慢性炎症性疾患における精神障害:プライマリケアデータベースからの前向き調査【Journal Club 20190703】

Common mental disorders within chronic inflammatory disorders: a primary care database prospective investigation

Alexandru Dregan et al.

2019 May;78(5):688-695

P:CPRD 
E:慢性炎症性疾患
C:非慢性炎症性疾患
O:精神障害の合併率

<セッティング>
世界最大の電子医療記録データベースの1つである臨床実習研究データリンク(CPRD)は、英国国民健康サービス(NHS)全体で約675の診療から1400万人を超える患者(活動的な人のために約670万人)に関する日常的なプライマリケアデータを収集しています。
NHSのすべての患者は、すべてのプライマリケアを提供し、セカンダリケアおよびコミュニティケアを調整する一般診療に登録されています。
2001年1月1日から2016年9月30日の間に記録されたものを使用した。

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
前向きコホート研究

<Population、およびその定義>
慢性炎症性疾患(乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、RA、SLE、全身性血管炎[SV])の初の診断を受けた18歳以上のプライマリケア患者
除外基準。診断時に18歳未満の患者

<主な要因、および、その定義>      
年齢(性別)、性別、診療日、および基準日が一致した(1:2の割合で炎症性疾患患者と非炎症性疾患患者)人。
PsA重症:MTX、AZA、CyA、ヒドロキシウレアを使用した人、PUVAを受けた人

<Control、および、その定義>
非慢性炎症性疾患(慢性:非慢性=1:2)

<主なアウトカム、および、その定義>
うつ病または不安の診断のための新しい医療コード(Read)を使用した。
うつ病は、慢性炎症がうつ病性障害のより広い範囲にわたって関与している可能性を考慮するために、うつ病の単一のエピソード、再発性うつ病イベントおよび双極性うつ病のイベントを含むように広く定義した。
不安症は、全般性不安障害、恐怖症、パニック発作およびパニック障害を含む広く定義した。

<交絡因子、および、その定義>
年齢、性別、BMI(<18.5、18.5-25、25< <30、30< <35、および≥35kg / m2)、血圧(BP)(<120 mm Hg、正常; 120 – 139 mm Hg、境界線;≧140 mm Hg、高血圧)、喫煙(exまたはcurrent vs never)、飲酒(exまたはcurrent vs never)、身体的併存疾患(はい/いいえ)(癌、糖尿病、脳卒中、冠状動脈疾患心臓病、認知症、てんかん、COPD、肝障害、腎臓障害、不眠症)、およびストレスの多い生活上の出来事(例、在宅または職場でのストレス)、スタチン、降圧薬、糖尿病薬、睡眠薬の処方。

<解析方法>
イベントまでの時間という枠組みで行われた。
うつ病や不安が新たに診断されたらドロップアウト。
マッチドペアに基づくクラスター化データのCox比例ハザードモデルを使用。(各患者が複数のアウトカムイベントを経験する可能性を考慮して)
ロバスト分散推定量を使用して、マッチング変数によって導入された依存性を調整した(HRの公平な推定を可能にするため)。
推定モデルはマッチング変数(年齢、性別、実務?、指標年)および上記のすべての研究共変量について調整(炎症性障害の診断時に、うつ病や不安症の発症が年齢によって異なる(40、40-49、50-59、60歳以上)かどうかを推定するために)した。
追加の分析は、推定分散を有する別々のコックス回帰モデルにおいて、鬱病および不安を伴う各炎症状態の間の特定の関連性を推定。
関連イベントを処理するためにEfronメソッドを使用。
フォレストプロットは、年齢のサブグループと個々の炎症性疾患の関連の尺度を提示するために使用。
ランダム効果メタアナリシスを実施して、慢性炎症性疾患および全体的な異質性を評価した。
比例性の仮定をテストし、Schoenfeld残差を用いて確認した。
感度分析を実施(第一に、炎症性障害の診断の直後に追跡調査を開始することによって、代替の追跡調査時間を使用した。第二に、うつ病と不安は、臨床診断コードと関連する処方(すなわち、それぞれ抗うつ薬または抗不安薬)の両方を含むように再定義された。第三に、マッチングペアによる層別化がマッチングを説明するために実施された。第四に、乾癬所見の頑健性をテストするために、全身療法に関するデータを用いて、RAおよび全身性血管炎(唯一の十分に強力な障害)を有する患者を軽度(全身療法なし)および重度(全身療法)に分類した。競合リスクの死亡率への影響も評価した。
欠損データを処理:連鎖方程式による多重代入
統計ソフト:Stata V.15

<結果>Table 1
慢性炎症の診断を受けていない358544人の対照患者と年齢、性別、診療日および実施日を個別に対応させた180163人の慢性炎症性疾患患者が含まれた。
経過観察期間の中央値は、患者とコントロールで約4年
生活習慣の要因の中で欠けている情報は喫煙に関しては約6%、アルコールに関しては約22%
Fig 1
最も高い発生率は重症の乾癬(1000人年あたり14人)、続いてCDおよびASと診断された人(1000人年あたり12人)であった。
Table 2
 年齢別では、鬱病も不安障害もHR推定値はどの疾患でも、早発型障害(40歳未満)では高く、遅発型障害(60歳以上)では有意差を認めなかった。
Fig 2 Basicも調整してもおおむねHRは1以上
Fig 3 40歳以下はHR 1以上、59歳超はHR 1前後

<メカニズム>
・苦痛や炎症性疾患による衰弱がADLを低下させ、鬱病および不安を増幅させる可能性。
・早期障害発症のプライマリケア患者のうつ病や不安の発生率の増加は、これらの患者がより広範で重度の炎症性障害の症状を長期間呈していることを反映している。
・乾癬においては、うつ病と不安は重症度に比例する
・社会参加の低下
・睡眠の質を低下させてうつ病と不安感が増大する

<Limitation>
・シェーグレン症候群の合併が未検討
・ステロイド使用
・NSAID使用
・心理社会的因子の解析はない
・抗うつ薬、抗不安薬使用歴が不明
・ライフスタイルの調査がない
・プライマリケア医師の診断精度

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・慢性炎症性疾患のメンテナンスにおいては、メンタル面に配慮する必要がある
・治療抵抗性鬱病の予防のための免疫調節療法(例えば、生物学的製剤、メトトレキサート)の潜在的な有効性が予想される。

<自分で考えた交絡因子>
・英国限定
・PsA以外の疾患の重症度
・線維筋痛症の合併
・社会背景因子

<この論文の弱点>
・Limitation+自分交絡因子に同一

<この論文の好ましい点>
・大規模データベース(CPRD)からの解析

担当:三輪裕介

 

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