Tocilizumab in patients with adult-onset still’s disease Refractory to glucocorticoid treatment: a randomized, Double-blind, placebo-controlled phase III trial
Yuko Kaneko et al.
Division of Rheumatology, Department of Internal Medicine, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan
Ann Rheum Dis. 2018 Dec;77(12):1720-1729
P:ステロイド抵抗性AOSD
E:TCZ
C:placebo
O:有効性と安全性
<セッティング>
・日本の8施設(多施設共同研究 医師主導治験)
・登録期間 2014/1/31-2016/7/31
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・RCT
・3パート構成(①4Wまで、TCZ vs. placebo, ②4-12W placeboにてエスケープあり、③12-52W 全員TCZを使用)
<Population、およびその定義>
・診断は山口基準
・20歳以上
・対象は、PSL:0.5mg/kg*2W以上して不応のAOSD
・疼痛関節数≧2かつ腫脹関節痛≧2かつSFS≧1かつESR≧20mm/h or CRP≧1.0
・SFS=systemic feature score (発熱、発疹、リンパ節腫脹、肝脾腫、漿膜炎)
・ステロイドの増減は4W以降に可能。
・除外基準:免疫抑制剤使用、他のBIO使用。重症例
<主な要因、および、その定義>
・生物学的製剤使用(TCZ)8mg/kg q2w*12W。
・その後52WまでTCZ使用
<Control、および、その定義>
・プラセボ*12W
・その後52WまでTCZ使用
<主なアウトカム、および、その定義>
・primary 4週目のACR50
・secondary ACR20/50/70、SFS, ステロイド量、AE
<交絡因子、および、その定義>
・年齢、性別、罹病期間、BMI、腫脹関節数、疼痛関節数、患者VAS、医師VAS、HAQ-DI、CRP、ferritin, SFS, ANA, RF, CCP, ステロイド量
<解析方法>
・交絡調整:無作為化二重盲検
・欠測対処:なし
・サンプルサイズ設計:ACR50達成率 TCZ:65%、プラセボ:15%と予測
αエラー:5%、βエラー:20%にて各群17例。
その後、TCZ:80%に変更し、各群12例に変更。
・解析 Fisher検定、Clopper-Peason法(信頼区間の算出方法)
非構造化共分散分析を使用した反復測定の混合効果モデル(Kenward-Roger法)
<結果>
・4週目のACR50 TCZ:61.5%(95% CI 31.6-86.1)、placebo:30.8% 95%CI 9.1-61.4)(p=0.24)
・各時点でのFisher検定では有意差なし。ACR20,ACR70も有意差なし。52Wになるとすべて差はない
・12W TCZはSFSを有意に低下させる (-4.1 vs. -2.3, p=0.003)
・12W TCZはステロイド減量効果あり (-46.2% vs. -21.0%, p=0.017)
・AE。鼻咽頭炎がTCZ:11人、placebo:8人など。大差なし!?
<メカニズム>
・AOSDの発症機序は不明
・AOSDに関与するものとして、MAS, IL-1, IFN, TNF, IL-6, IL-8, IL-18
・IL-6ベースとIL-18ベースのものが報告されている
・今回はIL-6をターゲットとした
<Limitation>
・症例数が少ないため、検出力不足
・ACR50よりSFSを評価すべきだった
・二重盲検期間が短い(最大12W)
・エントリー基準が厳しい(最重症例が除かれる、選択バイアスの可能性)
・ステロイド治療単剤で効果十分であった症例が混在した可能性
・ステロイド減量速度が主治医一任されており、最適なステロイド治療の方法が不明
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・ステロイド不応性AOSDに対して、TCZが選択肢になる
<自分で考えた交絡因子>
・MAS合併
・喫煙飲酒などの生活歴
・社会背景因子
<この論文の弱点>
・severe AOSDが除かれていること
・これまでの他のBIO、免疫抑制剤使用歴が不明
・他のBIO、免疫抑制剤とのhead-to-headの試験ではない
・関節炎のないAOSDが除かれる
<この論文の好ましい点>
・難治性AOSDにTCZを使用した世界初のRCT
【コメント】
当初のPSL20mgに対し難治例がParticitpantとなっている。20mgで初期投与量とするセッティングは通常の診療を考えてみると軽症から中等症が多い。その中での難治例が今回の対象であったことは注意すべき点である。IL6製剤を実際に使いたいセッティングは、重症例で、さまざまな薬剤に対して治療抵抗性であることを想定すると、今回の研究結果を受けてそれらの患者への治療適用は考える必要性はある。
また、実際に治療の評価は、発熱でみることがおおく、ACR20や複合指標のSFSでは真のアウトカムが過小評価もしくは過大評価されている可能性がある。
担当:三輪裕介