RS3PE症候群の1年後の臨床転帰【Journal Club 20180815】

Clinical outcomes in the first year of remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema (RS3PE) syndrome.

 

Tomoki Origuchi, Department of Rehabilitation Sciences and Department of Immunology and Rheumatology, Graduate School of Biomedical Sciences, Nagasaki University, Japan,

2017 Jan;27(1):150-154.

 

Background:RS3PE症候群はステロイド加療により速やかに症状が改善すると言われているが、1年以内にステロイドが中止できない症例もある。高齢のRS3PE症候群患者に長期間におよぶステロイド加療をした場合、感染症、糖尿病、骨粗鬆症などのステロイドの副作用のリスクに直面する。また、悪性腫瘍がしばしば合併するが、paraneoplastic RS3PE症候群はステロイド抵抗性であることが報告されている。発症後1年間におよぶ臨床データの経過の報告はない。1年後にステロイドが中止できるのか、ステロイドが中止できない患者の発症時の特徴は何かを検討された。

<セッティングと研究デザインの型>
長崎大学中心に後ろ向き多施設観察研究
<Population、およびその定義>
2003年から2012年の間にRS3PE症候群と診断され56人が登録され、下記の基準を満たす46人をカルテベースで解析した。

【基準】
(1)手または足の両側性圧痕性浮腫
(2)突然発症の多発関節炎
(3)50歳以上
(4)RF陰性

EORAPMRは臨床的特徴、Xrayと超音波検査所見、長期観察から除外した

5人の患者はデータ欠損により除外し、41人で検討した。

<主な要因、および、その定義>
年齢、性別、癌の合併、発症から診断までの期間、初期PSL量、関節炎と浮腫の分布
血液検査所見(WBC, Hb, Plt, ESR, CRP, CCPAb, ANA, MMP-3)
PSL投与量およびその治療反応性と再燃の有無

<Control、および、その定義>
なし

<主なアウトカム、および、その定義:>
治療1年後にステロイド抵抗性に寄与する要因の同定
治療開始後1年間のCRP値とPSL投与量
寛解:CRP陰性の症状消失
治療抵抗性:治療開始1年後においてCRP>0.5mg/dLPSL5mg/day
再燃:RS3PEの再燃に合致する臨床症状および検査異常とPSL増量

<解析>
JMP Pro 10 (SAS Institute, Cary, NC)
単変量解析 Chi-square test(性別、再発、発熱、ANA陽性患者数)
Mann–Whitney’s U test(WBC, Hb, Plt, ESR, CRP, MMP-3)
多変量解析   コックス比例ハザートモデル

<結果(箇条書きで、大事なところのみ)>
Table 1
・男性24例:女性17例、平均年齢78.4歳
・34人(82.9%)は発症後1週間以上、18例(43.9%)は発症後1カ月以上たって診断
・14例(34.1%)が固形癌(胃癌3例、結腸癌5例、肺癌4例、乳癌1例、前立腺癌1例)を経過中に合併した。これらの癌は、1例を除いてRS3PE症候群発症2年以内に発生した。 肺癌患者の1人は発症1年の時点で死亡していた。
・25人(61.0%)が対称性の多発性関節炎とともに発熱を認めた。
・手の圧痕性浮腫は31人(75.6%)、足の圧痕性浮腫は36人(87.8%)
・41例すべてがPSLにより寛解した。 発症後1年以内に7例(17%)が再燃した。
・ESR値70.1±32.6、CRP値7.1±4.7、MMP-3値448.4(56-2973)
・RFおよびACPA(n=26)は、検査されたすべての患者において陰性。
・全ての患者がPSLに劇的に反応し、初回用量(14.6±6.7mg /日)で寛解した
・PSLは2​​4〜48時間以内に症状は改善し、1〜4週間以内に症状が完全に消失。
Figure 1:1年間の観察期間中の41人の患者のCRPレベルおよびPSL投与量の変化
入院時の平均CRPレベルは7.1mg / dLであった。 3ヵ月後に1.3mg / dLに減少し、1年で0.8mg/dLであったが13例(31.7%)は CRPが上昇していた。
・平均初期PSL投与量は14.6mg/日で3カ月後には8.5mg /日に減少したが、1年後は5.1mg /日であり、34名(82.9%)がいまだPSLの投与を受け、24例(58.5%)はPSL>5mg/日の投与を受けていた。
・治療開始1年後の時点でPSLを中止できたのは、たった4例だった。
・3例(10.3%)でMTXを含めたDMARDSの投与が必要だった。
Table 2 単変量解析:発症1年後にCRP≧0.5mg/dLである要因
・男性あることと発症時のCRP>10mg/dLに有意差を認めた。
Table 3 多変量解析:発症1年後にCRP≧0.5mg/dLに関連する独立変数
・男性 オッズ比 17.05  (95% CI 2.41–370.12)
・発症時のCRP>10mg/dL オッズ比 12.99 (95% CI 1.78–269.62)
Table 4 単変量解析:発症1年後のPSL投与量≧5mg/日である要因
・男性であることに有意差を認めた。
Table 5 多変量解析:発症1年後のPSL投与量≧5mg/日に関連する独立変数
・男性 オッズ比 4.69 (95% CI 1.06–24.90)

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・RS3PE症候群患者の特徴は、男性・高齢者に多く、急性発症で診断までの期間が短い、多発関節炎と発熱を認める、PSL15mg/日程度のステロイド加療開始後、1-2日以内に症状が改善し1週~1ヵ月以内には症状は消失する、ESR70, CRP7, MMP-3:400と高値を示す、悪性腫瘍の合併が多い(34%)であり教科書的特徴に合致する。
・治療開始1年後の時点で8割強にPSLは依然投与され、その6割はPSL≧5mg/日であること、CRP値は3割で上昇していることは、RS3PE症候群がステロイドの維持療法が必要なケースが多いことを示している。ステロイドの副作用が問題になる症例が多いため、MTX加療などの代替治療の検討が今後必要と考える。
・56例がRS3PE症候群と登録され、うち10例は除外されている。このなかに治療後にEORA/SNRAやPMRに診断が変更した症例があったのではないかと思われる。我々の検討でもRS3PE症候群からSNRAに診断が変わる例が多い。今後のRS3PE症候群の治療を検討する必要がある。

<Limitation>
小規模研究

<この論文の弱点(自分で考えたものを記載)>
・あくまで観察研究
・悪性腫瘍が発症2年以内のどの時点で発見されたかの記載に欠ける。

<好ましい点>
RS3PE症候群を発症する背景の患者には長期ステロイド投与による副作用が問題になることを問題視して研究されていることは非常に共感できる。

 

担当:若林邦伸

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