CCL11は炎症性骨吸収の新規メディエーターである【Journal Club 20180530】

CCL11,a novel mediator of inflammatory bone resorption.

Kindstedt E1Holm CK1Sulniute R1Martinez-Carrasco I2Lundmark R2,3Lundberg P4.
Department of Odontology/Molecular Periodontology, Umeå UniversitySE-901 87, Sweden.

2017 Jul 13;7(1):5334

Keyword

☑ CC chemokine receptor 3(CCR3):好酸球、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞などに発現し、細胞の遊走と活性化を仲介している。多くの炎症性疾患に関係し、関節リウマチにおいても滑膜組織と末梢血に発現が確認され、関節液中のCD8+T細胞と単球上にCCR3の発現亢進を認める。

☑ Eotaxin-1 (CCL11): CCR3のリガンドで、各種白血球の遊走因子として働き、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、関節リウマチ、歯周炎の病態に関与することが示唆されている。

 慢性炎症性病態における骨吸収と骨形成の骨リモデリングの恒常性の破綻がRAなどの病態に関与するが、CCL11-CCR3の骨組織における発現、前破骨細胞の遊走能、骨吸収に及ぼす影響を評価することが研究目的

 

Pam2 stimulates osteoclast formation, bone resorption, and increased CCL11 expression in mouse parietal bones in vivo.

Figure1a
Pam2(コントロール:生食)をマウスの頭頂骨の上に皮下注射し炎症および骨吸収を誘発した。
TRAPで染色される破骨細胞の局在を評価した。CCL11は骨膜骨芽細胞および骨髄腔内の少数の細胞で検出された。炎症誘発された組織では骨表面に隣接する多核細胞がCCL11で染色され、TRAPでも染色されることから破骨細胞であることを確認された。すなわち破骨細胞にCCL11が発現している。

Figure1b
Pam2誘導性炎症によりCCL11レベルが上昇したことをさらに確認するために、頭頂骨のホモジネート中のmRNAを定量的に評価した。 TNFα、IL-1βおよびCCL11のmRNA発現レベルが亢進していた。
すなわち、炎症により骨吸収が促進するVivoモデルで破骨細胞においてCCL11の発現が促進している。

CCL11 mRNA and protein expression in TNF-α and IL-1β stimulated mouse osteoblasts.

Figure 2a: qPCR
骨芽細胞をTNF-αまたはIL-1βで6時間、24時間および48時間刺激しCCL11のmRNA発現を検討した。 24時間培養では、6時間と比較して、CCL11 mRNA発現が減少したが、TNF-α刺激群ではCCL11 mRNA発現が有意に増加した。 48時間刺激ではコントロールでもCCL11 mRNA発現の増加がみられたがTNF-αおよびIL-1βが有意に発現を亢進させた。

Figure 2b: ELISA
培養上清中でのCCL11の蛋白発現をELISA法で検討した。6時間刺激ではCCL11は発現しなかったが、24時間刺激で、TNF-αおよびIL-1βともにCCL11の蛋白発現が亢進した。 48時間刺激ではmRNAと同様にコントロール群でも発現を認めたがTNF-αおよびIL-1βが有意にCCL11蛋白発現を亢進させた。
すわなち、骨芽細胞において、炎症性サイトカインであるTNF-α, IL-1β刺激によりCCL11のmRNA発現と蛋白発現は亢進する。

Osteoclasts do not express CCL11 mRNA but their expression of CCR3 mRNA is upregulated by RANKL during osteoclast differentiation.

