変形性関節症において軟骨組織の破壊に関与するケモカイン【Journal Club 20210210】

CCL2/CCR2, but not CCL5/CCR5, mediates monocyte recruitment, inflammation and cartilage destruction in osteoarthritis

Ann Rheum Dis. 2017 May ; 76(5): 914–922. doi:10.1136/annrheumdis-2016-210426.

【目的】
変形性関節症の病理においてマクロファージの浸潤がどのケモカインによるものかを証明する

【結果】
単球の遊走に大きな影響を与えるケモカインとして、CCL2/CCR2の系とCCL5/CCR5の系が存在する。これらのgeneの欠損マウスでは、CCL2系の欠損において軟骨破壊の関与が確認された。
一方でヒト滑膜組織のマイクロアレイでは両方のmRNAの発現が確認されたものの、関節液においてはやはりCCL2の産生がよりOAにおいては重要であることが示唆された。
最後にOAモデルマウスでCCL2、CCR2の抑制において軟骨組織の破壊は抑制されていることが確認された。

・Figure 1.
A.サフラニンO染色(軟骨を赤く染色する)
C.F4/80 免疫染色
OA変化を起こしたCCL2 gene欠損マウスにおいて、マクロファージの浸潤はなく軟骨破壊も起こしていなかった。

・Figure 2. CCR2においても同様の傾向であった

・Figure 3.  一方でCCL5、CCR5についてはF4/80の浸潤や軟骨の破壊は起こしていなかった。

・Figure 4.
A) 滑膜組織のマイクロアレーでは、ケモカインのうち、CCL3,MIF、CCL20、CCL4、CXCL10、CCL5、CX3CL1、CCL19は健常組織に比較して発現が亢進していた。
B,C) OA関節液では健常人と比してCCL2は高かったものの、CCL5は有意な差はなかった。

・Figure 6. 
CCL2阻害薬(Bindarit)、またはCCR2antagonist(RS-504393)で治療をすることでマクロファージの浸潤や軟骨破壊は抑制された。

【重要なポイント】
OAの治療につながるターゲットはいまだに発見されていない。本研究のようにOAの病態の解明をサイトカイン、ケモカインとしてCCR5のリガンドであるCCL3,CCL4、CCL5ではなく、CCR2のリガンドであるCCL2,CCL7,CCL8による単球の遊走によって軟骨破壊が進行することを示した実験である。

担当:磯崎健男

 

 

 

 

 

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