Association of radiographic findings in hand X-ray with clinical features and autoantibodies in patients with systemic sclerosis.【Journal Club 20200205】

Association of radiographic findings in hand X-ray with clinical features and autoantibodies in patients with systemic sclerosis.

Sakata K, Kaneko Y, Yasuoka H, Takeuchi T.

2020 Jan;39(1):113-118.

Background: 全身性強皮症(SSc)は自己免疫異常、血流障害、過剰な線維化と3つの特徴を有し、皮膚病変、肺病変、心病変、胃腸管病変と多彩な臓器障害を起こす膠原病疾患である。SScにおいて関節症状は24~97%にみられると言われ、筋骨格系の障害は患者の日常生活へ影響を及ぼす。SSc患者では末節骨の骨融解、屈曲拘縮、亜脱臼などの手Xray所見を認めることが知られているが臨床的特徴と自己抗体との関連があるかは不明であった。この研究では手Xrayの異常所見の有病率と特徴、および臨床的特徴とSSc関連自己抗体との関係を調査した。

  1. セッティングと研究デザインの型:単施設のサンプルサイズの小さな横断観察研究
  2. Population、およびその定義:
  3. 1980ACRのSSC分類基準を満たし2008-2016年の間に慶応大学病院の受診し臨床データと手Xrayを施行されている患者。
  4. 主な要因、および、その定義:手Xray:手2方向、関節、骨、軟部組織の異常所見を2人の観察者で独立して評価(A) acro-osteolysis (C) flexion contracture,(E) seagull-wing(G) joint space narrowing
  5. (H) subluxation
  6. (F) saw-tooth deformities
  7. (D) erosive changes with marginal erosion
  8. (B) calcinosis
  9. (参照:Radiological hand involvement in systemic sclerosis. Ann Rheum Dis 65:1088–1092)
  10. 後ろ向きに臨床データ(性別、年齢、罹患期間、限局皮膚硬化型/びまん皮膚硬化型)、強皮症関連自己抗体(Xray撮影直近の結果)調査。RA合併例は除外。経過中に少なくとも1度でもレイノー現象、指尖部潰瘍、指尖部陥凹性瘢痕、爪郭の出血点、毛細血管拡張をみとれば血管症状陽性とした。
  11. Control、および、その定義: なし
  12. 解析:連続変数はStudent`s test, カテゴリ変数はカイ2錠検定で比較。Xrayの2人の評価者の一致率は個々のXray所見のκ係数を計算し評価。
  13. 結果(箇条書きで、大事なところのみ)                             133人の強皮症患者が登録され、9名のRA合併患者が除外され、124人が解析された(全て日本人)。

Table 1. 患者背景とXray所見
89%が女性、平均年齢65.7歳、平均罹患期間12.7年、24%がdcSSc、76%がLtSSc
Xrayはk係数が0.60-0.85の2人で読影(末節骨の骨融解:0.85、屈曲拘縮:0.83、石灰沈着:0.76、びらん性変化:0.85、関節裂隙狭小化:0.83、亜脱臼0.60)
124人のうち、66%に異常なXray所見
末節骨の骨融解:20%、石灰沈着:10%、屈曲拘縮:7%、びらん性変化:27%、関節裂隙狭小化:41%、亜脱臼 :8%
JSNを認めた91%, びらんを認めた患者の98%はDIP関節だった。
Erosive OAで見られるSeagull-wing or saw-tooth signsはびらん性変化を認めた患者のうち73%(全体の19%)に認めた。

Table 2 手Xray所見と臨床的特徴の関連
石灰沈着            高齢、肺高血圧症、胃腸管病変、指尖部潰瘍・瘢痕
関節裂隙狭小化    高齢
亜脱臼              高齢
末節骨の骨融解    若年、長い罹患期間、dcSSc、間質性肺疾患、指尖部潰瘍・瘢痕
屈曲拘縮            長い罹患期間、dcSSc、胃腸管病変、指尖部潰瘍・瘢痕
末節骨の骨融解と、石灰沈着、屈曲拘縮は指尖部潰瘍と指尖部陥凹性瘢痕の頻回な既往があった

Figure 1:SSc関連自己抗体によるXrayの所見
抗Scl-70抗体:末節骨の骨融解と屈曲拘縮と正の相関
抗セントロメア抗体:石灰沈着と正の相関、末節骨の骨融解と負の相関

考察
「指尖潰瘍と瘢痕を繰り返し罹患期間が長くなると末節骨の骨融解と石灰沈着、屈曲拘縮が認めてくる」
Avouacらの報告でも末節骨の骨融解の予測因子はベースラインの指尖潰瘍と石灰化と報告
「石灰沈着とPH,GI、末節骨の骨融解とIPD、屈曲拘縮とGIは過去の報告とあまり一致しない」
Avouacらの報告:末節骨の骨融解とPH, 屈曲拘縮とILDに関連と報告
Valenzuelaらの報告:石灰沈着はPHもしくはGI病変との関連を報告
「抗セントロメア抗体陽性は石灰沈着を起し、抗Scl-70抗体陽性は末節骨の骨融解と屈曲拘縮を起す」
Valenzuelaらの報告:石灰沈着は抗セントロメア抗体と正の相関を認める
「手XrayはSScの根本的病因と自己抗体のプロファイルを反映している可能性がある」

 

びらん性変化が欧米の報告と比較して多かったのは日本人のErosive OAが多い(日本人集団4.2%、欧米人集団2.8%)ことによる考えられる。19%にErosive OA所見を認めた(Baronらの報告では18%)ことは「強皮症患者でErosive OAの頻度が高い」ことが示唆された。
小さなサンプルサイズであったため多変量解析はできなかった。コホート研究での検証が必要。

 

担当:若林邦伸

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