特発性炎症性筋障害(IIM)のリスク因子としての感染症と気道病変【Journal Club 20181128】

Infections and respiratory tract disease as risk factors for idiopathic inflammatory myopathies: a population-based case–control study

Svensson J, et al.

2017 Nov;76(11):1803-1808

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<サマリー>

特発性炎症性筋障害(IIM)の発症に先行して感染症や気道病変が存在するかをみた症例対照研究である。IIM群では、コントロール群と比較して先行する感染症や気道病変が有意に多かった。

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P: スウェーデンの全国患者レジストリー(npr)、リウマチ患者レジストリーに登録された患者
E:診断に先行する感染症、呼吸器疾患あり
C:診断に先行する感染症、呼吸器疾患なし
O:IIMの診断あり

<セッティング>
・スウェーデンの全国患者レジストリー(npr)
・スウェーデンリウマチ患者レジストリー
・期間:2002〜2011

<研究デザインの型>
症例対照試研究

<Population、およびその定義>
新たに診断されたIIMを有する成人と年齢、性別、居住地がマッチされた成人

<主な要因、および、その定義>   
新たに診断されたIIM:NPRよりICDコードから抽出 or
スウェーデンリウマチ患者レジストリーから抽出。

<Control、および、その定義>
NPRから抽出。年齢、性別および居住地がマッチされ10:1の比で適合。

<主なアウトカム、および、その定義>
IIM診断に先立つ「感染または非感染性の呼吸器疾患」を示唆する外来訪問および入院
:nprからICDコードを使用し同定。
*因果の逆転のリスクを最小限に抑えるために、曝露と診断の間の1年間の空白の期間が用いられた。
→入院またはIIM診断前の1年の気道疾患の感染を示す訪問は曝露とみなされない。
*曝露は解剖学的位置に基づいて分類
感染症:胃腸管、皮膚または気道
気道疾患:上気道または下気道

<交絡因子、および、その定義>
年齢、性別、居住地

<解析方法>
条件付ロジスティック回帰モデル
→ORおよび95%CIを推定。
暴露とアウトカムの間に用量 – 反応関係があるかどうかを調べる→訪問数を0,1,2-4,≧5と分類し推定。

感度解析
・潜伏期間を1年から0または3年に変更し解析。
・使用されるレジストリーの期間を変更し解析。
・以前の医療費を調整し解析。
・関連が主に他のIIM関連症状によって引き起こされたかどうかを調べるために、CTD、IIM関連癌またはIIM肺表現型の病歴を有する個体を感度解析で除外し解析。

<結果>
・2002年から2011年まで.
・IIM症例957人、コントロール症例9476人
・DM:301例(31%)、その他656例(69%)
・先行する感染:IIM症例125例(13%)/対照例887例(9%)(OR 1.5,95%CI 1.2〜1.9)
・先行する呼吸器疾患:IIM症例92例(10%)/対照群423例(4%)(OR 2.3、95%CI 1.8〜3.0)
・最終の感染症/気道疾患から発症までの平均期間:3.4年/3.0年。
*最も一般的な感染症:肺炎、胃腸炎および真菌感染
*最も一般的な呼吸器疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息およびILD

「先行する感染症および気道疾患を示す患者はIIMを発症するリスクが高い。」
 胃腸感染 :OR 1.9、95%CI 1.1〜3.5
 呼吸器感染:OR 1.6、95%CI 1.1〜2.3
 皮膚感染 :相関なし、OR 1.2 、95%CI 0.8〜2.0
 下気道変 :OR 2.4、95%CI 1.8〜3.0
 上気道病変:OR 1.9、95%CI 1.3〜2.7
・暴露の回数が増えるとORが増加する。

感度解析1
・曝露とアウトカムの間の潜伏期間を取り除くと、ORは感染(1.9対1.5)と呼吸器疾患(2.8対2.1)の両方で増加。3年の潜伏期間が使用された場合、ORは主要分析と同様のまま。
・以前の医療費を調整すると、関連性は減少したが、呼吸器系疾患(OR 2.2、95%CI 1.7〜2.8)と感染(OR 1.3,95%CI 1.1〜1.7)は共に相関関係を保った。
・CTD(n = 144,15%)、IIM関連癌(n = 106,11%)またはIIM肺表現型(n = 84,15%)を有する個体を除外すると、3分の1(n = 297,31% 9%)が除外された。
→感染症(OR 1.4、95%CI 1.1〜1.9)と気道疾患(OR 2.2、95%CI 1.6〜3.1)共に陽性の関連性が残っていた。
感度解析2 使用するデータの年代によって結果はかわるか。

<結果の解釈・メカニズム>
・IIMには感染症、気道病変が先行する可能性が示された。 

<Limitation>
・喫煙とJo1の関連が報告されているが本研究では喫煙のデータが得られていない。
・先行する要因との因果は不明(免疫学的、細菌学的な裏付けなし)
・筋炎がDM/その他しか分類できていない。

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
臨床に活かしにくい。
筋炎の病因の解明としては意味がある。
SLEでも発症に関与する因子としての研究ができないか。

<この論文の好ましい点>
病因を解明するという意味で興味深い
Nを確保できている。

 

担当:柳井亮

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