CTGFの阻害は関節リウマチモデルマウスの関節炎を改善させる【Journal Club 20180110】

Inhibition of connective tissue growth factor ameliorates disease in a murine model of rheumatoid arthritis.

Nozawa K1, Fujishiro M, Kawasaki M, Yamaguchi A, Ikeda K, Morimoto S, Iwabuchi K, Yanagida M, Ichinose S, Morioka M, Ogawa H, Takamori K, Takasaki Y, Sekigawa I.

  1. Juntendo University School of Medicine, Tokyo, Japan, and Juntendo University Graduate School of Medicine, Chiba, Japan.

2013 Jun;65(6):1477

【用語・背景】
・connective tissue growth factor(CTGF)
血小板由来成長因子の交叉反応性の物質として発見された。38kdのポリペプチド。
血管内皮細胞や骨細胞・破骨細部尾から分泌される。
CCNファミリーの生理活性サイトカインでTGF-βのdownstream mediatorに関わることはわかっている。
著者らによりCTGFがRAの患者血清中で上昇していることが証明されている。
また、破骨細胞の細胞表面にCTGFの受容体が存在することが証明されている。

【目的】
関節炎モデルマウスを使って、CTGFのRAにおける役割を同定すること。

【方法・結果】
・Figure 1
・関節炎発症後8週目のCIAマウスでの関節軟骨組織におけるCTGFの発現(免疫染色法)
→コントロールに比べ、CTGFは強く発現していた。

・Figure 2
・CIAマウスにおけるCTGF pathwayのブロックによる関節炎の発展、進展の阻害
→CTGF阻害薬(抗CTGFモノクローナル抗体)は最初から組み込んでいる。

A:CIAマウスの関節炎スコアの推移
・CTGFのみでは7-8週をピークに関節炎は強くなる。
CTGF+CTGF阻害薬では関節炎は発症するがコントロールに比べると弱い。
B:CIAマウスの足趾の腫脹の推移
・Aの結果に同じ
C:CIAマウスの血清中のCTGFのMMP-3の濃度(ELISA法で測定)
・CTGFのみで、一番高値となる。
CTGF+CTGF阻害薬ではコントロールよりは高いがCTGFのみに比べると抑制される。
D:滑膜組織における炎症細胞浸潤の程度
・CTGFのみが炎症細胞浸潤が強い。
CTGF+CTGF阻害薬では炎症細胞浸潤が抑制される。

・Figure 3
・CIAマウスにおけるCTGF pathwayのブロックによる関節炎の発展、進展の阻
→CTGF阻害薬(抗CTGFモノクローナル抗体)は関節炎が発症してから、4,5,6週目に
組み込んでいる。実験内容はFigure 2と同じ。

A:CIAマウスの関節炎スコアの推移
・CTGFのみでは7-8週をピークに関節炎は強くなる。
CTGF+CTGF阻害薬では阻害薬を入れてからは進展が抑えられる。
B:CIAマウスの血清中のCTGFのMMP-3の濃度(ELISA法で測定)
・CTGFのみで、一番高値となる。
CTGF+CTGF阻害薬ではコントロールよりは高いがCTGFのみに比べると抑制される。

・Figure 4
・CIAマウスにおけるT細胞増殖に対する抗CTGFモノクロナール抗体の効果

A:IL-2の濃度をELISA法で測定することによりT細胞の増殖を評価
・CTGFのみで、一番高い
CTGF+CTGF阻害薬ではコントロールよりは高いがCTGFのみに比べると抑制される。
B:CTGFと細胞内シグナル伝達の関係
・以前の研究より、ERKとFAKがCTGFによりmediateされることが分かっている。
今回、Immunobloting法にてERKとFAKのリン酸化を確認した。
→ERKは抗CTGFモノクロナール抗体でリン酸化が抑制された。

・Table 1、Figure 5
・CIAマウスにおけるCTGF pathwayのブロックによるTh17の分化と破骨細胞生成の抑制の検討
・Table 1
・CD4陽性T細胞からのサイトカイン産生を評価した。
抗CTGFモノクロナール抗体を使用した群ではIL-23、IL-10、IL-6の産生が上がり、IL-21、IL-17A、IL-4、IL-1bの産生が下がった。

・Figure 5
A:RT-PCRを用いて、CD4陽性T細胞のIL-17の発現を確認した。
・抗CTGFモノクロナール抗体を投与した方の産生が抑制された。
※グラフはないが、IL-21も低下した。
B:RT-PCRを用いて、Nfkbizの発現を確認した
・抗CTGFモノクロナール抗体を投与した方の産生が抑制された。
→NfkbizはTh17の分化に関与しているとされる物質
C:RT-PCRを用いて、IRF-4の発現を確認した
・抗CTGFモノクロナール抗体を投与した方の産生が抑制された。
→IRF-4はIL-21の産生に関与しているとされる物質
D:脾臓からとったCD14陽性単球をM-CSFとRANKLを加えて培養し、そこから出てくる酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP:破骨細胞のマーカー)の発現をキットを用いて、TRAP陽性細胞をカウントすることにより測定した
→抗CTGFモノクロナール抗体を投与した方の産生が抑制された。

【まとめ】
★CTGFはTh17細胞や破骨細胞と関連してRAの骨破壊に関連しているかもしれない。
・今後の研究展開や論文に対する検討課題
・他の膠原病疾患ではどうか?
・抗CTGF薬は治療薬となるかもしれない。
・自分なりの疑問点
・動物実験であるため、ヒトのRA患者で同じ結果が得られるかは不明。

担当:西見慎一郎

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