Journal Club【20130522】CSSにてIVIGは有効か?

「Treatment of Churg-Strauss syndrome with high-dose intravenous immunoglobulin」

 

Ann Allergy Asthma Immunol. 2004;92:80

Tsurikisawa N, Taniguchi M, Saito H, Himeno H, Ishibashi A, Suzuki S, Akiyama K.

Clinical Research Center of Sagamihara National Hospital, Sagamihara, Kanagawa-ken, Japan.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14756469

 

【背景】CSSの患者、特に神経病変および心病変を持つ患者では、標準治療であるGC単独もしくはCY併用に対して抵抗性の患者が存在する。心病変のあるCSS患者はない患者に比べ5年生存率が3分の1程度との報告もある。CSSに対しIVIgの有効性の報告はわずかにあるが10人以上の患者での報告は認めない。

【目的】従来治療に抵抗性のCSSにIVIgが有効かを検討。

【方法】GC単独もしくはCY併用による治療をうけるも抵抗性の臓器病変(神経、心病変)を有するCSS (ACR分類基準を用いて診断)の患者を1999年7月から2001年7月の2年間、連続して15人の患者を登録し、ベニロン®でのIVIg: 400mg/kg/日×5日間を1コース施行した。神経障害はMMT(治療前とIVIg終了翌日、その後隔週)で評価し、罹患部位の皮膚温もサーモグラフィー(冷水負荷施行)で測定(IVIg終了1週間後)した。心機能は心エコーでEFを測定し、I123-MIBG心筋シンチグラムと201Tlシンチグラムを用いて評価した(IVIg終了2週間以内)。活性化好酸球を反映するCD69陽性好酸球(IL-3. IL-5, GM-CSFを分泌)数をIVIg治療前後で測定した。患者は少なくともIVIg後12ヶ月間は経過観察された。

【結果】15人の患者背景はTable1.に各患者のACR分類基準の項目についてはTable2に示す。15人中13人の患者でIVIg終了1週間以内に運動神経障害、MMTは改善した(Fig1)。13人中7人はMMTスコアが2以上改善した。全ての患者はIVIg後に皮膚が温かくなったと自覚された。サーモグラフィーを施行した10人の患者において両手の皮膚温は34.3±1.7℃→35.7℃±0.5℃(p<0.01)へ上昇し、両足の皮膚温は33.1±1.2℃→34.8℃±0.8℃(p<0.01)へ上昇した(Fig2)。心不全を合併した5人の全ての患者がEFの改善(EF: 35.2±13.9%→61±10.1% p<0.02)を得た(Fig3)。また、IVIgにより心筋の生存性を示MIBG心筋シンチグラムの取り込み(遅延像におけるheart-to-mediastinum ratio 1.66±0.33→1.87±0.38 p<0.05  wash out ratio 51.8±22.5%→30±16.3% p<0.05)(Fig4)、血流欠損を示すTlシンチグラムの欠損の改善(summed score p<0.05)を得た(Fig5)。末梢血好酸球数は既存の治療で10%以下に低下していたがCD69陽性好酸球は低下していなかった。IVIg施行後は末梢血好酸球数は変化ないもののCD69陽性好酸球数は27.5/μL→5.9/μL p<0.01へ低下した(Fig6)。有害事象は認めず、PSL量はIVIg終了6-12カ月後には疾患活動性の増悪なくPSL12.5mg/日以下に減量ができた。

【考察】IVIgは心筋の生存性を改善し、冠動脈還流を増加させる可能性がある。神経障害の改善は皮膚温が改善されたことからIVIgの作用機序として血管拡張作用による神経への血液還流改善が考えられたが直接的証明はできていない。MIBGシンチグラム、Tlシンチグラムの回復を得たことは、IVIgが心筋の回復に心筋接合部でのノルアドレナリン伝達の回復、細動脈、毛細血管レベルの血流改善をもたらしたことが考えられる。IVIgにより末梢血のCD69陽性好酸球数が低下したことはCSSにおいてIVIgがCD69陽性好酸球数を抑制することで効果が発現しているのかもしれない。GC単独もしくはCY併用に対し抵抗性のCSSには第二選択薬としてIVIg療法がより有効であることが示唆された。

 

担当:若林邦伸

 

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