シトルリン化は樹状細胞から破骨細胞への分化をコントロールする【Journal Club 20201111】

Citrullination Controls Dendritic Cell Transdifferentiation into Osteoclasts
シトルリン化は樹状細胞から破骨細胞への分化をコントロールする

Akilan Krishnamurthy et al.
Rheumatology Unit, Karolinska University Hospital, Karolinska Institutet, S-171 76 Stockholm, Sweden.

The Journal of Immunology, 2019, 202: 3143–3150.

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【背景】
M-CSFとRANKL存在下では未熟な樹状細胞(iDC)は破骨細胞(OC)に分化しうるが、その分化のスイッチについては解明されていない。これまで、マクロファージ(Mφ)から破骨細胞の分化はPADによるシトルリン化が影響することを証明した。
RA患者の関節内では、DC-OC分化が促進されている。
抗CCP抗体陽性の関節リウマチ患者は、骨量減少と骨びらんが認められやすい。
シトルリン化はDC-OC分化に重要な役割を果たすと考えられる。

【目的】
シトルリン化と抗CCP抗体の存在は樹状細胞から破骨細胞への分化に影響を与えるかどうかを検討する。

Figure1:破骨細胞はマクロファージと樹状細胞より分化する。
A:CD14+monocytesはGMCSF・IL-4存在下でCD14-CD1a+樹状細胞(iDC)へ、M-CSF存在下でCD14+マクロファージ(Mφ)へ分化する。MφとiDCはRANKL・M-CSF存在下で破骨細胞(OC)に分化する。CD14、CD1aの発現はflow cytometryで測定。
B:MφとiDCがOCに分化する過程のタンパク質の発現を確認。
C:DCはOCに分化する過程でCD1bの発現が低下し、CD14の発現が増加する。
DC・Mφから分化するOCはいずれもCathepsin Kの発現が増加する。

樹状細胞は一定の条件下で破骨細胞に分化する。

Figure2 タンパク質のシトルリン化とPADの活性はiDCからOCへの分化に関連する
A:iDCの分化は培養環境(特に細胞濃度)によって大きく異なる。iDCをsparse(まばらな状態)とdense(密集した状態)でそれぞれ培養すると、タンパク質の構成成分が大きく異なる。
B:DC dense(密集)の方がsparse(まばら)よりもOCへ分化する。DC sparseではほとんどOCへ分化しない。
C、F:DC denseではsparseに比べて、PAD活性が高値であった。また、シトルリン化アクチンもDC denseで高値であった。
D:密集したDCのPAD活性は成熟したOCのPAD活性と類似する。
E:免疫染色法にて、DCからOCへの分化の過程で、PAD4はいずれの過程でも発現している。PAD2は分化の過程で発現が徐々に亢進した。
G:DCからOCへの分化の過程で、PAD inhibitorを加えると、PAD inhibotorの濃度依存性にDCからOCへの分化を阻害した(OCの数が減少した)。

樹状細胞から破骨細胞への分化はその細胞濃度によって異なる。
樹状細胞が密集した状態では、PAD活性が高く、シトルリン化が促進する。
さらに密集した状態では、樹状細胞から破骨細胞への分化が亢進する。

Figure3 iDC由来のOC表面のシトルリン化したactinとvimentinは抗CCP抗体の標的となる可能性がある。
A、B:iDCあるいはOC表面に発現。(緑)シトルリン化したvimentinとactin。(赤)細胞表面に結合した抗CCP抗体。(黄)vimentin、actinとACPAが共存。
C:コントロール

ACPA陽性RA患者のiDCあるいはOC表面にシトルリン化タンパクが発現し、そこにACPAが反応する。

Figure4 ACPAはDC-OC分化を促進する。
A、B:healthy donorとACPA陽性RA患者のmonocyteから得られたiDCを用いて、ACPAがOCへの分化に影響を及ぼすかどうか、TRAP stainingとbone resorption assayを行った。
ACPA(1μg/ml)存在下にてOC numbersとErosionはcontrolと比べ増加した。
C:ACPAは(5μg/mlまで)濃度依存性にOC numbersを増加させた。
D:ACPAのF(ab)2はiDCからOCへの分化を促進した。
E:CD1c+DCにおいてもACPA存在下でOCへの分化を促進した。ACPAがmonocyte-derived DCに限らず、ACPAがOCへの分化を促進することを示した。
F:PAD inhibitorを添加すると、ACPA(1μg/ml)が促進するOCへの分化を抑制した。

ACPAは細胞表面上のシトルリン化タンパクと反応し、樹状細胞から破骨細胞への分化を促進する。

Figure5 IL8はACPAによるDC-OC分化に関与する。
A、B:ACPAを添加し培養するとDC-OC分化の過程で、IL8が高値となるが、IL6は変わらない。
C:ACPAのF(ab)2を添加してもOCのIL8は高値となった。
D:IL8受容体のCXCR1とCXCR2はiDCに発現していた。
E:IL8中和抗体はACPAによるDC-OC分化を抑制した。

樹状細胞のシトルリン化はACPAを介したIL8分泌を促進し、破骨細胞への分化を促進する。

【結論】
樹状細胞はシトルリン化と細胞表面のACPA結合によるIL8分泌を通じて、破骨前駆細胞に分化することができる。
このDC-OC分化のメカニズムはACPA陽性RA患者の骨破壊のメカニズムに重要な枠割を果たすかもしれない。

担当:猪狩雄蔵

 

 

 

 

 

 

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