トシリズマブ使用後の妊娠についての検討【Journal Club 20180404】

Pregnancy outcomes after exposure to tocilizumab: A retrospective analysis of 61 patients in Japan

Ken Nakajima, Omi Watanabe, Mayumi Mochizuki, Ayako Nakasone, Nobuhiko Ishizuka, and Atsuko Murashima

2016 Sep;26(5):667-71

P:トシリズマブ使用後に妊娠の判明した61例

E

C

O:妊娠の帰結

<セッティング>
・中外製薬のトシリズマブ安全性データベース(2005年4月〜2014年10月)のデータを使用

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
retrospective analysis 記述研究

<Population、およびその定義>
・2005年4月の日本におけるトシリズマブの承認後、トシリズマブ治療を受けている女性の妊娠が報告され、中外製薬の安全性データベースに登録
・日本で承認された適応症(RA、全身性若年性特発性関節炎、多関節性若年性特発性関節炎、またはキャッスルマン病)

<主な要因、および、その定義>
・妊娠、トシリズマブ投与

<Control、および、その定義>
・なし

<主なアウトカム、および、その定義>
・妊娠の結果;患者、胎児、または新生児の異常;および授乳状態。

<結果>table1
・61妊娠についてデータを抽出、うち42妊娠で転帰が報告されている。
・平均年齢30.5歳、86.9%はRA
・10例では最終月経より前にトシリズマブ投与を中止、30例では1st trimesterまでに中止(時期は不明だが、うち2例で妊娠期間中に再開)。2nd,3rd trimesterで中止した人はおらず、19例は中止時期不明、2例は妊娠中全期間で継続していた。
・2人が授乳中にトシリズマブを再開した。

 

Fig1
・61妊娠中、児を得たのは36例。正規産は10例であり、早産2例、ほかは不明であった。

Table1,2
・先天異常の報告はされなかったが、1例で新生児仮死(出生後に死亡が報告)、5例で低出生体重児であった。

Table3
・自然流産9例、中絶5例。中絶例にはMTXとレフルノミドによる胎児異常のため行われた例を含む。

<メカニズム>
先行研究
・トシリズマブは、動物繁殖試験において胎児に明らかなリスクを示さなかった。
・マウスにおけるリポ多糖体誘発早産授受モデルを用いた研究は、トシリズマブが実際に早産の予防に役立つ可能性があることを示している。
・サルの研究では、異型性の可能性は示されなかったが、高用量で自然発生的な中絶/胎児死亡をより多く引き起こした
・さらに、子宮内発育遅延は、IL-6およびIL-18レベルの上昇と関連し、炎症がこの胎児の異常に役割を果たすことを示唆している

<Limitation>
・サンプルサイズが小さい
・疾患の重症度がわからない
・トシリズマブの投与量、期間がわからない
・報告バイアス(何かおこったから報告された)

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・トシリズマブの妊娠前投与は問題がない可能性が高い。
・やはり妊娠全期間での使用で本当に問題がないかはわからない。
・妊娠中に使用した例に関しては報告をしている

<この論文の弱点>
・妊娠全期間での使用例が少ないため、妊娠中の使用に関しては言いづらい
・産後の長期的予後が不明
・コントロール不在、リスクの統計的検討がされていない。
・リウマチ以外の疾患もすべて含めている

<この論文の好ましい点>
・(サンプルサイズが小さくはあるが)これまで使用を推奨されていなかった薬剤に関しての報告がされていること。

 

担当:三浦瑶子

 

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