Arthritis Rheumatol. 2014 Nov;66(11):3096-104. doi: 10.1002/art.38790.
Treatment of lupus nephritis with abatacept: the Abatacept and Cyclophosphamide Combination Efficacy and Safety Study.
ループス腎炎に対するシクロフォスファミド・アバタセプト併用療法の効果・安全性について(ACCESS Trial)
ループス腎炎に対するアバタセプトの効果は?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25403681
【背景】
アバタセプトはCTLA-4、CD80/86を介してT細胞を抑制することで免疫抑制作用を有し、関節リウマチに対する効果が知られている。
その効果はSLEに対する効果も示唆されており、ループス腎炎のモデルマウスではすでにシクロフォスファミドに加えてアバタセプトを追加投与した際の腎炎の抑制効果が示されている。
また臨床研究においても無作為比較試験の事後解析によるとループス腎炎に対する臨床的な利益は示唆されている。
本研究では活動性ループス腎炎に対するアバタセプトの効果・安全性について検討した。
【方法】
対象:134例のループス腎炎
(ACR クライテリアを満たすSLE、抗核抗体もしくはdsDNA陽性患者
12週以内に腎生検施行し、増殖性ループス腎炎Ⅲ型orⅣ型(+-Ⅴ型)、gCr1以上)
患者背景 Table1参照
場所:アメリカ 19施設、メキシコ 2施設
期間:2008年~2012年
Euro-Lupus Nephritis Trial regimen of low-dose CYCに準じてステロイド大量療法、IVCY 500mg/2週×6回、AZA 2mg/kgで維持療法。
PSLは60mgで開始、12週後までに10㎎、AZA内服で維持。
(ステロイドパルスは使用せず)
上記患者にアバタセプト群とプラセボ群にランダムに割り付け、二重盲検比較。
アバタセプトはRA DOSEで毎月投与
(60kg以下で500mg、60-100kgで750mg、100kg以上で1000mg)
24週時点で寛解していない患者は治験終了。
24週時点でアバタセプト群の完全寛解の患者はアバタセプト中止。部分寛解はアバタセプト継続。
その他の患者は同様の維持療法継続。
54週時点で再評価
定義
完全寛解:gCr 0.5以下、Cr≦1.2mg/dl or ≦125% of base line
部分寛解:0.5<gCr ≦50% of base line、Cr≦1.2mg/dl or ≦125% of base line
主要評価項目 24週時点の完全寛解率
副次的評価項目 24週時点での寛解率(完全+不完全)
gCr、dsDNA抗体の消失、C3、C4、疾患活動性(BILAG score) 、患者全般的評価、健康関連QOL尺度(SF36)、原病再燃、人種毎の寛解率
他、安全性、52週時点のoutcome
【結果】
アバタセプト群、プラセボ群で主要評価項目、副次的評価項目、安全性に有意差は認めなかった。
(24週時点での完全寛解率 アバタセプト群 33%、コントロール群 31%)
【結論】
ステロイド大量療法、IVCYを施行した(Euro-Lupus Nephritis Trial regimen of low-dose CYC) を施行したループス腎炎に対して、
アバタセプトを追加投与しても、24週、52週時点での予後の改善は認めなかった。プラセボ群とアバタセプト群では安全性において有意差はなかった。
【議論・考察】
PSL、IVCY、AZAに追加投与した際の効果しか示せていない。
(MMF、TACへの追加効果は?単剤ではどうか?MMFでのABTの追加効果は多研究の事後解析で示されている)
(SLEに対するアバタセプトの効果を示せている論文もあり、関節炎有意の症例では特に)
アバタセプトの量が少ない可能性がある。(RA doseで行っている)
観察期間が短い。
nが少ない。
アジア人は少ない。
ループス腎炎に対するMMF・アバタセプトの併用療法についての臨床研究が進行中である。
担当:石井 翔
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