TNF α drives pulmonary arterial hypertension by suppressing the BMP type-II receptor and altering NOTCH signalling【Journal Club 20190207】

TNF α drives pulmonary arterial hypertension by suppressing the BMP type-II receptor and altering NOTCH signalling

Lian A. Hurst et al. Division of Respiratory Medicine, Department of Medicine, University of Cambridge School of Clinical Medicine, Addenbrooke’s and Papworth Hospitals, UK.

2017 Jan 13;8:14079

Balckground:血管内皮細胞や血管平滑筋細胞上のBone morphogenetic protein receptor type II (BMPR-) にBMP (TGF-β familyの1つ)が結合することで細胞の増殖抑制やアポトーシスを誘導する。

BMPR2遺伝子の変異は遺伝子性PAHの代表的変異として知られ、遺伝性PAHの70%、特発性PAHの20%に関与している。この遺伝子の変異の浸透率は20-30%程度であるため、PAH発症には何かしらの他の追加誘因が存在する。炎症はそのひとつであり、TNFαを過剰発現するトランスジェニックマウスではPAHが自然発生するためTNFαが関与している可能性が高い。ETNはモノクロタリン誘導ラットのPAHの発症を改善したり、大動脈の血管内皮細胞においてTNFαはBMPR-Ⅱ発現を抑制するなどの報告もある。しかし、炎症によるBMPRⅡの機能不全がPAHを引き起こすメカニズムは不明のままである。

BMPR-Ⅱは細胞表面でactivin-like kinase(ALK) typeⅠ受容体と複合体を形成する。肺血管内皮細胞において、BMPR-IIはALK3と共にBMP2, BMP4およびBMP6のシグナル伝達を媒介する。またALK1とともにBMP9およびBMP10のシグナルを媒介する。BMPにより活性化された受容体(BMPR-Ⅱ& ALK1/3)は標準的なSmads1/5/8をリン酸化しID遺伝子ファミリーNOTCH経路などの遺伝子の転写を促進する。BMPはMAPKおよびc-Srcのリン酸化を通じて、Smadとは無関係にシグナル伝達することもできる。

PAH患者、特にBMPR2突然変異をもつ患者の肺動脈平滑筋細胞におけるBMP4によるSmad1/5/8シグナル伝達が減少することが判明している。BMP4によるシグナル伝達の減少とは対照的にBmpr2遺伝子のノックアウトマウス、およびヒト肺動脈平滑筋細胞におけるsiRNAを用いたBMPR-Ⅱノックダウンは、ACTR-IIAとALK2を介したBMP6/7によるシグナル伝達を増強する。

BMPR2変異を有する血管細胞ではTNFαがBMPR2発現を低下させ、ACTR-IIAとALK2動員するためにBMPシグナル伝達をスイッチするという仮説をたてた。この研究では、以下を証明する。

  1. TNFαが血管細胞におけるBMPR-II発現を低下させ、血管平滑筋細胞におけるADAM10/17依存性にBMPR-IIを切断し、細胞外ドメインがリガンドトラップとして作用する。
  2. BMPR2遺伝子的機能喪失を背景に、TNFαがc-SRCファミリーおよび異常調節されたNOTCH2/3シグナル伝達を通じて、肺動脈平滑筋細胞の増殖を促進することにより肺高血圧症を発症する。
  3. ラットSugen-hypoxiaモデルにおてい、エタネルセプト治療がBMPR-IIレベルを正常化しNOTCH不均衡を改善し、PAH進行を逆転させる

Results肺動脈平滑筋細胞においてTNFαは選択的にBMPR-2発現を減弱させ、ADAM10およびADAM17を介して細胞BMPR-Ⅱ切断する。TNFαによるBMPR-Ⅱの発現抑制は、BMPシグナル伝達を、ALK2/ACTR-ⅡAシグナル伝達軸にスイッチさせ、TNFαにより増加したBMP6により肺動脈平滑筋細胞の増殖をもたらす(但し一過性で、他の細胞増殖経路を検討)。TNFαはBMPR-Ⅱ発現を減少させながら、SRCキナーゼを介して遺伝性肺動脈性肺高血圧患者の肺動脈平滑筋細胞における増殖促進性NOTCH2の発現を増加させる。肺高血圧症げっ歯類モデルにおいて、このシグナル伝達の切り替えを確認し、抗TNFα療法が病気の進行を逆転させ、BMP/NOTCHシグナルを回復することを確認した。

TNFαとBMP/BMPR-IIシグナル伝達がPAHに寄与するメカニズムを特定し、抗TNF療法が肺高血圧症の治療ターゲットなることを示唆している。

 

担当:若林邦伸

 

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