Journal Club【2015114】バシリキシマブは抗MAD5抗体陽性のCADM患者に有効か?

  Basiliximab may improve the survival rate of rapidly progressive interstitial pneumonia in patients with clinically amyopathic dermatomyositis with anti-MDA5 antibody

Ann Rheum Dis doi:10.1136/annrheumdis-2014-205278

 

http://ard.bmj.com/content/early/2014/04/16/annrheumdis-2014-205278

 

『バシリキシマブbasiliximabが抗MDA5抗体陽性のCADM患者における急速進行性の間質性肺炎の生存率を改善する可能性がある』

 

【背景】

・CADMは明らかな皮疹はあるが筋病変に乏しいもしくは筋症状の無い皮膚筋炎の特殊型である。

・CADMにおけるRPIPはアジアでこれまで報告されてきた。対して、Cottinらは欧米のCADM患者の間質性肺炎において予後の良好な経過を報告している。CADMの治療は困難であり、高用量ステロイドや免疫抑制剤といった積極的な治療にも反応しない事が多い。

・IL2受容体(IL2Rα、CD25)は活性化されたT、Bリンパ球に発現する。

・全身性強皮症においては疾患活動性と可溶性IL2Rのレベルは相関する。 最近の急速進行性の全身性強皮症の研究において、併用治療としてのモノクローナル抗体(basiliximab)によるCD25陽性リンパ球の阻害が有効であると報告されている。

・可溶性IL2Rは皮膚筋炎おいて疾患活動性と相関すると考えられ、病因において活性化したリンパ球の役割を示唆する。 そのため、IL2Rを標的にする新たな治療がCADM RPIPの新たな治療となる可能性がある。

【患者背景】

・2012年9月から2013年2月の間に4例の基本的加療に反応しない急速進行性IPが登録された。3例は反応し、1例は死亡した。

・RPIPは以下を満たした場合に定義した。⑴3ヶ月以内の呼吸困難感の進行 ⑵P/F比<300の呼吸不全 ⑶HRCTでの両側性浸潤影

【各患者の特徴】

・全例ヘリオトロープ、ゴトロンあり、全例皮膚潰瘍なし

・全例筋電図は陰性

・CKは50〜100IU/l

・ANA 症例1:80倍 他:陰性

・抗Jo1抗体:全例陰性

・抗MDA5抗体:全例陽性

・フェリチン値:症例1:634 ng/ml、他は1700〜2300ng/ml

・P/F比:300〜410

【結果】

・患者はPSL1–2 mg/kg/dayとCsA 3–5 mg/kg/dayの併用で加療された。

・症例1・2においてbasiliximabの前に、連続して、IVIg 0.4 g/kg/dayが5日間投与された。

・全例、PSL・CyA・IVIg治療の後にRPIPに進展し、急性呼吸不全を呈した。感染症の徴候は無かった。

・P/F比<300でbasiliximabが追加された。

・7日おきに20mgのbasiliximabが合計2回投与された。症例3は20mgの投与をうけ、その3日後に死亡した。

・症例3を除いて、HRCTスコは30%, 45% と26%に低下した、

・平均フェリチン値は生存者において著明に低下した。

・3例の生存患者の肺機能はbasiliximab後に改善した。

【結論、考察】

・今回、basiliximabがPSLとCyAに治療抵抗性のRPIPに投与された。 3症例(75%)の患者で有効性が示された。 その後、患者の状態は安定化し寛解維持療法(PSL+CyA)に反応している。

・活性化リンパ球を標的に治療する事がCADMに伴うRPIPの病勢コントロールに効果がある可能性が示された。

・Basiliximab前のPSLとCyAの併用療法もまた、良好な転帰をもたらした可能性がある。

・もっと多くの患者で長い期間の研究が求められる。

 

 

担当:柳井 亮

 

****************************************

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、毎週水曜日にJournal Clubを通じ新しい知見を得る機会を設けています。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、若手医局員の教育に注力しております。詳細はこちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、研究するための時間を確保するprotect time制度を開始いたしました。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、他医療機関での研修を年に1週間行っております。こちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、広い視野を持てる医師を育成したいと考えております。医療コミュニケーション教育理論の勉強会を行っております。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、手稲渓仁会病院の岸田先生による感染症専門医による感染症コンサルテーションを年に3−4回行っております。詳細はこちらをご参照ください。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科では、ケースベースの膠原病勉強会を行っております。こちらをご覧下さい。

 

・昭和大学リウマチ膠原病内科にて研修された研修医の先生の感想を掲載しております。こちらをご覧下さい。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちと一緒に学びませんか?

プログラム・募集要項はこちら


昭和大学病院
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
アクセスマップ
電話:03-3784-8000(代表)

[初 診]月曜~土曜 8:00~11:00
[再 診]月曜~土曜 8:00~11:00(予約のない方)
[休診日] 日曜日、祝日、創立記念日(11月15日)、年末年始