Journal Club【20140521】膠原病で使用する用量のMTXは妊娠に影響する?

「Pregnancy Outcome After Methotrexate Treatment for Rheumatic Disease Prior to or During Early Pregnancy」

Weber-Schoendorfer C, Chambers C, Wacker E, Beghin D, Bernard N; Network of French Pharmacovigilance Centers, Shechtman S, Johnson D, Cuppers-Maarschalkerweerd B, Pistelli A, Clementi M, Winterfeld U, Eleftheriou G, Pupco A, Kao K, Malm H, Elefant E, Koren G, Vial T, Ornoy A, Meister R, Schaefer C.

Charité-Universitätsmedizin Berlin and Pharmakovigilanz und Beratungszentrum Embryonaltoxikologie, Berlin, Germany.

Arthritis Rheumatol. 2014;66:1101-10.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24470106

 

膠原病で使用する用量のMTXは妊娠に影響する?

 

<背景目的>

・High dose MTXの胎芽毒性は知られているが、膠原病疾患で使用するLow dose MTXの毒性はあきらかではない。今回は、Low dose MTXの毒性検討を目的とした

<対象>

・フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スイスの6カ国でのthe European Network of Teratology Information Servicesを使用

・MTX暴露は30mg/w以下のMTX暴露群:MTX内服していない膠原病疾患群(disease-matched):膠原病疾患のない群=1:1:3として前向きに集積したコホート研究

・除外基準としては、一般的に知られている胎児毒性をうける薬物内服などをしている例

<方法>

・outcomeとして自然流産、人工流産、死産、先天性欠損、妊娠期間、出生体重を集積しそれぞれの群を比較検討した。

・MTX暴露群は下記の2群に分けた。

「受胎前MTX暴露群(最終月経より10w前から最終月経から2週間後までにMTX暴露)」

「受胎後MTX暴露群(最終月経から2週間以後にMTX暴露)」

<結果>

・受胎前MTX暴露群 136例、受胎後MTX暴露群 188例、膠原病疾患群 459例、非膠原病群 1107例が集積された。

・基礎疾患として、RAが6割、ついで乾癬性関節炎(1割)、SLEの順であった

・MTX投与量の中央値は受胎前MTX暴露群 10mg/w、受胎後MTX暴露群 15mg/w

・受胎後MTX暴露群では、投与期間は4.3wであり、50%が少なくとも5wまで投与を受け、14%が8-10wまで投与を受けた

・受胎前MTX暴露群の50%では2w前までには中止した

・自然流産は受胎後MTX暴露群で累積発生率が42.5%であった。受胎前MTX暴露群、膠原病疾患群、非膠原病群ではそれぞれ14.4%、22.5%、17.3%であった。膠原病疾患群と比較するとHR 2.1、非膠原病群と比較するとHR 2.5であった。ステロイドや他DMRADsでの自然流産への影響はすくなかった。

・先天性欠損についての検討は、受胎後MTX暴露群はmajorな先天性欠損が7例/106例で見られ非膠原病群と比較するとHR 3.1と有意差がついた。その他の群では差はみられなかった

・人工中絶についての検討は、受胎後MTX暴露群にて累積発生率が33.1%であり、膠原病疾患群と比較するとHR 7.4と有意差があった。4例/49例は胎児奇形のため中絶をおこなった、受胎前MTX暴露群にて累積発生率が14.1%であり、非膠原病疾患群と比較するとHR 2.4と有意差があった。

・妊娠期間や出生体重については、差は見られなかった。

<Discussion>

・MTXは妊娠の3M前より中止を薦められている。これはMTXがグルタミン酸と結合し主に肝臓にて数ヶ月間残存しているというstudyに基づいたものである。しかし、今回のstudyでは3M以内にMTXを使用した患者さんでは人工流産は多かったものの、その他のoutcomeでは差はつかなかった。

・limitationは、サンプル数が限られていること、器官形成期に暴露されていた例が多くはないため情報は限られていること、疾患活動性が加味されていないこと、MTX暴露群では人工流産が多いため先天性欠損はできていない可能性があること、人工流産した胎児の解剖学的な検索はルーチンには行っていないため先天性欠損が低く見積もられている可能性があること、5週間より前の早期流産がカウントできていない可能性があること、が挙げられた。

 

<コメント>

・MTX内服中の偶発的な妊娠は経験するものである。人工中絶を薦める事も多いが今回の検討で必ずしもすべての例で中絶しないで良い可能性もあると思われた。

 

担当:矢嶋宣幸

 

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