Impact of the new American College of Cardiology/ American Heart Association definition of hypertension on atherosclerotic vascular events in systemic lupus erythematosus.
米国心臓病学会/米国心臓協会推奨の新たに定義された高血圧目標は、SLE患者において新規血管イベントを抑制するか?
Konstantinos Tselios Dafna D Gladman,Jiandong Su, Murray Urowitz
Centre for prognosis studies in the Rheumatic diseases, University of Toronto lupus clinic, Toronto, ontario, canada
Ann Rheum Dis 2020;79:612–617.
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<選んだ理由>
・直近2ヶ月のARD
・SLEにおけるCVD一次予防のための目標血圧の参考になりうる
・同じトロント大学のグループがTotal cholesterolに関して似た研究デザインで2011年のARTに出している(Nikpour et al. Arthritis Research & Therapy 2011,13:R156)
<サマリー>
2年間にわたって持続的に血圧が130–139/80–89 mmHgのSLE患者は、正常血圧の患者と比較して新規血管イベントの発生率が有意に高かった。(HR 1.73, 95% CI 1.13 to 2.65, p=0.011).
P:SLE患者
E/C: 1 正常血圧群 Bp <130/80 mmHg
2 Stage1 高血圧群 Bp 130-139/80-89 mmHg
3 Stage2 高血圧群 Bp >140/90 mmHg
O:新規血管イベント
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<セッティング>
・期間: 1970 to 不明
・場所:The University of Toronto Lupus Clinic
<研究デザインの型>
・過去起点コホート
<Population、およびその定義>
・ACR1997分類基準を満たす、もしくは3項目とSLEを示唆する病理所見を有するSLE患者。
・2年間のフォローアップとその後最低1回の外来受診
・除外基準:下記に定義するAVEの既往
<主な要因、および、その定義>
・2年間の平均血圧。
収縮期血圧と拡張期血圧の高い方で以下のグループに分類
1 正常血圧群 Bp <130/80 mmHg
2 Stage1 高血圧群 Bp 130-139/80-89 mmHg
3 Stage2 高血圧群 Bp >140/90 mmHg
<主なアウトカム、および、その定義>
・主要アウトカム:新規血管イベント(AVE)
狭心症、心筋梗塞、冠動脈血行再建術、虚血性慢性心不全、血行再建術を要した末梢動脈疾患、TIA、脳梗塞、心血管死亡
<交絡因子、および、その定義>
・年齢、性別、人種、糖尿病、脂質異常症、SLEDAI-2k、喫煙、eGFR、抗リン脂質抗体、ステロイド使用
<解析方法>
・サンプルサイズ:記載なし
・背景の比較 :カテゴリー カイ二乗検定、連続 ANOVA検定→のみ
・AVE発症までの時間:カプラン・マイヤー曲線→Cox比例ハザードモデル
・全て両側、有意水準は5%
・ソフト:SAS V.9.4
<結果>
・1532人がincludeされ、455人は通院が2年に満たさず除外、21人がAVE既往で除外された。
・2年間で平均6.3回の血圧測定が行われた。
・2年間の通院後をスタートとして、平均10.8年間フォローアップされた。(16601人年)
・ベースラインの患者背景Table1
・アウトカム発症
全AVE 124例、心血管死亡 20例
狭心症 40例、心筋梗塞 23例、冠動脈血行再建術 12例、虚血性慢性心不全 9例、血行再建術を要した末梢動脈疾患 2例、TIA・脳梗塞 18例。
グループ別でのAVE発症は
1 正常血圧群 20.6% (32例)、18.9例/1000人年
2 Stage1 高血圧群 13% (41例) 、11.5例/1000人年
3 Stage2 高血圧群 4.8% (51例) 、4.5例/1000人年
それぞれの群間で有意差あり。(1vs2 p=0.0007, 2vs3 p=0.008, 3vs1 p<0.0001)
・Stage2高血圧群は、正常血圧群と比較してAVEの発生率が有意に高かった。(HR 1.73, 95% CI 1.13 to 2.65, p=0.011).
・その他の変数では喫煙、疾患活動性、ステロイド使用、抗凝固・血小板薬使用がリスクであった。
<結果の解釈・メカニズム>
・SLE患者においても降圧薬内服の有無によらず、Bp130/80より高いとはAVEリスクが上がる
<Limitation>
・降圧目標としてBp130/80以下のどの範囲が適切かは不明
・肥満、イベント家族歴が交絡調整されていない
・RCTではないので、降圧薬でBP<130/80に下げた方がイベント発症を抑えらるかは不明。
・せめて降圧薬内服有無での層別化を見たかった
・交絡調整はベースライン時のみの変数に対してのみで良いのかは議論
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・罹病期間6年程度、SLEDAI 5点程度で比較的安定した外来通院中SLEを想定
・罹病から時間が経っていても、早期にBp130/80以下を目指したい
・ベースラインのSLEDAIとも関連があり、疾患活動性とCVD発症の関連が示唆される。
・通院中の平均をみる解析手法を流用する
<この論文の好ましい点>
・血圧測定の方法が正確 :5分間の座位安静後に2回で統一
・最初2年間の血圧がその後のイベント発症に寄与するという結果のため、早期に介入が必要かもというメッセージが強い
担当:細沼雅弘