JAK阻害薬はI型インターフェロンによる損傷を改善する:皮膚筋炎における証明【Journal Club 20190313】

JAK inhibitor improves type I interferon induced damage: proof of concept in dermatomyositis

Leandro Ladislau et al

2018 Jun 1;141(6):1609-1621 

【論文の背景】
これまでの研究で、皮膚筋炎患者ではⅠ型インターフェロン(IFN-I)に誘導される遺伝子の発現上昇が認められてきた。しかし、IFN-Iの筋組織への影響はわかっていない。
今回の研究の目的は、in vitroにおける型インターフェロンの筋組織への病原性を明らかにし、皮膚筋炎患者に対して、 JAK阻害薬であるルキソリチニブを用い、型インターフェロン経路を遮断する治療効果を評価することである。

 【今回の研究】
下記について実験を行った。
IFN-I経路活性化によるin vitromyotubesへの影響(Fig.1)
・血管新生におけるIFN-Iの影響(Fig.2)
・皮膚筋炎の筋組織における分析(Fig.3)
・ルキソリチニブのIFN-I抑制効果 in vitro(Fig.4)
・難治性皮膚筋炎に対するルキソリチニブの臨床効果(Fig.5) 

【結果】
Figure1  IFN-I経路の活性化はin vitroで筋萎縮とIFN-α産生を誘発した
(A) myotubesを刺激されていないcontrolPICIFN-IIFN-2α・IFN-β or デキサメサゾンで刺激された筋組織を比較した。染色はanti-myosin heavy chain antibody MF20 (green) Hoechst (blue)を用いた。
(B) myotubesの表面積はPICIFN-IIFN-2αIFN-β or デキサメサゾンで刺激された筋組織において、コントロールと比べ減少していた。
(C-D) 筋委縮に関連する遺伝子であるMuRF1Atrogin2つの発現亢進がIFN-I経路の活性化により認められた。またこれらの発現亢進はデキサメサゾンによっても認められた。
(E, F, G) HLA-ABCMxAOAS1の発現もIFN-1経路の活性化により亢進していた。
IFN-I経路活性化はin vitroでの皮膚筋炎の筋組織ダメージにおける病原性があることを示した。

 Figure2 IFN-I経路活性化はHMEC-1の血管新生を損なう in vitro
(A) IFN-I存在下にHMEC-1の血管新生の抑制を観察した。
(B-D) HMEC-1におけるsegment lengththe number of meshesthe number of junctionsは減少した。
(E-H) HMEC-1におけるMX1/MxA, ISG15, TLR3DDX58/RIG-Iの発現亢進が異なるIFN-I経路によって認められた。
(I-J) 血管内皮細胞の増殖のトリガーとなるVEGFおよびTGFβの発現を分析した。PICによる発現亢進を認めたが、IFN-I, IFN-2α, IFN-βでは発現亢進を認めなかった。
in vitroで血管レベルでのIFN-Iの病原性を皮膚筋炎における筋、皮膚と同様に認めた。

 Fig3 in vivo FBXO32/atroginMXI/MxA陽性筋線維に発現し、VEGFMX/MxAは血管に共発現する
(A-B) FBXO32/atroginMxA陽性である筋膜周囲の萎縮した筋線維上に発現していた。
(C) VEGF陽性の筋毛細血管において、MxA陽性となる。
→皮膚筋炎におけるIFN-Iの病原性を認識させ、IFN-Iの病態を治療に活かすとこが提唱された。

 Fig4 JAK阻害ルキソリチニブはmyoblasts,myotubesHMEC-1におけるIFN-Iの効果を阻害する。
(A-B) IFN-βによるmyotubesの筋委縮は、ルキソリチニブにより抑制された。
(C-D) IFN-βによるmyoblastsFusion indexの減少はルキソリチニブにより抑制された。
(E-H) IFN-βによるHMEC-1の血管新生の抑制はルキソリチニブにより抑制された。
in vitroにて、ルキソリチニブはIFNの筋細胞、内皮細胞への影響を抑制した。

Fig5 ルキソリチニブは再発性皮膚筋炎患者の臨床症状を改善する。
ルキソリチニブは難治性皮膚筋炎患者の皮膚症状を改善し、患者の血清IFN値を減少させた。

 【結論】
本研究では、筋委縮、血管新生に対する、IFN-Iの影響を検討し、またルキソリチニブのIFN抑制効果も示された。さらに皮膚筋炎患者に対する臨床効果の改善が示された。
今後、皮膚筋炎の治療として、JAK阻害薬にさらなる期待がもたらされるだろう。

 

担当:猪狩雄蔵

 

 

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