The Challenges of Perceived Self‐Management in Lupus
SLE患者さんの自己管理能力の評価
Paul R. Fortin Deborah Da Costa Carolyn Neville Anne‐Sophie Julien Elham Rahme Vinita Haroun Wendy Singer et al
Centre de recherche du CHU de Québec ‐ Université Laval, Québec, Canada
Arthritis Care Res (Hoboken). 2020 Dec 20. doi: 10.1002/acr.24542. Online ahead of print.
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<サマリー>
SLE患者さんの自己管理能力は3分の1以上の方で低かった。自己管理能力低値は、独身、身体的健康状態が低いこと、疾患活動が低いこと、自己効力感が低いこと、emotional coping、患者と医師とのコミュニケーション不足と関連した。
P:SLE患者さん
I:―
C:―
O:自己管理能力
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<セッティング>
・Canadaの10施設(Canadian Network for Improved Outcomes in Systemic Lupus Erythematosus (CaNIOS)に参加)
<研究デザインの型>
・横断研究
<Population、およびその定義>
・SLE患者
英語、フランス語を利用する18歳以上
メールで研究参加を呼び掛け
*the My Lupus Guide(MLG™) study (ClinicalTrials.gov #NCT02950714)のベースラインデータ
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT02950714
MLG™
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4906236/?report=reader
<主な曝露・コントロール>
・なし
<主なアウトカム、および、その定義>
・プライマリアウトカム:自己管理能力
定義:Patients Activation Measure (PAM)
13項目の4段階のリッカート尺度、0-100点の合計点
以下の4段階に分類:LEVEL1-2をlow activationと定義
Level1:47点以下、level2:47.1-55.1、Level3:55.2-67、
Level4:67.1以上
質問例:
I know how to prevent problems with my health
I am confident that I can tell a doctor my concerns, even when he or she does not ask
<その他の変数、その定義>
・年齢、性別、教育、病気の期間、健康情報をオンラインで検索するためのアクセスと時間を含むインターネットの利用状況
・SF36:QOL(36項目)
・Systemic Lupus Activity Questionnaire (SLAQ):疾患活動性(25項目)
・Lupus Damage Questionnaire Index (LDQI):ダメージ (56項目)
・Lupus Self-Efficacy Scale:自己効力感(11項目)
・Center for Epidemiological Studies-Depression (CES-D):抑うつ(20項目)
・Morisky Levine scale (MLS-4):薬剤アドヒアランス(4項目)
・Coping with Health Injuries and Problems (CHIP):問題への対処能力(32項目)
・Modified Medical Outcomes Study Social Support Survey (MMOS SSS):社会的サポート(7項目)
・Interpersonal Processes of Care Survey-Short Form (IPC-SF): 患者医師コミュニケーション
<解析方法>
・記述統計量
・一般化線形混合モデル:Random effect:施設
・連続変数→回帰係数(β)→変数の1単位の増加に対するβ量によるPAMスコア変化
・カテゴリー変数→平均PAM
・有意差・欠測対処:記載なし
<結果>
・メールを送付した1916人の患者のうち、541人(28%)が同意
・1人除外(回答の信頼性が低いため)→540人で解析
・平均PAMスコアは61.1±13.5
・レベル1、2、3、4でそれぞれ16%、20%、42%、22%→低PAMレベル(レベル1、2)36%
・平均年齢は50±14歳、女性93%、大学卒業39%、大学院卒16%、既婚65%、就業54%、就労20%
・74%が白人、11%がアジア人、5%が黒人、10%がその他の民族
・コンピュータ利用:週平均14.5±13.7時間→216人(41%)が健康情報を検索
・平均罹患期間:17±12年
・SF-36 平均PCS39±12、平均MCS 45±12→身体的・精神的機能の低下
・自己申告した疾患活動性:平均14.0±8.0→疾患活動性が低い
・ダメージ:平均3.5±3.1→中等度
・平均CES-Dスコア:15.6±10.7→232人(43.1%)がうつ病疑い
・コーピングは、器質的対処法の使用頻度が最も高く、感情的な先入観が最も低かった
・単変量解析
・PAMスコアが低いほど、教育レベル、障害の増加、疾患期間の短縮、高疾患活動性、身体的・精神的機能の低下(SF-36 PCSおよびMCSスコア)、服薬アドヒアランスの低下と関連
・低PAMスコアは、うつ病の増加、感情的コーピング(CHIP)の使用増加、自己効力感の低下、および患者と医師のコミュニケーションIPCサブスケールにおける知覚された「明確さの欠如」の増加と関連していた(表3)
・PAMスコアが高いほど、より良いcoping(distractive coping、instrumental coping)の使用や、よりよい患者医師とのコミュニケーションと関連(表3)
・低PAMスコアは、独身であること、身体的健康状態が低いこと、自己効力感が低いことと関連
・多変量解析
・PAMスコアの低さが低疾患活動性と関連(単変量とは逆)
・copingでは、PAMスコアの低値は、emotional copingとの関連が高く、distractive coping、instrumental copingとは関連は低かった。
・コミュニケ―ションのサブスケールでは、PAMスコアの低さは、明確さの欠如との関連性が高い
<Limitation>
・横断研究であり、因果関係はわからない
・もともとのcohortの1/4程度の組み入れていること
・SLE専門クリニックおよび白人でのデータであり、一般化可能性が高くない可能性
・デバイス使用の能力については計測できていない
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・SLE患者さん、とくに幼少期発症の患者さん、に対して心理社会的な側面を意識した診療は重要である。しかしながら、効果の大きさは不明であり、今後の研究課題である。
<この論文の強み>
・確立されたオンラインサーベイの方法論に則って実施したこと
・サンプルサイズが大きいこと
・心理社会的変数など包括したサーベイであること
<この論文の好ましい点>
・普段注目されていないpsychosocialな部分への注目している点。治療などの直接的な部分へ目が行きがちであるが、自己管理能力、信頼関係などの側面での評価や対応は慢性疾患ではとても重要。
・心理社会的な面の評価は、直接医師へ伝えられないことが想定され、web調査で実施したことは理にかなっている。
文責:矢嶋宣幸