固形癌患者における腫瘍随伴リウマチ性症候群の傾向と抗体プロファイル【Journal Club 20180829①】

Prevalence of paraneoplastic rheumatic syndromes and their antibody profile among patients with solid tumours

2011 Mar;30(3):373-80

<背景>
・悪性腫瘍の患者の15%程度がなんらかの腫瘍随伴症候群を有するとされている
・神経症状、内分泌異常、リウマチ性疾患、血液疾患、皮膚疾患など
・多彩な免疫異常を有することも多く、しばしば腫瘍の診断が遅れる

P: 坦癌患者
E: リウマチ性疾患の分類基準を満たすケースでは  (E: 悪性腫瘍)
C: 満たさないケース、無症状のケース
O: 症状の種類の頻度、検査異常の頻度       (O: 膠原病疾患の頻度)

<セッティング>
Rheumatology Clinic and Oncology Institute of Vilnius University. (リトアニア)

<研究デザインの型>
後ろ向きコホート研究

<Population、およびその定義>
2006-2008年の間に新規に悪性腫瘍の診断を受けた患者を対象

サンプルサイズは腫瘍随伴症候群の有病率を15%とし、信頼度90%、誤差2%とし、3350と決定

<主な要因、および、その定義>
The first-step:24ヶ月以内に関節、筋肉、皮膚、粘膜病変を経験したか否か質問表にて3770回収
The second step:Andras et al. in 2006に記載された質問表を担当医から問診したもの717回収
The third step:有資格のリウマチ専門医の問診および診察、関節レントゲン施行
104例の腫瘍随伴症候群を抽出(内94例で病理学的に確定診断)
一般採血に加え、以下の抗体検査を施行
RF, ANA, nRNP/Sm, Sm, SS-A, Ro-52, SS-B, Scl-70, Pm-Scl, Jo-1, CENP B, PCNA, dsDNA, nucleosomes, histones, rib. P-protein and AMA-M2 antigens. Anti-cyclic citrullinated peptide antibody (anti-CCP)

<Control、および、その定義>
グループ1:2年以上にわたり非特異的(未診断)の関節症状を有する担癌患者33例
グループ2:膠原病以外のレイノー現象を有する坦癌患者17名
グループ3:固形癌のみ。膠原病症状を有さない坦癌患者33名
性別、年齢、癌種をマッチさせた

<交絡因子、および、その定義>
年齢、性別、癌種

<解析方法>
罹患率は、リウマチ性症候群の患者の割合として計数し、悪性腫瘍の患者の数で割ったものであり、95%の信頼区間を仮定した。患者群の特徴は、記述統計によって要約。

患者と対照群のデータの差をカイ二乗統計および連続変数のt検定を用いて調べた。有意水準は0.05に設定した。

<結果>
・全坦癌患者の内、腫瘍随伴リウマチ症候群の患者は2.65%
・関節炎:40例 レイノー現象:24例と 2症状が最も多い
・関節炎を有するケースでは少数関節炎が44%で最多。多関節炎を25%にみとめる
23%でerosionあり。下肢関節、大関節優位な傾向にあった
免疫学的にはRF(+):27.7%、ANA(+):22.3%

<Limitation>
・質問票による精度
・治療薬の影響が検討されていない
・人種の記載がないが、一施設に於ける研究 ・人種差は考慮しなくて良いか?
本文考察では
・観察期間が2年間に限定している点
・血液腫瘍を除外している点
この2点が有病率を下げていると考察

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・本論文の結果からは直接腫瘍を積極的に疑うことは難しい
・体重減少などさらに細かな臨床症状の吟味、PRDとnonPRDで満たすであろう診断項目の違いなど議論を詰めていく必要がある
・骨びらんを認めることからPRD<誘発されたRAと考えた方が自然。慎重な治療選択を要する
・PRDの特徴として、RF陰性が示される中、本研究ではRF陽性はPRDの可能性を下げないということも着目すべき
・実際の臨床でレイノー現象から悪性腫瘍を診断するケースはそう多くない印象 人種差も大きいのか

<自分で考えた交絡因子>
・遺伝子型や人種
・肺病変やDMなどの既存リスク

<この論文の弱点>
・コントロールの関節症状、レイノー症状の詳細不明 その病的意義は?
・アウトカム・Limitationの宣言がない
・Step 1で質問票が患者の自己評価にゆだねられている点
・採血項目が必須ではなく有症状のバイアスがある(ACPA34例、可溶性抗原抗体64例のみなど)

<この論文の好ましい点>
・サンプルサイズの記載がされている
・コントロールを細かく分けて評価
・関節炎とレイノーのみのグループをおき、比較している点

 

<この論文にて理解できなかった点>
なし

 

担当;髙橋良

 

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