関節リウマチにおける関節液由来接着細胞の表現型および機能的特徴【Journal Club 20190710】

Phenotypic characterization and invasive properties of synovial fluid-derived adherent cells in rheumatoid arthritis.

著者名 Ahn JK et al. Department of Medicine, Samsung Medical Center, Sungkyunkwan University School of Medicine,

2008 Dec;31(6):365-71

Balckground: 関節リウマチ(RA)のFLS(線維芽細胞様滑膜細胞)はアポトーシス減少によるパンヌス形成、細胞外マトリックスを分解するプロテアーゼ(MMPs)の産生、軟骨への浸潤等を介して病態に寄与している。さらにFLSは増殖・炎症・血管新生・細胞動員を調節し、免疫細胞によるサイトカイン産生の活性化を誘発する様々な分子を産生する。RA患者の関節液にはさまざまな細胞が観察されるがこれらの細胞を培養すると線維芽細胞様の外観をもつ接着細胞が観察される。関節液由来のFLSが滑膜由来のFLSと表現型および機能的特徴において類似性があるか比較した。

Methods関節置換術および滑膜切除術において得られた3人の滑膜由来FLSと関節穿刺によって得れた4人の関節由来FLSを実験に用いた。吸引した関節液をヘパリン添加注射器に集め、1200rpmで15分間遠心分離して、細胞ペレットをDMEM w/10%FBS+PS+AMPH-Bで再懸濁し培養。1日培養後に非接着細胞を除去し90%コンフルエントまで培養しPassage6まで継代した。光学顕微鏡で滑膜由来FLSと形態を比較した。細胞表面マーカーのプロファイルをFlow Cytometry AnalysisでCD3(Tcell), CD14(樹状細胞、単球、MΦ), CD20(Bcell), CD32 (FCγRII; Leukocyte), CD34(Endothelial, fibrocyte), CD68(MΦ), and CD90 (Thy-1; Fibroblast )の発現を確認した。Serum starvation(24h)し2ng/mL IL-1βで刺激した培養液上清中のMMP1とMMP3濃度をELISA法で測定した。細胞浸潤能をCytoSelect™ cell invasion assay(collagen matrix invasion assay)を用いて測定した(2ng/mL IL-1βで24時間刺激)。統計解析:mean±SD, Mann-Whitney, version 9.1, SAS

 ResultsFunctional Characteristics
Fig.1: 光学顕微鏡では星状または紡錘形の外観で滑膜由来FLSと区別できなかった。
Table3:FACS P0は様々な表面抗原を認める。P1以降の大部分の細胞が線維芽細胞マーカーのCD90(Thy-1)を発現(P1:94%, P3:96%, P5:95%)。T、B、MΦ、Mo、樹状細胞マーカーは2.5%未満であった。関節液由来FLSのP1ではCD14陽性(MΦ)、CD32陽性の細胞が滑膜由来FLSより高い傾向があった。初期培養から滑膜由来FLSと関節液由来FLSの細胞表面抗原は類似していた。
Fig.2 : IL-1β刺激後の細胞培養上清中のMMP1およびMMP3の発現は滑膜および関節液由来FLSの間で有意差がなかった(p=0.20)
Fig.3: Invasion Assay:滑膜および関節液由来FLSの間で有意差がなかった(p=0.10)

Discussion
関節リウマチ発症したばかりの滑膜由来FLSの採取は困難である。関節液由来FLSを採取することは容易であり、実験材料として滑膜由来FLSの代替になる可能性がある。この研究の結果から、細胞の形態および細胞様面マーカー、機能も同様の表現型になることが示された。
関節液由来FLSはP2からほぼ、CD14陽性、CD68陽性のマクロファージ様滑膜細胞を含まないCD90 (Thy-1)陽性細胞からなった。またP1の初期から均一な細胞集団を確認することができた。滑膜由来FLSではMMP-1およびMMP-3を産生するFLSは浸潤性が高いことが言われているが関節液由来FLSでも同等の表現型を確認した。
先行研究では、IL-6、IL-8の発現レベルは両方の細胞と同じであることが報告されている。
これらから、炎症性サイトカンおよびMMPの発現パターンは滑膜由来FLSと関節液由来FLSは同様であると考えられる。そして浸潤能も同等であった。

Limitation:ゲノム的な性質の全てを反映するかは不明。
関節液由来FLSの起源が循環系からの間葉系前駆細胞か滑膜表層細胞からのフラグメントかは論点として残る。

結論:関節液由来FLSは滑膜由来FLSの代替になりうることが示唆された。

 

担当:若林邦伸

 

 

 

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