Autoimmun Rev. 2016 Jan;15(1):82-92. doi: 10.1016/j.autrev.2015.09.005. Epub 2015 Sep 25
Thymoma associated with autoimmune diseases: 85 cases and literature review.
Bernard C、et al.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26408958
背景・目的:
胸腺腫は自己免疫性疾患(特に重症筋無力症)と関連が知られている。
胸腺腫患者における自己免疫性疾患(以下AD)の臨床像、治療、予後を調べる
方法:
2005年から2011年の間にフランスの3つの大学病院で胸腺腫と診断された患者を後ろ向きに調査した。ADを合併した群と合併しなかった群を比較した。
その他、2015年まででpub med、National Library of medeicineに掲載されている過去の文献を集め、総括した。
結果:
胸腺腫の患者、計85人中47人(55%)がADを合併した。
重症筋無力症(n=33)、橋本病が(n=4)、Isaac’s 症候群 (n=3)、 Morvan 症候群 (n=2)、赤芽球癆 (n=2), SLE (n=2),扁平苔癬 (n=2), 炎症性筋炎(n=1), 自己免疫性肝炎(n=1)、再生不良性貧血(n=1), 自己免疫性溶血性貧血 (n=1),Good’s症候群(低γグロブリン血症)(n=1),天疱瘡 (n=1), バセドウ病(n=1), 辺縁系脳炎(n=1),であった。6例(7%)の患者で2種類以上の疾患を合併していた。
胸腺腫術後のFOLLOW UP期間は平均60ヶ月(40-78ヶ月)であった。
胸腺腫の発見前にADと診断されたのが32例、同時に診断されたのが9例、胸腺腫摘出後にADを発症したのが7例であった。
胸腺腫の正岡分類において重症筋無力症患者とその他のADとで有意な差があった。(p=0.028)
胸腺摘出術後にADを発症するリスク因子は認められなかった。
Highlights
・胸腺腫患者は重症筋無力症をはじめとしたADを多く発症する。
・2/3の患者は胸腺摘出前にADを発症した。
・術後にADを発症するかどうかのリスク因子(病理学的な差異を含め)は存在しなかった。
Literature review(疾患毎のreview)
・SLE
2~10%の胸腺腫患者がSLEを合併する。
高齢SLE患者は胸腺腫の可能性を考慮すべき。
37例の胸腺腫関連SLEをまとめたところ、
29人(78%)が女性、診断時の平均年齢が胸腺腫が55歳、SLEが53歳。症状としては、関節炎が59%、皮膚症状が35%、漿膜炎38%。
胸腺腫と診断される前にSLEと診断されたのが32%
同時に診断されたのが35%
胸腺腫と診断された後にSLEと診断されたのが32%
胸腺腫の摘出がSLEに与える影響に関しては不明瞭であった。
SLEの活動性が記載されていた18症例の文献をまとめたところ、
胸腺腫摘出後、5人は変化なし、6人は活動性悪化、7人は活動性が改善した。
・自己免疫性血球減少
赤芽球癆の10%に胸腺腫、胸腺腫の2~5%に赤芽球癆を合併する。
胸腺切除で25~30%が反応するという文献と全く反応しないとする文献がある。
胸腺腫合併赤芽球癆はシクロスポリンが著効することが多い。
再生不良性貧血が合併するのは0~1.4%。稀。胸腺摘出のみで改善することはほとんどない。
自己免疫性溶血性貧血は胸腺摘出が著効することもある。
自己免疫性血症板減少症、好中球減少、無顆粒球症、TTP、巨核球低形成の報告もある。
・炎症性筋炎
598人の胸腺腫関連ADの中で筋炎の患者は5%。
924人の重症筋無力症患者のうち、0.9%で筋炎を合併。
22人の胸腺腫関連筋炎の内、18例が重症筋無力症を合併したと報告あり。
胸腺腫関連筋炎とMGとの合併は比較的多い。
・甲状腺疾患
比較的多い。胸腺腫患者で9.1%合併。重症筋無力症患者の5~11.9%で合併。
担当:石井 翔
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