SLEにおける認知機能の変化と炎症と機能と構造的脳障害の関連【Journal Club 20191016】

Altered cognitive function in systemic lupus erythematosus and associations with inflammation and functional and structural brain changes

2019 Jul;78(7):934-940.

Barraclough M, McKie S, Parker B, Jackson A, Pemberton P, Elliott R, Bruce IN.

P:英国人 
E:SLE
C:健常人
O:認知機能障害(CD)

<セッティング>
英国

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
横断研究と観察研究の併用

<Population、およびその定義>
・安定しているSLE患者。マンチェスター大学NHS財団トラスト病院リウマチ科通院中。
・SLEの基準。ACR1997かSLICCのいずれかを満たすこと
・安定していることの定義。治療変更必要なし。SLEDAI-2K≦4.
・除外基準。癲癇、脳卒中、重度のうつ病(現在治療中、モンゴメリーアスバーグうつ病スケール(MADRS)≧20)や精神疾患、中枢神経作動薬服用中(3つ以下は除外しない)。

<主な要因、および、その定義>      
・疾患活動性。BILAG2014、SLEDAI-2Kにて評価
・臓器障害。SLICC/ACR damage indexを使用
・血液検査。BLyS、hsCRP, IL-6, VCAM-1, VEGF
・使用した指標。HADS(hospital anxiety and depression scale)、BDI-Ⅱ(ベックうつ病指標)、MADRS、FSMC(運動機能および認知機能の疲労スケール)、6つのCANTABテスト(PAL:Paired Associates Learning 視覚記憶と新しい学習、VRM:言語認識記憶、ERT: Emotional Recognition Test感情処理、RVP: Rapid Visual Information Processing持続的な注意、OTS: One Touch Stockings エグゼクティブ機能、SWM: Spatial Working Memory空間ワーキングメモリ)
・CANTAB:Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery
・参加者が作業記憶(WM)タスクと顔面感情認識タスク(FERT)を行っている間に磁気共鳴イメージング(fMRI、3テスラ)を施行

<Control、および、その定義>
健常人(研究参加者の友人やソーシャルメディアを通じて募集)
サンプルサイズ。fMRIのパワーガイダンスに従い16-32人

<主なアウトカム、および、その定義>
・認知機能障害の指標。SLE vs. 健常人
・fMRIの違い。SLE vs. 健常人

<交絡因子、および、その定義>
・罹病期間、疾患活動性、damage index、薬物使用, aPL / LAC

<解析方法>
・SLEとCDの関連。ピアソン/スピアマン相関関係。
・健常人とSLEのCANTAB、構造的脳異常、fMRI
・t検定、Mann-Whitney U検定
・統計ソフト:SPSS

<結果>
・Table1 SLEの患者背景。疾患安定していることがわかる
・Table2 SLEと健常人の比較。SLE患者の教育期間は短く、平均IQは低かった。
SLE群はうつ病スコア(MADRS, HAM-D, BDI-Ⅱ)いずれも高かった。倦怠感スコア(FSMC)はmotorもcognitiveも高かった。
バイオマーカーは、SLE群でhsCRP, IL-6, VEGF, BLySが高かった。
・hsCRPはHADS抑うつスコアと正の相関があった(rs = 0.43、p = 0.013)
・Table3 CANTAB SLE患者のうち、2名は疲労のため試験を完遂できず。
SLE患者はRVP、ERTが低い

構造的MRI所見
SLE(23人)、健常人(30人)に施行
SLE患者はCSO-VRS(半卵円中心)の血管周囲スペース(PVS)が大きい。大脳基底核のPVSに差はない。

機能的MRI所見(fMRI)
SLE(23人)、健常人(29人)に施行
SLE患者は、0-back level 健常人より成績が悪い(p=0.008)

  1. back level 健常人より反応が悪い(p=0.019)
  2. back level 健常人より反応が悪い(p=0.025)

Figure1. 2-0 backにおいてSLE患者は
左横側頭回(p=0.039)、右上側頭回(p=0.041)、右尾状核(p=0.018)にて有意差あり

Figure2. 0 back-rests
SLE患者は舌回シグナルの減少あり

Figure3. FERTタスク
SLE患者は、悲しみを示すときに顔が女性であるか男性であるかを正確に判断するのに時間がかかった(p=0.035)
SLE患者は悲しみに中立な状態で左前頭部のBOLD反応が増加

<メカニズム>
・うつ病スコアは「正常範囲」内にあったが、運動疲労および認知疲労のスコアはSLEグループで高かった。
・疲労と気分の両方が認知に影響を与える可能性があり、これらの症状はSLE集団に非常によく見られる。
・この研究では、気分と疲労は神経認知に悪影響を及ぼす。
・炎症と気分は密接に関連していることがますます認識されており、VCAM-1、IL-6およびBILAG 2014のスコアは認知脳メカニズムと相関しており、SLEの炎症が認知機能障害に寄与するという仮説を支持している

<Limitation>
・多重比較調整を行っていない。
・低用量の向精神薬服用患者、ステロイド使用患者が含まれること

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・SLEの認知機能障害に対する介入は可能か

<自分で考えた交絡因子>
・シェーグレン症候群の有無
・線維筋痛症の有無
・英国人

<この論文の弱点>
・少数例での検討

<この論文の好ましい点>
・SLEに合併する認知機能障害をうつ病と倦怠感から調査し、質問紙票、fMRI、バイオマーカーの3点セットで行ったこと。

 

担当:三輪裕介

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