J Obstet Gynaecol Res. 2014 Jun;40(6):1598-602. doi: 10.1111/jog.12386.
Behçet’s disease and pregnancy: a retrospective analysis of course of disease and pregnancy outcome.
Iskender C et.al.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24888922
ベーチェット病は妊娠のアウトカムに影響するか
【背景】
BDは妊娠可能年齢に多くみられ、妊娠、出産、新生児への影響が考えられる。しかし、これまで少数の小さいサンプルサイズの研究が行われているのみである。
【目的】 BDと妊娠のアウトカムについての関係を明らかにする。
【研究デザイン】後ろ向き研究
【研究期間】 January 2008 から June 2013
【研究施設】 多施設(the perinatology clinic of Dr Zekai Tahir Burak Research and Training Hospital )
【対象】 49 pregnancies in 24 patients with BD (新規にBD診断)
【結果】 死産、子癇前症、早期産、子宮内発育遅延等の各項目においてコントロール群と差を認めない。
【結論】 BDは妊娠のアウトカムに悪影響をおよぼさない。妊娠期間中はsymptom-freeの状態が得られる傾向がある。一部の患者では疾患の増悪がみられる。
【考察】
○妊娠期間中は疾患活動性が抑えられる。
プロゲステロン:Tcell,マクロファージ、natural killer cellの活動性を抑える。
エストロゲン:IL-12の産生や抗原提示の抑制、抗炎症系サイトカインのIL-10産生を刺激する。
→エストロゲン、プロゲステロンの上昇によってBD症状が抑えられているのではないか。
○過去の研究
・これまでの研究で月経がBDの疾患活動性に影響を与えており、ピルの使用で改善されるとの報告がある。(女性ホルモンの安定により症状が改善されるということも示唆しているかもしれない)
・60%が妊娠期間中は無症状、8%が増悪している。
・27人のBD妊娠で66%が増悪しているとの結果があり、主に妊娠第1期に起き、大多数が口腔内と陰部潰瘍の悪化でおきていると記述されている。
・52-70%が寛解している。
→報告により差はあるが、妊娠期間中は寛解傾向にあり、症状がでるとしたら口腔内または陰部潰瘍である。
・40%程度に血管系の合併が多くみられる。血管のサイズは様々で、静脈系が優位ではあるが動脈系静脈系ともに出現している。
・妊婦における凝固亢進は産科合併症の原因となりうる。いくつかの研究ではBD合併妊娠中にBudd–Chiari syndrome や脳静脈血栓症を起こすことを報告している。
・妊娠前に血栓症の既往がある場合、妊娠合併症のリスクが高いという報告があり、流産も多いといわれている。(ただし本研究でBD群vsコントロール群と有意差なし)
○今回の研究
・カイザー、NICU、流産も含め、コントロール群と大して変わらない
・妊娠前後の疾患活動性の比較が出来ていない。
・結局サイズが小さい。
・神経、ぶどう膜、血管病変の患者が少なかった。
・ステロイド使用者も少なかった。
→重症でなかったため妊娠が可能であった可能性がある。
・BDの再燃、コルヒチンの使用がどう影響するかに言及できなかった。
担当: 三浦 瑶子
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