Romosozumab (sclerostin monoclonal antibody) versus teriparatide in postmenopausalwomen with osteoporosis transitioning from oral bisphosphonate therapy: a randomised, open-label, phase 3 trial.
Langdahl BL et al. Aarhus University Hospital, Aarhus, Denmark.
Lancet. 2017 Sep 30;390(10102):1585-1594.
Background:
・骨芽細胞においてWnt古典シグナルの活性化は骨形成を促進し、RANKLの可溶性デコイ受容体であるOPG(osteoprotegerin)の発現を誘導し骨吸収を抑制する。
・骨細胞から分泌されたスクレロスチンはWntの共役受容体であるlow-density-lipoprotein receptor related protein(LRP)5, 6に結合しWnt古典シグナルを抑制することで骨量減少を引き起こす。
・スクレオスチンを抑制すればWnt古典シグナル活性の抑制を抑え、骨形成促進と骨吸収抑制することができるため、ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体であるロモソズマブ(イベニティ®)が開発され、2019年3月に発売。
テリパラチド切り替え前のビスフォスフォネート(BP)製剤治療はテリパラチドの骨形成作用を減弱させる(特に大腿骨)ことが報告されている。ロモソズマブ切り替え前のBP製剤治療のロモソズマブ治療への影響を検証するとともに大腿骨近位部の骨密度変化率をテリパラチドと比較する。
P: ビスフォスフォネート製剤で治療されていた閉経後骨粗鬆症女性
E: ロモソズマブ
C: テリパラチド(遺伝子組み換え)
O: DXAによる大腿骨近位部骨密度(BMD)のベースラインからの変化率
<セッティングと研究デザインの型>
国際多施設共同第Ⅲb相臨床試験(STRUCTURE試験)
非盲検、無作為化、テリパラチド対照試験、北米、中南米およびメキシコ、ヨーロッパの46施設
スクリーニング後の35日以内に1:1に割り付けされオープンラベルで治療だが評価者には治療内容は伝えず
<Population、およびその定義>
55~90歳、歩行可能、閉経後骨粗鬆症女性
スクリーニング前に経口BP製剤を3年以上投与し、直近1年間はアレンドロネート(70mg週1回)を投与
大腿骨近位部、大腿骨頸部、腰椎のBMD Tスコア≦-2.5非椎体骨折(50歳以降)または椎体骨折の既往あり
除外基準:他の骨粗鬆症治療薬の使用、血清25(OH)VitD≦50nmol/L(20ng/mL)、骨量に影響をおよぼす疾患、骨代謝疾患の既往
<主な要因、および、その定義>
ロモソズマブ210mgを月に1回12ヵ月皮下投与
スクリーニング時の血清25(OH)VitD値が50~100nmol/L(20~40ng/mL)の場合、無作為割り付け後にビタミンDの初回負荷量として50,000~60,000IUを投与
<Control、および、その定義> テリパラチド(遺伝子組み換え:Forteo/Forsteo)20ugを1日1回、12ヵ月自己皮下投与
両群とも基礎治療としてカルシウム500~1000mg/日以上とビタミンD(600~800IU/日以上)を毎日内服
<主なアウトカム、および、その定義>
【主要評価項目】DXAによる大腿骨近位部BMDのベースラインからの変化率(6ヵ月、12ヵ月時点での治療効果の平均)
【副次評価項目】6ヵ月、12ヵ月時点のおけるDXAによる大腿骨頸部および腰椎BMDのベースラインからの変化率
6ヵ月、12ヵ月時点のおける定量的CTによる大腿骨近位部の積分体積BMD、皮質骨体積BMD、骨梁体積BMDおよびHip Strengthのベースラインからの変化率
【安全性評価項目】有害事象
【探索的評価項目】骨形成マーカー:P1NP, 骨吸収マーカー:CTX、ロモソズマブの免疫原性
