Janus kinase inhibitors prevent migration of rheumatoid arthritis neutrophils towards interleukin-8, but do not inhibit priming of the respiratory burst or reactive oxygen species production
- S. Mitchell,* R. J. Moots* and H. L. Wright †
*Institute of Ageing and Chronic Disease, University of Liverpool, Liverpool, UK, and
†Institute of Integrative Biology, University of Liverpool, Liverpool, UK
Clin Exp Immunol. 2017 Aug;189(2):250-258
【論文の背景】
JAK阻害薬はRAに対する臨床的な有効性が認められている。また、好中球はRAの病態形成に関与している。好中球の役割として、エラスターゼなどのタンパク分解酵素の産生、活性酸素(ROS)の産生、NETs形成がACPA産生に関与することなどが挙げられている。RA治療において好中球の作用を抑制することがRA病態の抑制につながると考えられるが、JAK阻害薬の副作用として、好中球減少、感染症の増加が報告されている。
【本研究の目的】
炎症性疾患に関与する好中球機能に対するJAK阻害薬の影響(効果)について以下の3つに重点を置き調査した
① apotosis
② chemotaxis
③ ROS production
JAK阻害薬としてTofacitinib(JAK3阻害薬)、Baricitinib(JAK1/2阻害薬)
好中球は健常者の好中球、RA患者の末梢血中の好中球を用いた。
【結果】
Fig1 好中球のapoptosisに対するJAK阻害薬の効果
(a)健常者の好中球
GM-CSF、IFN-γは好中球のapoptosisを遅延させる。
BaricitinibとTofacitinibを濃度依存性に好中球のapoptosis遅延を阻害する。
(b)健常者の好中球
BaricitinibとTofacitinibはIFN-γとGM-CSFによるSTAT1, STAT3のリン酸化を抑制する。
(c)RA好中球
BaricitinibとTofacitinibはGM-CSFによるRA好中球のapoptosis遅延を阻害する。
※IFN-γはRA好中球のapoptosisを抑制しない。
Fig2 好中球の走化性に対するJAK阻害薬の効果
(a)fMLPとIL8は健常者の好中球の走化性を増加させる。
(b)BaricitinibとTofacitinibはRA好中球の走化性(random migration)を減少させる。
(c)(d)IL8で刺激されたRA好中球の走化性はBaricitinibによって抑制された。
そのほかについては有意な走化性の抑制は認められなかった。
(e)健常者の好中球において、fMLPとIL8はSTATのリン酸化は認められなかった。
Fig3 ROS産生に対するJAK阻害薬の効果
(a)fMLPと反応した好中球(RA, 健常者)のROS産生はBaricitinibとTofacitinibにより抑制されなかった。
(b)健常者の好中球において、GM-CSFで刺激された好中球のROS産生は亢進し、BaricitinibとTofacitinibはそれを抑制した。RA好中球ではGM-CSFで刺激されてもROS産生は亢進されなかった。
(c)TofacitinibはPMAと反応したRA好中球のROS産生を亢進した。機序不明。
(d)BaricitinibとTofacitinibはPMAと反応した健常者の好中球のROS産生を亢進した。
Fig4 ROS産生におけるreverse primingに対するJAK阻害薬の効果
(a)Baricitinibは健常者の好中球のROS産生におけるreverse primingの抑制を認めた。
(c)RA好中球のROS産生におけるreverse priming効果はBaricitinib, Tofacitinibとも抑制されなかった。
(b,d)PMAと反応させた好中球のROS産生はBaricitinib, Tofacitinibともに抑制されなかった。
Fig5 RA好中球のSTAT1、STAT3のリン酸化に対するJAK阻害薬の効果
Fresh RA好中球はpSTAT1, pSTAT3が発現している。Baricitinib, TofacitinibはpSTAT1.3をより速く減衰させる。
Discussion
・IFNγ刺激でRA好中球のapoptosisが遅延しなかった。
→すでに生体内でIFNγ刺激を受けていたことによる可能性が示唆された。
・Tofacitinibのapoptosis遅延を阻害する効果が弱い
→GM-CSF受容体:JAK2 homodimer、IFNγ受容体:JAK1/JAK2であり、JAK1/2阻害薬であるBaricitinibがより強くapoptosis遅延を阻害する。
・RAではfMLPとIL8に対するmigrated cellsの増加を認めなかった。
→RA好中球がDMARDsの影響をうけている。
・BaricitinibはIL8のmigrationを抑制するが、IL8はJAK-STAT経路に影響を及ぼさない。
→機序不明
・RA好中球はGM-CSF刺激でROS産生が増加しなかった。
→RA好中球にre-primeの能力はない。
(今後の課題)
RA好中球の本研究結果ではDMARDsの影響を拭えない。
未治療RA患者での研究が望まれる。
担当:猪狩雄蔵