Comparison of Remission and Lupus Low Disease Activity State in Damage Prevention in a United States Systemic Lupus Erythematosus Cohort
1.Michelle Petri:Division of Rheumatology, Johns Hopkins University School of Medicine, USA
2. Laurence S. Magder:Department of Epidemiology and Public Health, University of Maryland School of Medicine, USA
Arthritis Rheumatol. 2018 May 27
P:コホートに登録されたSLE患者(SLICCまたはACR SLE分類基準のいずれかを満たした)
E:LLDAS / CR on T / CR without T あり
C:なし
O:臓器障害
* LLDAS:Lupus Low Disease Activity State、CR:Clinical Remission、T:Treatment
<セッティング>
Hopkins Lupusコホート
(1987年以来進行中のSLE患者の予定されている縦断的単一センターコホート)
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
前向きコホート研究
<Population、およびその定義>
SLICCまたはACR SLE分類基準のいずれかを満たしたSLE患者(少なくとも1年間のコホート参加者).
医師VAS(PGA:Physician global assessments)およびSELENA SLEDAIおよび治療内容の確認.
診察は少なくとも3ヵ月ごと.
1人のリウマチ専門医が患者を観察.
除外:外来間隔が182日を超えた患者
<主な要因、および、その定義>
「CR without T」:プレドニゾン(PSL)または免疫抑制剤を使用しないSLEDAI = 0、PGA<0.5
「CR on T」:PSL≦5mg /日および免疫抑制剤による維持療法を許容。
「LLDAS」:腎臓、中枢神経系、漿膜炎、脈管炎、および構成要素なしのSLEDAI≦4、前回の訪問以後のSLEDAI成分の増加なし、PGA≦1、およびプレドニゾン用量≦7.5mg / 日.免疫抑制剤許容。
* ヒドロキシクロロキン治療は、3つの定義全てに許された。
解析時には「<25、25〜50、50〜75、75<」の4群にわけた。
<Control、および、その定義>
上記の寛解基準を満たさない患者
<主なアウトカム、および、その定義>
新しい臓器損傷は、SLICC / ACR障害指数(SDI)によって、来院ごとに測定された。
<交絡因子、および、その定義>
記載なし。
<解析方法>
ロジスティック回帰モデル(GEE).人月法を用いて解析された.
<結果>
・1,356人、合計77,105人月(person-months)間追跡、1987年〜2016年
・白人:55%、アフリカ系アメリカ人:38%
・女性:92%、平均年齢(コホート参加時):38.2(13.0)歳
・SLE罹病期間(コホート参加時):1年未満39%、1〜5年28%、5年以上33%
・SLEDAI(コホート参加時):2(中央値)
・観察期間の27%においてCR on Tを、50%においてLLDASの定義を満たした(Table 1)。
・観察期間の62,189人月中、595の新しい障害を認めた。10人年あたり1.15イベントに相当(table 2)。
・寛解/ LLDASの各タイプにて、割合が増加するにつれて、障害率が減少した(table 2)。
・CR on Tはフォローアップの25%未満でも、その状態にない患者(RR = 0.54、p <0.0001)よりも有意に低い障害率であった(table 2)。
・LLDASに占める時間の割合が25%未満の短い患者は、障害率の低下しなかった。少なくとも50%のLLDASを経験した患者の障害率は低かった(10人年あたり0.75〜0.88事象)。LLDASの目標達成は比較的容易であった(フォローアップの人月間の約50%で満足した)(table 2)。
・SDIで定義されている個々の臓器障害項目に対するLLDASまたはCR on Tの影響(table3・4)。 LLDASおよびCR on Tは、筋骨格系、腎臓系、骨粗鬆症系の損傷および早期性腺機能不全の発生率の有意な低下と関連あり。LLDASはまた、糖尿病、心筋梗塞および発作のリスクの低下と関連あり。寛解またはLLDASのいずれかと、白内障、悪性腫瘍、肺、または眼の器官の障害との関連なし。
・アフリカ系アメリカ人の方が白人よりもかなり活動性が高かった。白人は観察期間の58%がLLDASの32%がCR on Tであった。 アフリカ系アメリカ人は、おのおの41%、19.0%であった(各差異についてp <0.0001)。この差は、教育に代表されるような社会経済的地位によって説明されなかった(教育の年齢調整後の各比較でもP <0.0001)。
・ table5は障害とLLDASまたはCR on Tとの関係を人種別に示したもの。白人でもアフリカ系アメリカ人でも、LLDASやClinical Remissionとの関連が強かった。
<Limitation>
・30年以上のコホートであり当時と現在の治療、活動性、障害の評価と異なっている可能性がある。
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・LLDASをという達成しやすい目標が今後の治療目標の一つになる可能性がある。しかし、あくまで研究目的の指標であり、実臨床での使用は困難である。
・白内障、悪性腫瘍、肺、または眼の器官の障害減少との関連はないためLLDASの限界がある。さらなる基準の設定が必要である。
<この論文の弱点>
・SLICC/ACRの二つの分類基準を使用しているため、30年間の観察期間内で患者群が変化している.その間に免疫抑制剤の種類も変化している
・Nが多すぎる可能性がある.P値が極めて低い.
・交絡の記載がない.
・寛解基準、SDIはともにステロイド副作用とSLEの活動性が混在した指数である.
<この論文の好ましい点>
・評価者を固定した.
・月単位での評価を行った、レート比を用いている.
・人種の差、学歴を拾っている(アフリカ系アメリカ人を含んだ初の研究).
・群内を細分化し評価した。
担当:柳井亮
上級医のコメント
どの寛解の定義でも寛解の期間が長いほどダメージが少ないのは臨床的にも理解できる。しかし、LLDASで許容されるプレドニン7.5mgはやはり多い。感染症、骨粗鬆症などSLICCーDIでは反映されないステロイド長期副作用での検討がなされておらず、効果と副作用のバランスが検討しなければならない。