長期フォローアップ中の423人の日本人SLE患者の単施設コホートスタディにおける疾患再燃パターンと予後因子:JUDE Study【journal club20170329】

Disease flare patterns and predictors of systemic lupus erythematosus in a monocentric cohort of 423 Japanese patients during a long-term follow- up: The JUDE study

Modern Rheumatology 27(1); 72-76: 2017

Kentaro Minowa, Hirofumi Amano, Seiichiro Ando, Takashi Watanabe, Michihiro Ogasawara, Shinya Kawano, Toshiyuki Kaneko, Shinji Morimoto, Ken Yamaji, Naoto Tamura, Yoshiaki Tokano, Hiroshi Hashimoto & Yoshinari Takasaki

 

【目的】全身性エリテマトーデス(SLE)患者の再燃に関連する因子、経時的変化の特徴を明らかにすること

【方法】来院歴のあるSLE患者を順天堂大学エリテマトーデスデータベースに登録した。長期追跡分析に423例を含め、治療介入開始後10年間383例を追跡した(比較分析:1973-1982年 82例、1983-1992年 141例、1992-2002年 160例)。患者背景の特徴、症状、再燃率などの変化を評価した。

【結果】423例のうち、平均追跡期間は25.9年であり、平均再燃数は0.51回であった。そのうち、39.1 %が1回以上再燃していた。また、発症時の血小板減少が再燃に寄与していた。発症時の症状については、最近の傾向として血小板減少が増えていることが観察された。ループス腎炎以外の症状に対する免疫抑制剤の併用率がわずかに増加していたが、最初の再燃や再燃率は改善していなかった。

【結論】発症時の血小板減少は再燃の予測因子である。SLEは再燃時に様々な症状を呈する疾患のため、長期的な観点から血小板減少の治療ガイドラインを改善すべきである。

 

<和訳>

【序章】

近年SLEの予後は1955年の5年生存率50 %以下から、10年生存率90 %まで改善傾向にある。この理由として、ステロイドの導入やシクロフォスファミドパルス療法の使用などが疾患予後に大きく寄与したと考えられている。また、SLEという疾患概念の広まりにより、軽症症例の早期の診断や、また感染症などの合併症コントロール技術の向上も挙げられる。

しかしSLEは多彩な症状や臓器病変を呈するため、最近のRCTでは被検者が限られており、疾患の予後改善を明らかにできていなかった。これまで、数年という短期間での疾患活動性のパターンや再燃発生の報告はあったが、長期間の追跡はなかったので、順天堂大学では自験例を用いて研究を行った。

 

【方法】

順天堂大学医学部リウマチ内科に来院歴のあるSLE患者は、Juntendo University Database of Erythematosus(JUDE)に登録された。現在まで2390例が登録されている。そのうち、423例を2003年から2012年までの少なくとも10年間、継続して長期調査の対象とした。加えて、423例のうちの297例を含む383例を治療介入開始後10年間追跡し、1973年以降10年ごとのグループ:1973-1982年 82例、1983-1992年 141例、1993-2002年 160例に分類した。すべてのSLE患者は1971年ARA基準、1982年ARA基準を満たした。2003年以降に治療が開始された患者に関しては、10年間の経過を追跡することができなかったので、分析しなかった。疾患活動性の評価にはSLEDAI-2Kを使用した。APSと血小板減少の項目は別に収集し、また薬剤誘発性血小板減少、血液悪性疾患、DICを有する患者は除外した。発症時期は、経口または経静脈的なステロイド投与、免疫抑制剤、およびNSAIDSなどの非免疫抑制剤などの治療を開始した時と定義した。再燃はSELENA-SLEDAI再燃基準に準じたsevere flareと定義した。

 

【統計解析】

ロジスティック回帰分析を行うことにより、長期追跡における患者背景の特徴、発症年齢、性別、症状、発症時の治療、再燃の発生、再燃の回数、再燃時の症状、再燃に寄与した因子を決定づけるための長期の臨床的特徴を解析した。比較分析における10年ごとの3つのグループ間で、患者背景の特徴、症状、治療、再燃を比べた。発症から最初の再燃までの期間分析において、Kaplan-Meier生存曲線を使用した。群間比較においては、Kruskal-Wallis検定を使用した。統計解析はR(Foundation for Statistical Computing)を用いて行った。

 

【結果】

Figure1 423例の長期追跡症例のうち、平均追跡期間は25.9年、平均年齢は29.3歳、男女比は92.3対7.3であった。

Table1 発症時と最初の再燃時の症状を示している。発症時には30 %以上の患者に発熱、皮疹、関節炎が観察されている。最も一般的な臓器病変はループス腎炎(31.2 %)であった・発症時と再燃時の臨床症状の割合を比較すると、再燃時には発熱、皮疹、関節炎のような一般的な臨床症状は減少しており、対照的にループス腎炎が31.2→42.2 %、中枢神経ループスが5.9→11.9 %と増加していた。

Table2 発症時と最初の再燃時の治療を示している。80.1 %の患者がコルチコステロイド、18.4 %がコルチコステロイドと免疫抑制剤で、最初に治療されていた。

フォローアップ中の平均再燃回数は0.51回であり、135例(31.9 %)は1回以上再燃していた。

Figure2 発症から再燃までの期間を示している。(最初の再燃までの期間または再燃率をKaplan-Meier曲線に準じて) 再燃は40 %の症例で生じ、たいてい10年以内に起こった。10年以内の再燃回数に応じて0,1,2回以上の3グループに分類した。それぞれのグループの発症年齢の割合をFigure3に示している。若年発症は2回以上の再燃グループの割合が高かった(Kruskal-Wallis検定においてP<0.001)。

Table3 発症時から再燃時までの症状の推移を示す。

【結論】発症時の血小板減少は再燃の予測因子である。SLEは再燃時に様々な症状を呈する疾患のため、長期的な観点から血小板減少の治療ガイドラインを改善すべきである。

 

担当:齋藤 麻由

 

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