シェーグレン症候群における唾液腺超音波スコアリングシステムのビデオクリップ評価【Journal Club 20210224】

Video clip assessment of a salivary gland ultrasound scoring system in Sjögren’s syndrome using consensual definitions: an OMERACT ultrasound working group reliability exercise

Jousse-Joulin S, et al.
Ann Rheum Dis 2019;78:967–973

『合意に基づく定義を用いたシェーグレン症候群における唾液腺超音波スコアリングシステムのビデオクリップ評価:OMERACT超音波ワーキンググループの信頼性演習』

<背景>
唾液腺超音波検査(SGUS)が,pSSが疑われる患者または診断された患者における唾液腺病変の有無を評価するのに有用であり診断の一助となりうることがいくつかの研究(4-7)で示唆されている. しかし,唾液腺病変の定義とスコアリングに関する国際的なコンセンサスが存在しないため、SjSに対しSGUSを標準化し評価することは現在一般的ではない.

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<サマリー>
原発性シェーグレン症候群(pss)患者の大唾液腺(sG)病変に対する新しいスコアリングシステムを開発するため、超音波のビデオクリップを用いて,これらの病変の検出に関する読影者の評価および読影者間の信頼性を検証した。

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P:pSS患者/sicca症状を有する非pSS患者
I:唾液腺超音波検査
(C:)
O:デルファイ法による合意度、一致率(κ)
T:Sjogren症候群の唾液腺病変

<セッティング>
・米国の専門家とシェーグレン症候群に関するOMERACT(Outcome Measures in Rheumatology Clinical Trials) US タスクフォースのメンバーである 25 人のリウマチ科医
・14 カ国(オーストリア、チェコ共和国、デンマーク、エジプト、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、ノルウェー、スロベニア、スペイン、スイス、オランダ、米国)の専門家が含まれた

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
・「Outcome Measures in Rheumatology Clinical Trials(OMERACT)」のワーキンググループのサブタスクフォースに準じ、
・25 人のリウマチ科医へのデルファイ質問票による評価(3ラウンドで評価)
  (実際は25 人の参加者のうち、22 人(88%)が最初のデルファイ質問票に回答した。これらの 22 名の参加者全員が、2 回目と 3 回     目のデルファイ質問票に回答)
・質問紙は 1=強く同意しない、2=同意しない、3=どちらともいえない、4=同意しない、5=強く同意するという1~5段階のリッカート尺度で評価された
・定性的スコアリングシステムの提案として脂肪性病変=1、線維性病変=3として評価された
・75%以上の一致率を達成した場合を有意とした
・読影者内の信頼性,読影者間の信頼性含め下記統計学的手法で検討した

<Population、およびその定義>
・前述の25人の専門家が評価したpSS患者またはsicca症状を有する非pSS患者
・画像は一度プールされ評価を行う専門家にランダムな順序で送信,評価された
・読影期間:2017年1月から6月、2017年7月から11月

<評価対象の情報の整理>
・大唾液腺超音波検査におけるビデオクリップ
・ビデオクリップの撮像条件:12~18MHzの高周波リニアUSプローブで描出された左右のPG(耳下腺)とSMG(唾液腺)の縦方向と横方向の平面を含むもので、5秒程度のグレースケール動画が含まれた
・<定性的な病変の定義>

脂肪性置換

腺内に脂肪組織が浸潤

均一な低エコー体として描出

高齢者やSjogrenにも見られる

繊維化

線維性組織化

高エコー性バンド帯

Sjogrenに特異的である

 

<アウトカム/研究の目的>
【超音波検査における定義のコンセンサスの確立】
・section①:耳下腺(PG),顎下腺(SMG),舌下腺(SLG)の正常成分の超音波所見の定義とスキャニング手順のコンセンサス
・section②:pSS患者におけるPG、SMG、SLGにおける超音波異常所見の定義のコンセンサス
・section③:pSS患者のPG、SMG、およびSLGにおけるUS異常を評価するための新しいスコアリングシステムのコンセンサスと段階的な評価
【動画を用いた採点システムの信頼性】
・同一の読影者内の信頼性および読影者間の信頼性

<解析方法>
【定義のコンセンサスの確立】:デルファイ法(3ラウンドで評価)
【動画を用いた採点システムの信頼性】:カッパ統計(一致性の検定)
*Lightのカッパ(平均カッパ値)、重み付けカッパ係数(多数の名義尺度の評価)
*定性評価のため名義尺度変更に対しては感度解析を行った
・すべての統計解析はR言語V.3.2.0(R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria; https://www.r-project.org)を用いて行った.

<結果>
【定義のコンセンサスの確立】
・舌下腺は小さすぎて信頼性の高い評価ができない(一致率75%)
・スキャンの手順と正常唾液腺外観のコンセンサス(表1)
・pSSにおける耳下腺および顎下腺の異常を、局所性またはびまん性の無脈波/逆流性病巣と定義した(一致率95.4%)
・超音波異常患者の中には隣接する軟部組織との鑑別が困難な場合があり、スコア判定の課題となっている(一致率79.1%)
・半定量的スコアリングシステムとして、
grade0:正常な唾液腺
grade1(微小変化):無響・無響領域を伴わない軽度の不均一性
grade2(中等度変化):局所的な無響・無響領域を伴う中等度の不均一性
grade3(重症変化):腺表面全体を占める無響・無響領域を伴うびまん性不均一
と定義された(一致率79.1%)
・定性スコアリングシステムとして、脂肪性および線維性変化の同定があげられたが、感度分析ではLightのκ0.79;範囲0.6-0.98;95%CI 0.76-0.83と信頼性はやや低かった.

【動画を用いた採点システムの信頼性】
・病変の検出と採点に関する読影者内の信頼性は良好であり(Cohenのカッパ0.81,表2),読影者間の信頼性は良好であった(lightのカッパ0.66,表3)

<結果の解釈・メカニズム>
・Sjogren症候群における超音波検査の特異的な所見として線維性組織化を反映した,高エコー線条体や複数の無エコー領域が挙げられており唾液腺炎に伴う組織変性を反映すると考えられる

<Limitation>
・評価者が限定されている点(25名と評価者が少ない):デルファイ法としては欠点
・最適な知識を有していない可能性(本文より)
・評価者に日本は含まれていない(日本診断治療マニュアルには唾液腺造影検査に劣ると結論)
・定量的評価が初期の時点で評価の対象ではなく,評価から漏れている可能性がある

・半定量的評価と定量的評価の乖離・急性唾液腺炎や慢性唾液腺炎などの病期的な評価までは評価されていない

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・唾液腺超音波検査が非侵襲的にSjogrenの唾液腺病変の定量的な評価になりうる可能性

<この論文の好ましい点>
・現在国際的に決まった定義のないSjogrenの唾液腺病変に対し,その評価を一から検討した点

担当:清水 国香

 

 

 

 

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