唾液腺内視鏡はシェーグレン症候群の口腔内乾燥を緩和させる?【Journal Club 20201118】

Sialendoscopy enhances salivary gland function in Sjögren’s syndrome: a 6-month follow-up, randomised and controlled, single blind study
K Hakki Karagozoglu, Arjan Vissink,Tim Forouzanfar,Henk S Brand,Floor Maarse,Derk Hendrik Jan Jager
 Ann Rheum Dis 2018;0:1–7. doi:10.1136/annrheumdis-2017-212672

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<サマリー>
これまで、ドライマウスの不満を緩和する効果的な(緩和的な)治療法はなかった。最近の症例研究で、唾液腺内視鏡検査を施行することで,SS患者の症状を軽減できることが示唆されている。
唾液腺機能が完全に廃絶してない患者への唾液腺内視鏡検査は,唾液腺の管を生理食塩水とコルチゾンで洗浄し、唾液腺のダクトを拡張することで、唾液の流れのレベルを上げたり、唾液腺残存機能を有効化することにより、口腔乾燥症を改善することができる可能性がある。

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P腺予備機能を有する2002年AECR基準を満たすSS患者
E唾液内視鏡検査での介入(生理食塩水による管腔系の灌漑(n=16)or 生理食塩水に続いて5mLの生理食塩水中のトリアムシノロンアセトニド40mg/mL(TA; Kenacort-A 40; Bristol-Myers Squibb, New York, USA)を処置終了時に投与n=18))
C唾液内視鏡検査の介入なし(n=15)
*上記対象のための唾液内視鏡検査は研究倫理委員会によって許可されず
O介入の1週間前(T0)、介入の1週間後(T1)、8週間後(T8)、16週間後(T16)、24週間後(T24)の、刺激を受けていない口内全体の唾液量(UWS)(ml/分)の変化

 <セッティング>
・2014年7月から2016年11月までの間に51人の患者
・オランダの単施設研究(Vrije Universiteit Amsterdam)
・最後の患者は2017年5月に追跡期間を終了

<研究デザインの型:RCT>Figure2
無作為化対照単盲検試験
・Purpose:新たな支持療法(内視鏡治療)の提案
・Study type:介入研究
・母集団:50名
・Allocation:無作為化割付(無作為化ソフトウェア(www.randomizer.org)を使用して、無作為に割り付けられた(ブロック化無作為化)、非介入対照群と介入群のいずれかに割り付けられた
 ・Masking:参加者のみ

<Population、およびその定義>:Table1,一応原発性SSが多い
・18~75歳のベースラインの非刺激性全唾液流量(UWS)が0.0mL/minを超えるか、または腺予備機能の証拠(刺激性ベースライン全唾液流量(SWS)≧0.02mL/min)を有する原発性または2次性SS患者
・SSの分類には2002年American-European Consensus Groupの分類基準を使用した
・除外基準:急性唾液腺炎,唾液腺機能が完全に欠如した患者,唾液腺分泌刺激薬使用中の患者,全身麻酔下での治療に支障をきたす身体状態の患者,または頭頸部放射線治療の既往歴のある患者

<主な要因、および、その定義>       
・介入:唾液内視鏡検査(耳下腺と顎下腺の両方の管腔系を生理食塩水 or 生理食塩水で灌注した後、生理食塩水5mL中に40mg/mLのTAを注入)
*唾液内視鏡検査は経験豊富な外科医1名(KHK)が行った
*唾液内視鏡検査は、直径0.8または1.1mmのエルランゲン唾液内視鏡(Karl Storz GmbH & Co, Tuttlingen, Germany)を使用して実施
*患者の不快感を避けるために、全身麻酔下で実施

<Control、および、その定義>
・唾液内視鏡検査の介入なし

<主なアウトカム、および、その定義>
・アウトカム設定:介入の1週間前(T0)、介入の1週間後(T1)、8週間後(T8)、16週間後(T16)、24週間後(T24)の、
★【Primary Outcome】:刺激を受けていない口内全体の唾液量(UWS)(ml/分)の変化
★【Secondary Outcome】:刺激性耳下腺唾液流量の変化(SWS・SpF), マウスフィールスコア(XIスコア)の変化, EULAR SS Patient Reported Indexスコア(ESSPRI)の変化, Clinical oral dryness Score (CODS)スコアの変化

<交絡因子、および、その定義>Table1
・オランダの単一施設での研究(人種的)

<解析方法>ソフト:SPSS V.22.0 (IBM, Armonk, USA)、0.05以下のP値は統計的に有意に
・3群内の時点間の差:Wilcoxon符号付き順位検定(正規分布のないデータ)または反復測定の分散分析(正規分布データ)を用いて検討された。
・球面性の仮定は,Mauchly の検定を用いて検定された.
・群間の差:Mann-Whitney U 検定(正規分布なしのデータ)または独立t-検定(正規分布データ)を用いて評価した。
・分散の同質性の仮定はLeveneのF-検定を用いて評価した。
・分散の同質性の仮定が棄却された場合、Welch-Satterthwaite 法が自由度を調整するために使用された。

<結果>(Table2,Table3,Figure3)
・結果の分布としては、ESSPRIは正規分布であり、UWS、SWS・SPF、CODSおよびXIは正規分布ではなかった(Shapiro-Wilk; P<0.001)
・生理食塩水/TAで管路系を灌漑した後にアウトカムの改善が示唆された
・主な唾液腺の管路系への生理食塩水/TA の灌漑は、生理食塩水単独での灌漑よりも SWS レベルに有意な効果は認めなかった
・介入による合併症の発生率は全体的に限られており、合併症は軽度であった。合併症の要因としては、すべての唾液腺にシアルンドスコープを導入するために乳頭を特定したり、拡張したりすることができなかったことが挙げられる

<結果の解釈・メカニズム>
・これまでの研究では、狭窄形成が唾液管閉塞や再発性唾液腺炎の主な原因であることが明らかになっている
・唾液内視鏡治療を行うことでこの狭窄形成を改善させ、唾液の流れのレベルを上げたり、残存した唾液腺機能を有効化する可能性がある
・TA付加の方がリンパ球による唾液腺管の炎症改善に寄与すると考察されたが,周囲の組織によるTAの取り込みがあるかどうかは疑問であり,実際有意差はつかなかった

<Limitation>
・アウトカムが多く多重性の問題がある
・サンプルサイズが適切かどうか
・内視鏡手技による誤差(すべての唾液腺にサイアレンドスコープを導入するための乳頭を特定したり、拡張したりすることができなかったこと,耳下腺・顎下腺の差)
・追跡期間が短すぎて、SS患者における介入による長期的な効果を評価するには不十分
・二重盲検無作為化試験として倫理上研究を実施することができておらず、患者報告が必要なアウトカム(主観的アウトカム)にはバイアスがかかる

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・主に唾液腺の病期診断のために使用されていた検査が,施行することにより唾液分泌機能改善に寄与するかもしれない

<この論文の好ましい点>
・ドライマウスの不満を緩和する効果的な(緩和的な)治療法がない現状で,唾液腺分泌機能の改善に寄与するかもしれない可能性を示した

担当:清水国香

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