Journal Club【20140604】高齢者RA患者において過去に使用したステロイドは感染症のリスクになるか?

 

「Immediate and delayed impact of oral glucocorticoid therapy on risk of serious infection in older patients with rheumatoid arthritis: a nested case–control analysis」

William G Dixon, Michal Abrahamowicz, Marie-Eve Beauchamp, David W Ray,

Sasha Bernatsky, Samy Suissa, Marie-Pierre Sylvestre,

1Arthritis Research UK、Epidemiology Unit, Manchester、Academic Health Science Centre, University of Manchester, Manchester, UK

Ann Rheum Dis. 2012 ;71:1128-33

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22241902

高齢者RA患者において過去に使用したステロイドは感染症のリスクになるか?

<背景目的>

・いままでの報告は、「過去のステロイド使用」「現在のステロイド使用」における感染症のリスクを報告したものであり、実際に投与されたステロイドの量・期間によって、感染症のリスクがどうなるかという報告はなかった

・今回は、PSLが重症感染症のリスクになるかを実際の臨床的な内服の方法での検討を行った

<対象>

・65歳以上のRA患者で重症感染症にて入院した症例

・少なくとも一種類以上のDMARDsの投与を受けているRA患者

<方法>

・カナダのケベック州の入院データベースを用いて、65歳以上のRA患者で1985-2003年に重症感染症にて入院した症例を抽出した

・コントロール群として、性別と年齢をマッチさせたRA患者を1:5の割合で登録した

・通常用いられてきたカテゴリーに分類(10種類)してリスクの検討を行った

・ステロイドはWeighted cumulative doseモデルを使用し、1M、3M、1y、2y、3y、4yの6つカテゴリーに分けてリスクの検討を行った

・RAの活動性は代替マーカーとしてNSAIDs使用量、リウマチ専門医や総合医への受診回数を用いた

・他の計測項目としては、合併症(呼吸器、骨粗鬆症、癌、糖尿病、CKD)、併用薬剤(抗リウマチ剤、PPI/H2ブロッカー)とした

<結果>

・16207例の65歳以上のRA患者が抽出され、平均観察期間3.8年で1947例が重症感染症に罹患した。

・コントロール群は9735例であり、case(重症感染症で入院を要した)群では有意に疾患活動性は高く、合併症を有する率も高かった。

・table2では、「現在のステロイド使用」、「過去30日以内の使用」群では、全てのカテゴリーにおいて感染症の発生のリスクが有意に高かった。

・もっともAICが低かったのは、従来のカテゴリーを用いた場合の検討で「(3)過去90日以内にステロイド使用した」群であった。またWCDを用いたモデルでの検討では「3y間ステロイドを使用した」群がもっともAICが低く、従来のカテゴリーと比較しても、AICが低かった。

・現在の内服やごく最近のステロイド内服が、感染症発症にもっとも高い影響があった。6M前の内服歴でも影響は残存していた。その後、2.5y前の内服歴まで感染症発症の影響が一時上昇した。0-3M、3-6M、6-12Mは感染症発症に関連性はあったが、12-18Mの関連性はなくなった。18-24M、24-30Mは再度関連性が生じ、30-36Mには関連性は消失した。

・table3では、5mgを7日使用しただけでもOR 1.03と上昇し、3y間使用した場合はOR 2.0と上昇した。

<Discussion>

・長期にわたる感染のリスクが上昇する原因として、Tリンパ球のアポトーシスなどのステロイドに影響を受けた免疫機構が長期に持続してしまっている可能性、長期間のステロイド使用による皮膚バリアの障害の可能性がありうる。

・limitationとしては、PSLのアドヒアランスが計測されていないため実際より過小評価されている可能性があること、交絡因子になりうるRA活動性が直接評価を行われていないこと、が挙げられた。

<コメント>

・生理的なステロイド量であるPSL5mg程度でも長期使用により感染リスクが上昇しうる。また骨粗鬆症も5mgでも進行する事が言われており、なるべく少量にするように日常診療で意識すべきである。

 

*WCD: Weighted cumulative dose model:時間と量を特殊な方法で重み付けをした

*Nested case control analysis:コホート内ケースコントロール研究

*AIC:Akaike’s Information Criterion

l 統計モデルの良さを評価するための指標

l 「モデルの複雑さと、データとの適合度とのバランスを取る」ために使用される

l AIC最小のモデルを選択すれば、多くの場合、良いモデルが選択できるとされる

 

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、毎週水曜日にJournal Clubを通じ新しい知見を得る機会を設けています。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、若手医局員の教育に注力しております。詳細はこちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、研究するための時間を確保するprotect time制度を開始いたしました。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、他医療機関での研修を年に1週間行っております。こちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、広い視野を持てる医師を育成したいと考えております。医療コミュニケーション教育理論の勉強会を行っております。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、手稲渓仁会病院の岸田先生による感染症専門医による感染症コンサルテーションを年に3−4回行っております。詳細はこちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、今年度から新たにケースベースの膠原病勉強会を開始いたしました。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科にて研修された研修医の先生の感想を掲載しております。こちらをご参照ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始