
妊娠は早産のリスクと言えるが本研究の23.7%は低疾患活動性でも早産リスクは変わらず高いと考えてよい.
子癇前症においても同様でSLE全体の報告では13%~20%と健常者における頻度と比較すると6%と高率であるが、腎炎の合併がリスクを高めるといわれている一方で腎炎非合併、低疾患活動性患者を対象とした本研究では約19%であり、高い傾向にある。ことの考察がない。
また、APSの合併の有無に関しても記載がないため、評価は限定される。
さらに、妊娠中期の血清マーカーは発症予測につながるが予防措置は限られたもののみであり、発症予防につながるものではない。
リスク妊娠は管理可能な施設で経過観察、分娩を行う習慣のある本邦での有用性は限られる
担当:高橋良
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