Factors Affecting Health Care Provider Knowledge and Acceptance of Biosimilar Medicines: A Systematic Review
Emily Leonard, (Division of Pharmaceutical Outcomes and Policy, UNC Eshelman School of Pharmacy, University of North Carolina at Chapel Hill.)
J Manag Care Spec Pharm. 2019 Jan;25(1):102-112.
サマリー
欧米の医療従事者はバイオシミラーの理解と受容に乏しく、安全性、有効性への懸念が処方の伸び悩みに影響している。普及の促進には医療従事者への教育を強化することが、知識のギャップを埋め、バイオシミラーを処方することに対する信頼を高めるのに役立つ可能性がある
<セッティング>
・米国 ノースカロライナ大学チャペルヒル校
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
システマティックレビュー
バイオシミラー製剤における医療従事者の認識等から現在の問題点を検討する
<文献検索>
・2014.1.4~2018.3.5に出版されたもの
・検索DB:PubMed, Embase, Cochrane Library
・英語文献のみ
・MeSH terms / text words:
“biosimilar” “biosimilar agent” “questionnaire” “health survey” “attitude”,
“education” “learning” “drug formulary”
<文献選択>
2名の査読者(筆者含)にて論文の情報、方法、サンプルサイズ、回答率、結果、結論を確認
共同研究者にて以下のトピックを追加し各項目でレビュー結果を述べた
- 臨床医のバイオシミラーの処方行動 バイオシミラーを処方する意思のある臨床医の割合
- 現在バイオシミラーを処方している臨床医の割合
- 臨床医のバイオシミラーの知識バイオシミラーの概念に精通している
- FDAまたは欧州医薬品庁(EMA)によるバイオシミラー医療の定義に関する知識
- バイオシミラーのへ臨床的懸念
- バイオシミラーの安全性、有効性、外挿、薬局主導の代替行為に関する問題
- 医療従事者向けのバイオシミラー教育プログラム
- 臨床医によるバイオシミラー教育の方法、嗜好
<結果>
【Fig 1】・全体で158本⇒アブスト/タイトルで138本⇒41本のフルテキストへ
(97本の除外理由:重複、レビュー、欧米以外の研究、デザイン違い、医療経済)
・フルテキスト41本⇒20本を選択
出版国:アメリカ、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、アイルランド、マルタ、
ハンガリー、イギリス
(21本の除外理由:重複、欧米以外の研究、デザイン違い、フルテキストが英文でない)
①臨床医のバイオシミラーの処方行動
・処方に関する自信:
消化器科医の61%でバイオシミラーの処方に対し自信無し→1年後19.5%へ低下
・処方経験:リウマチ医の7%でバイオシミラーの処方経験あり
別研究では22%の医師が1週間で1回以上の処方
年間6~12回が30.5%、5回以下47%
・対象患者:バイオシミラーが処方される患者のうち51%がBioナイーブ、25%がBio投与歴あり
・その他の傾向:リウマチ医の60%で処方する見込みがあり⇒対象集団が小さい
臨床実務の長さはバイオシミラーの好みには影響しないものの、20年以上の
経験の医師の方が処方割合は高い
Bioナイーブ患者に対して消化器科医の88%、リウマチ医の95%で先行Bioを
選択することを好み、実際に10%程度の処方割合
②臨床医のバイオシミラーの知識・欧米でもバイオシミラーに対する認識不足があった
【一般情報】
・バイオシミラーに対する知識を有しているのは医師の22.9%、薬剤師の38.8%
・リウマチ医の55%は十分な知識がなく、病院勤務医よりも開業医(クリニック医)で多い傾向
・バイオシミラーに対して理解していると答えた医師のうち21%がジェネリック医薬品と
勘違い
・薬剤師は一般の医師よりもバイオシミラーに対して理解している(p<0.01)
【市場情報】
・リウマチ科医の55%、消化器科医の32.8%でフィルグラスチムの発売時期を知らずに使用
・リウマチ科医はIFXの承認は84%でしっていたが、ADAは47%、ETNは34%と低下
③バイオシミラーのへ臨床的懸念
・安全性に関しては免疫原性と低品質を気にしていたが、免疫原性の懸念は2年間で67%⇒27.1%へ減少
・医療従事者全体では適応症に対する有効性、安全性が懸念材料
・65%の臨床医がクローン病におけるバイオシミラーの使用をRCTがないことで懸念をもっていた
・医師は各適応症にたいして臨床試験が行われないこと、長期投与データがないことから有効性、安全性の評価がしづらく、使用をためらっている傾向
・適応外挿(バイオ先行品の適応症に対するバイオシミラーの承認)がバイオシミラーの臨床試験によって得られたものではないため、リウマチ医39%、薬剤師64%が適応外挿に反対
・医師はバイオシミラーの安全性、有効性、投与方法、外挿、薬局での代替に懸念があった
・米国のいくつかの州では、バイオシミラーを薬局主導で代替え可能であるが、61%の医師、58%の薬剤師が、切り替えは処方医師が決めるべきと考え、95%の薬剤師が、先行バイオとバイオシミラーを交換することが医師と薬剤師の共同責任であると考えている
④医療従事者向けバイオシミラー教育プログラム
・欧米医療者のバイオシミラーの対する教育は独学、論文、ガイドライン
・医師と薬剤師とでディスカッションすることでバイオシミラーの信頼性は高まる可能性あり
・その他企業主催のセミナーなどが教育プログラムとして含まれていた
<Limitation>
・2人のレビュアーが同時におこなっていない(1人目の結果を2人が再確認)ため、結果の
出し方に偏りがある可能性がある
・選択された論文のほとんどが研究デザインに限界がある
Ex. 長期観察データの研究がない、対象集団が小さく限定的、サンプルサイズ未確認
・各国で文化や法律が異なる
・今回のレビューでは統計解析していない
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・バイオシミラーがどんな患者に対して使用することが良いのかを有効性、安全性だけでなく経済性、合理性を医師だけではなく、薬剤師も積極的に考えるべきである。しかし、バイオシミラーの適応症に関して本研究と同様、日本国内もすべての適応症において臨床試験を行わずとして適応がついてしまうため、薬剤師は安易に先行品からの切り替えや新規薬剤を推奨するべきではないことも十分に理解すべきである
・今後、使用を促進していくためには、医師主導治験等でエビデンスを増やすことが課題の一つと考える
<この論文の弱点>
・欧米以外の先進国の研究を除外した(韓国など)⇒そもそもない?相手にしていない?
・この論文が一番誰に向けてのメッセージだったのかがあいまい
(医師?薬剤師?医療従事者全体?国政?)
担当:櫻井康亮