Ultrasound erosions in the feet best predict progression to inflammatory arthritis in anti-CCP positive at-risk individuals without clinical synovitis.
抗CCP抗体陽性者での足趾MTP5の骨びらんの検出は、潜在性滑膜炎の検出、炎症性(臨床的)関節炎への伸展のリスク因子である
Di Matteo A, Mankia K, Duquenne L, Cipolletta E, Wakefield RJ, Garcia-Montoya L, Nam JL, Emery P
Leeds Institute of Rheumatic and Musculoskeletal Medicine, University of Leeds, Leeds, UK.
Ann Rheum Dis. 2020 May 4. pii: annrheumdis-2020-217215. doi: 10.1136/annrheumdis-2020-217215. [Epub ahead of print]
PMID: 32366522 DOI: 10.1136/annrheumdis-2020-217215
<サマリー>
抗CCP抗体陽性患者において、足趾MTP5の骨びらんの検出は、潜在性滑膜炎の検出、炎症性(臨床的)関節炎への伸展のリスク因子である可能性が高い
□セッティング
・2016年のコホート研究”CCP study” (Ann Rheum Dis 2016;75:1452–6.)に登録された患者
(2007~2015 米国ヨークシャー州および英国より選出された患者)
・2008年7月~2019年12月に超音波検査を施行された患者
□研究デザイン
・前向きコホート研究
□Population および定義
・18歳以上
・新規の筋骨格系の症状を有するが、かつ臨床的滑膜炎が認められない患者
・抗CCP抗体陽性
□主な要因と定義
・関節エコー:臨床検査値とエコー検査はリウマチ専門医により、双方を盲目化して集計した
・骨びらんと滑膜炎の有無はRAに特異的とされる①MCP2 ②MCP5 ③MTP5の3関節で観察された
(参照:Ann Rheum Dis 2015;74:897–903)
・骨びらん:OMERACT定義にのっとる(2断面で観察される骨の連続性の途絶)
・骨びらんサイズ:半定量的に0-3で表記
0: no definite erosion, 1: erosion <2 mm, 2: erosion 2–4 mm and 3: erosion >4 mm
・滑膜炎:OMERACT定義にのっとり ①滑膜肥厚≧2、or ②滑膜肥厚≧1+PD signal≧1
・全例で年齢・性別・喫煙歴・手および足趾のX線、第二世代交CCP抗体値を集計した
・抗CCP抗体: 基準値3倍以上をhigh titer 、3倍未満をlow titerとする
・フォローアップ:
臨床評価:初めの1年は3カ月ごと、以後は1年ごと or 臨床的に滑膜炎が認められた時に再評価
関節エコー:初回・6カ月・1年で施行 以後は1年ごと
1年以上フォローできなかったものは除外した
□解析方法
・骨びらんと滑膜炎が同時に存在する可能性を考慮し、超音波検査結果の評価には、
presence/absence of synovitis and presence/absence of bone erosionsで2×2表を作成し、
Χ2検定
・初期の超音波所見と1年後、3年後までの炎症性滑膜炎の関連には多変量解析をおこなった
・すべての回帰分析はage, gender, smoking exposure, anti- CCP2 titre and RF statusで調整した
□結果
・Table 1.: 419患者 2514関節を評価 平均観察期間は497日(IQR 256-111.5)
・Table 2 : ≧1の骨びらんは41人/419人(9.8%)、55関節/2514関節(2.2%)で検出、
骨びらんの検出は手指(MCP)に比べMTP5関節で有意に高い(P<0.01)
・Table 3 : MTP5の骨びらんは臨床的滑膜炎への進展に強い関連がある(Cramer’s V=0.37, p<0.01)
(MCPでは関連が低い)
・Table 4 : 多変量解析でもMTP5の骨びらんは1年後、3年後の臨床的滑膜炎の進展のリスク
・Figure 1A: 骨びらん≧1の患者では骨びらんなし群患者に比べ有意に臨床的滑膜炎へ伸展
(骨びらん≧1では31.7%、骨びらん≧2以上では61.5%、骨びらんなしで14.8%)
□考察
MTP5が臨床的滑膜炎の発症前、早期に観察されることについて、
本文中では
・下肢の加重ストレスが足趾の骨びらんを生じやすくする可能性
・炎症の前に機械的刺激による骨びらんが形成され、破壊そのものが炎症の発症因子になる可能性
・機械的損傷=びらん形成が抗CCP抗体の産生に関与する可能性
(Best Pract Res Clin Rheumatol 2017;31:53–8、Semin Immunopathol 2017;39:437–46.)
を挙げている。
また、健常者では足趾の骨びらんがみられないという研究結果を提示)し、
足趾MTP5の骨びらんの評価が予後予測に有用と結論づけている。
□この研究のlimitation
・MRI評価が行われておらず、滑膜肥厚や炎症にかんしては超音波の感度に依存する
(<2㎜の病態評価が困難)
・各症例の治療経過が統一されていない、特に生物製剤や骨代謝薬に関して記載もない
・足趾の骨破壊や炎症→過重負荷を考慮し、BMIや活動性なども考慮するべき因子
□どのように臨床で生かす
・エコー検査のルーティンに足趾を加え、自施設でも検証する意義はある
・DAS28で観察されない部位であるが、症状を有さないケースでも触診を行い、エコー所見と
合わせて評価を行う
文責:高橋良