<解析>
反復測定の線形混合効果モデル, Statistical analyses were done with SAS version 9.2
<結果>(箇条書きで、大事なところのみ)
Fig.1 Jan 31, 2013 – April 29, 2014, 試験プロフィール
Table.1 患者背景は2群とも同様な背景
ロモソズマブ群で88%, テリパラチド群で93%と多くの患者でアレンドロネートが3年以上使用されていた。
Fig.2 投与6ヵ月と12ヵ月の大腿骨近位部のBMD平均変化率はロモソズマブ群で2.6% (95% CI 2·2 to 3·0) テリパラチド群で–0·6% (–1·0 to –0·2) でその差は3·2% (95% CI 2·7 to 3·8; p<0.0001)と有意差を認めた。
6ヵ月におけるベースラインからの骨密度の変化率(ロモソズマブ群 vs テリパラチド群)
大腿骨近位部:2.3% vs -0.8%, 大腿骨頸部:2.1% vs -1.1%, 腰椎:7.2% vs 3.5%
12ヵ月におけるベースラインからの骨密度変化率(ロモソズマブ群 vs テリパラチド群)
大腿骨近位部:2.9% vs -0.5%, 大腿骨頸部:3.2% vs -0.2%, 腰椎:9.8% vs 5.4%
Fig.3 定量的CTによる大腿骨近位部における積分、皮質骨、骨梁体積BMDのベースラインからの変化率
積分、皮質骨体積BMD(ロモソズマブは増加させるが、テリパラチドは低下させる)
ロモソズマブ群:6ヵ月、12ヵ月ともベースラインから有意に増加しテリパラチド群より優位であった
テリパラチド群:皮質骨量は6ヵ月、12ヵ月と有意に低下した。
骨梁体積BMD(ロモソズマブもテリパラチドも増加させる)
両群とも6ヵ月、12ヵ月ともベースラインから有意に増加し、両群に有意差は認めなかった。
Fig.4 有限要素解析による推定大腿骨近位部の骨強度のはベースラインから変化率は有意に増加し、6ヵ月においてテリパラチド群より有意であった
Fig.5 骨形成マーカーP1NP, 骨吸収マーカーCTXの推移
P1NP:ロモソズマブ群では投与後14日のうちに速やかに増加しテリパラチド群より優位であったが1ヶ月でピークに達しその後、12ヵ月かけてベースライン近くに低下していった。
CTX:ロモソズマブ群では投与後14日のうちに速やかに低下し3ヶ月までにベースラインに戻り、12ヵ月までに維持した。
ロモソズマブ投与後は一過性のP1NPの増加、CTXの低下を認めた。
テリパラチド群は6ヵ月までP1NP, CTXともに増加し続け、6ヵ月以降は、P1NPは安定し、CTXは低下傾向を示した。投与3ヶ月から12ヵ月までは一貫してテリパラチド群でP1NP, CTXは有意に高値であった。
Table.2 有害事象は両群でほぼ同じ。重症有害事象はロモソズマブ群で17(8%), テリパラチド群で23(11%)認めたが治療に関係する副作用とは判定されなかった。新規骨折はロモソズマブ群で7人(3%)、テリパラチド群で8人(4%)に認めた。注射部位反応は、ロモゾズマブ群で17人(8%)、テリパラチド群で6人(3%)に報告されたがほとんど軽度。低カルシウム血症の非重篤な有害事象3件(1%)がロモゾズマブ群で報告された。
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
ロモソズマブを使用するケースはBP前治療がある可能性が高く、BP前治療による低骨代謝回転においても骨密度は増加し、腰椎についてはプラセボ対照試験に近い増加効果を得た(13.3%)
BP製剤からの切り替えでも骨密度増加は十分期待できる
<Limitation>
規模は小さい。非盲検。骨折イベントは評価していない。長期のテリパラチド治療との比較はできていない。
<好ましい点>
骨折イベントの評価はしなかったが有限要素解析を用いて大腿骨頸部のベースラインからの強度を評価し、有意な増加を認めている。BP前治療のある骨折のリスクが高い患者が投与1年後の段階でテリパラチド治療群より骨密度、骨強度が増加することを示している。
担当:若林邦伸