ガンの既往があるRA患者でのTNF阻害剤使用でガン再発はふえる?【Journal Club 20191009】

ガンの既往があるRA患者にてTNF阻害剤使用によるガン再発は増える?

Tumor Necrosis Factor Inhibitors and Cancer Recurrence in Swedish Patients With Rheumatoid Arthritis:A Nationwide Population-Based Cohort Study

Pauline Raaschou, MD, PhD; Jonas So¨ derling, MSE, PhD; Carl Turesson, MD (Professor); and Johan Askling, MD (Professor);for the ARTIS Study Group*

Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden

Ann Intern Med. 2018 Sep 4;169(5):291-299

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<サマリー>

悪性腫瘍の既往があるRA患者へのTNF阻害剤投与は悪性腫瘍の再発と関連があるとはいえない

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<背景・目的>
 やはりTNF阻害剤と悪性腫瘍再発は不明である。しかし、いままでの研究では、StageやTNF阻害剤再投与までの期間は考慮されてこなかった。この点を考慮した上での関係性をみることが今回の研究の目的である

<セッティング>
 Sweden国民
 使用データベース
  ・The Swedish National Patient Register
  ・The Swedish Prescribed Drug Register
  ・The Swedish Cancer Registry
  ・The Swedish Population Register
  ・The National Register of Education
  ・The Swedish Cause of Death Register
  ・The Swedish Rheumatology Quality Register

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
 Population-based cohort study、Matched cohort

<Population、およびその定義>
 RA患者
 TNF阻害剤投与群は、2001.1.1-2015.12.31から抽出
 癌の既往があり、少なくとも6M間は癌が寛解した方

 Matching:がん発症年齢(±5y)、性別、ガン診断日時(±19y)、癌腫、stage、
       TNF開始までの期間、ガンの浸潤度

      Case:control=1:5

 4つのPopulationで検討

  [SampleA]
  ・2001-2015年にTNF阻害剤開始した方
  ・ガンを1960年以降に発症した方

  [SampleB]
  ・2001-2015年にTNF阻害剤開始した方
  ・ガンを2001年以降に発症した方

  [SampleC]
  ・2003-2015年にTNF阻害剤開始した方
  ・ガンを2003年以降に発症した方
   (TNM分類、抗リウマチ剤、PSL、他処方情報が利用可能)
  ・2006年年以降にTNF阻害剤を開始した人

 Unmatch
  ・2001-2015年にTNF阻害剤を投与したことのないガン既往のあるRA患者
  ・がん診断から少なくとも9か月経過し、寛解して6か月以上経過した方
  ・がん診断から少なくとも450日後からフォロー開始

<主な要因、および、その定義>
  TNF阻害剤投与あり

<Comparison、および、その定義> 
  TNF阻害剤投与なし

<主なアウトカム、および、その定義>
 アウトカム:ガン再発
 定義:CD10codeに基づいて判断(appendixTable2)
 Endpoint:ガン再発、他の部位のガン発生、2015年12月、非TNF群での生物学的製剤開始

<その他の因子、および、その定義>  
 RA関連情報
  ACPA/seropositive RA
  TNF阻害剤開始時のRA活動性(DAS28)
  HAQ registered at start of TNFi treatment
  csDMARDs and prednisolone at start of TNFi treatment

 ガン関連情報
   癌腫、ステージ(TNM stage)

 合併症
   COPD、うっ血性心不全、DM、HT、感染、虚血性心疾患、慢性腎臓病

 2年以内の入院

 処方
  抗リウマチ剤、プレドニゾロン(観察開始前)
   処方全般(観察開始前2年以内)

 教育レベル

<解析方法>
  ・記述
  ・単変量:Kaplan-Meier
  ・多変量解析:Cox Regression analysis
    交絡因子
      Match群:sampleA、sampleB
      教育レベル、合併症(COPD、うっ血性心不全、DM、HT、感染、虚血性心疾患、
      慢性腎臓病)
     Match群:Sample C
      教育レベル、合併症(COPD、うっ血性心不全、DM、HT、感染、虚血性心疾患、
      慢性腎臓病)、抗リウマチ剤、PSL、他処方
     Unmatch群
      性別、年齢、がん診断年月日、癌腫、ステージ, 教育レベル、合併症(COPD、
       うっ血性心不全、DM、HT、感染、虚血性心疾患、慢性腎臓病)
  ・欠測対処:記載なし
  ・感度解析:①寛解の期間の変更、②他の癌腫の除外、③stageⅡ or Ⅲに限定、
        ④未測定交絡の検討:E-value

<結果>

Matched analysis 
SampleA
 ・2001-2015年にTNF阻害剤開始した467人(ガン診断後平均8年)
 ・マッチしたTNF阻害剤投与しないコントロール群:2164人
 ・経過観察期間:TNF群5.3年、非TNF群4.3年
 ・ガン再発:TNF群42人(9%)、非TNF群155人(7.2%)
   →調整後HR1.06[95%CI 0.73-1.54]
 ・未交絡測定を考慮すると、HRは2か2.5まで上昇する可能性あり

SampleB
 ・2001年以降にガン発症した方
 ・2001-2015年にTNF阻害剤を開始した223人(ガン診断後平均4.6年)
 ・マッチしたTNF阻害剤投与しないコントロール群:1070人
 ・経過観察期間:TNF群3.9年、非TNF群3.3年
 ・ガン再発:TNF群23人(10%)、非TNF群78人(7.3%)
   →調整後HR1.08[95%CI:0.65-1.80 ](table1、Figure2)
 ・総死亡:両群で変わりなし(Figure3)
 ・感度解析でも同様の結果(Table2)

SampleC
 ・2003年以降にガン発症した方
 ・TNFを開始した138人
 ・マッチしたTNF投与しないコントロール群:646人
 ・ガン再発:TNF群16人(12%)、非TNF群37人(5.7%)
   →調整後HR1.15[95%CI 0.53-2.47]
 ・感度解析でも同様の結果(Table2)

Unmatch
 ・2001-2015年のガン既往のありTNF非投与のRA患者3826人
 ・2001-2015年にTNFを開始した178人
 ・経過観察期間:TNF群5.5年
 ・ガン再発:TNF群16人(9%)
   →調整後HR1.24[95%CI 0.74-2.07]

<結果の解釈・メカニズム>
 ・Figure2にてfollow期間がながくなるとガン再発がふえている。より長期に観察した場合に
  有意な差が生じる可能性がありうる

<Limitation>
 ・もともと遺伝的にガンを発症しやすいpopulationである可能性(選択バイアス)
 ・喫煙のデータ欠如
 ・非TNF投与群の疾患活動性の欠如
 ・ICDコードによるがんの判断が、乳がん以外精度が低い可能性
 ・一般化可能性が低い可能性(他の人種など)
 ・コードを使った研究であり、実際の診断と異なる可能性

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
 ・今後日本でもレジストリ化されていくことが期待されており、モデルとなる
 ・いままでの結果も併せてかんがえると、状況によってTNF阻害剤の使用はよいかもしれない

<この論文の強み>
 ・カバー率や質が高いpopulationベースのデータを利用していること
 ・ガンの発生日からTNF開始日までの期間、がん発生の年齢、ステージ(sampleCのみ)を
  マッチさせ、強いバイアスになる要素を調整したと
 ・matchとunmatchのsampleの解析で同様の結果であること

 

担当:矢嶋宣幸

 

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