Journal Club【20140604】早期関節リウマチと腫瘍随伴性関節炎は見分けられるか?

Diagnostic dilemma of paraneoplastic arthritis: case series.

Kisacik B1, Onat AM, Kasifoglu T, Pehlivan Y, Pamuk ON, Dalkilic E, Donmez S, Bilge SY, Yilmaz S, Erdem H, Mercan R, Ozturk MA, Bes C, Soy M, Erten S, Cobankara V, Senel S, Oner FA, Direskeneli H, Yilmaz S, Yazici A, Emmungil H, Aksu K, Kul S, Cetin GY, Sayarlioglu M.
Int J Rheum Dis. 2014 Jan 17. doi: 10.1111/1756-185X.12277
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=diagnostic+dilenma+of+paranaoplastic+arthritis

早期関節リウマチと腫瘍随伴性関節炎は見分けられるか?

<背景・目的>
腫瘍随伴性関節炎(paraneoplastic arthritis以下PA)はリウマチ性疾患に類似していることが多々ある。
この研究はPAと診断された患者の特徴と統計を調べることで、早期関節リウマチ(以下ERA)とPAを見分ける方法を見つけることを目的とした。

<対象と方法>
15の異なるリウマチ科のある病院で診断された65人のPAの患者(男 43人,女 22人)とコントロールとしてGREAT(Gaziantep Rheumatology Early Arthritis Trial)で少なくとも1年以内に診断されたACR2010のクライテリアを満たす50人のERAの患者(男13人,女37人)を対象とした。

<結果>
平均年齢はPAが50.2±15.3歳,ERAが42.7±12.3歳で、PA患者が有意に高齢であった。ERAに比して、PAは男性患者に多かった。ERAに比して固形腫瘍のPAでは有意に少関節炎の患者が多かった。(P=0.001)。PAに比してERAでは多関節炎・対称性関節炎の患者が有意に多かった(P=0.001)。RF、ACPA陽性例はそれぞれERAで有意に高率であった(P=0.001)。LDHの数値は血液系腫瘍のPAでは他のグループ(固形腫瘍のPA、ERA)と比べ有意に高値であった。

<Discussion>
ERA患者はPA患者に比べ、多関節炎・対称性関節炎であることが多い。検査値としてはRF陽性、ACPA陽性ではERA患者が多い。両者を見分ける特徴として、ERAは女性に多く見られ、40-59歳の比較的若年に多い。

<コメント>
早期関節リウマチの分類基準(ACR/EULAR 2010)が普及し、骨破壊が起こる前に治療介入を行うことが可能になった。しかし、その反面、それ以外の疾患(腫瘍随伴性関節炎等)をRAと診断してしまう可能性も十分にあり、関節リウマチの診断の前に他疾患を十分に除外する必要がある。
(実際、腫瘍随伴性関節炎の症例の中には発症時、早期関節リウマチと診断されていた症例もあった。)

PA(腫瘍随伴関節炎)の特徴としては単・少関節炎、非対称性、下肢関節主体、血性反応陰性(RF陰性、ACPA陰性)、高齢発症、急性発症、CRP高値、LDH高値、DMARDS反応性不良等が挙げられる。一般的にRA患者に網羅的に細かな悪性腫瘍のスクリーニングを行うことは推奨されてはいないが、上記のようなPAに特徴的な所見を認める場合、RAの診断には注意を要する必要がある
 
担当:石井 翔

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