Figure 3a
骨髄マクロファージをM-CSF and/or RANKLで刺激し、分化中の破骨細胞におけるCCL11の発現を分析した .
TRAP陽性多核細胞の定量により、破骨細胞が分泌するCathepsin K mRNAの発現は培養2および3日目にM-CSF+RANKL刺激によって亢進された(破骨細胞は増えた)。CCL11 mRNA発現は、M-CSF単独刺激、 M-CSF+RANKL刺激ともに1〜3日間培養しても発現をみとめなかった。マクロファージおよび破骨細胞によって発現されることが知られているケモカインであるMCP1のmRNAは、M-CSF単独刺激では発現が亢進したが、M-CSF+RANKL刺激ではで発現が亢進しなかった。

Figure 3b
CCL11はその受容体であるCCR3に高い親和性をもつが、CCR2とCCR5に結合することができるので、破骨細胞分化がこれらの受容体発現レベルに影響を与えるかどうかを調べた。
CCR3のmRNA発現は、M-CSF単独刺激では非常に低かったが、培養2および3日目にRANKL付加により有意に発現が亢進した。対照的に、CCR2およびCCR5のmRNAレベルは、M-CSF単独刺激と存比較して、RANKLによって有意に抑制された。
すなわち、M-MCF+RANKLにより分化した破骨細胞ではCCL11 mRNAの発現は亢進しないがCCL11の高親和性受容体であるCCR3 mRNAの発現は亢進する。

Figure 3c
CCR3の破骨細胞における細胞内局在をConfocal microscopyを用いて視覚化するために、CCR3およびF-アクチンの免疫染色をした。CCR3は単核破骨細胞の突起および波状縁(ruffled border)に局在した。成熟多核破骨細胞において、CCR3は均一な細胞内分布を示すとともに、一部の領域の細いアクチンに富む突起の先端で検出された。

 

Co-localization of CCL11 and CCR3 receptor in osteoclasts of mouse parietal bones treated with PAM2.

Figure 4
組織におけるCCL11とCCR3間の相互作用を研究するために、Pam2で処置したマウス骨組織切片をCCL11およびCCR3を免疫染色した。破骨細胞および骨芽細胞がCCL11およびCCR3の両方で陽性に染色された。破骨細胞において、CCL11の局在化は、細胞内においてCCR3の局在化と重複していた。
すなわち、骨芽細胞によって産生されたCCL11が破骨細胞によって発現されるCCR3と相互作用することを示唆した。

 

CCL11 binding and effects on osteoclast migration and bone resorption.

Figure 5a
CCL11が破骨細胞前駆体の遊走を促進するか調べるため、破骨細胞前駆体をM-CSF単独またはMCP-1またはCCL11と組み合わせて刺激した。CCL11は破骨細胞前駆体の遊走を有意に促進した。

Figure 5b

CCL11と破骨細胞との相互作用を視覚化するために、蛍光標識されたCCL11を培養破骨細胞に加え、DIC and spinning disc microscopyを用いて生きた細胞の画像を記録した。CCL11は細胞内集中に蓄積した。
すなわち、CCL11は破骨細胞において細胞内に蓄積される。

Figure 5c
破骨細胞の骨吸収がCCL11の存在下で変化したを分析した。 M-CSF+RANKLにCCL11を添加した場合、総ピット面積は、コントロールと比較して、有意に増加した。
すなわち、CCL11は破骨細胞による骨吸収を促進する。

ⅰ)重要なポイント
Vivo実験:炎症により骨吸収が促進するVivoモデルで破骨細胞においてCCL11の発現が促進している。
Vitro実験:骨芽細胞において、炎症性サイトカインであるTNF-α, IL-1β刺激によりCCL11のmRNA発現と蛋白発現は亢進する。M-MCF+RANKLにより分化した破骨細胞ではCCL11 mRNAの発現は亢進しないがCCR3 mRNAの発現は亢進する。CCR3は破骨細胞の細胞内と表面の突起先端に局在する。骨芽細胞によって産生されたCCL11が破骨細胞前駆体の遊走を促し、破骨細胞細胞に分化したことにより発現が亢進したCCR3に作用し破骨細胞の骨吸収を促進する。

ⅱ)ユニークなポイントはどこか?
CCL11-CCR3をRANKL-RANKのように骨芽細胞と破骨細胞の相互作用としてとらえ、破骨細胞の遊走と骨吸収を発現実験だけでなく、機能解析している。画像解析を多く用いている。

 

担当:若林邦伸

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