Rituximab versus tocilizumab in anti-TNF inadequate responder patients with rheumatoid arthritis (R4RA): 16-week outcomes of a stratified, biopsy-driven, multicentre, open-label, phase 4 randomised controlled trial
著者 Frances Humby, et al.
掲載雑誌/号/ページ Lancet 2021; 397: 305–17
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<サマリー>
生検でRNAシークエンシングを用いB細胞が少ないと分類したリウマチ患者でCDAI50%を達成した患者がrituximabと比較してtocilizumabで優位に多かった。
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<背景>
P:2010年ACR/EULAR関節リウマチ分類基準を満たした関節リウマチ患者
今回の2剤以外の生物学的製剤が効果不十分もしくは不認容だった患者。
I:rituximab投与群:2週間隔で2回rituximab 1000mg投与
C:tocilizumab投与群:月一回でtocilizumab 8mg/kg投与
O:16週時点でのCDAI 50%達成率
<セッティング>
2013年2月28日から2019年1月17日の間。欧州5か国19施設
<population およびその定義 >
・18歳以上で2010 ACR/EULARの関節リウマチ分類基準を満たす関節リウマチ患者のうちNICEガイドラインでのリツキシマブ投与の適応になる患者。具体的には以前に生物学的製剤を1剤以上使用し効果不十分もしくは不認容であった患者、今回はそのうち使用した生物学的製剤がtocilizumab、rituximabでない患者。
・患者は研究参加時点で関節鏡もしくは関節エコー下での滑膜生検後、HE染色・免疫組織化学染色を行った。CD20の発現を元にスコアリングし、B細胞豊富、B細胞少量胚中心陽性に分けた。明らかな滑膜組織を認めなかった場合は不明としている。主要結果解析には胚中心陽性群と不明群は含まない。
・同時にRNAシークエンシングを行い、B細胞豊富、B細胞少量に分けたものも分類。
<主なアウトカム、および、その定義>
16週時点でのCDAI 50%以上の改善率
<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
他施設非盲検化RCT
<解析方法>
χ2検定またはフィッシャーの正確検定
<結果>
2013年2月28日から2019年1月17日の間に、212名の患者がスクリーニングされ、そのうち190名(89%)が同意し、167名(79%)が滑膜生検を受け、164名(77%[女性131名])が2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられた。
【Fig 1】 割付
212名の患者がスクリーニングされ、164名が2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられた。
【table1】患者背景
全体で平均年齢55歳、罹病期間は9年間。平均DAS 28ESR 5.81と高疾患活動であった。
70%が過去に1剤のみ生物学的製剤投与を受けており、それ以外は2剤以上の生物学的製剤使用歴がある。
【table2】B細胞少量の患者集団
B細胞少量の患者集団ではCDAI50%は16週時点でrituximab群とtocilizumab群で統計学的な差は認めなかった(45% vs 56%群間差:11%、95%信頼区間[CI]:-11~33、p=0.31)。しかし、RNAシークエンシングによるB細胞少量の患者集団では、CDAI 50%を達成した患者の割合はrituximab群と比較してtocilizumab群で有意に高かった(36% vs 63% 群間差:26%、95%CI:2~50、p=0.035)。
【table3】B細胞多量の患者集団
ほとんどのエンドポイントで2群間に有意な差は認めなかった。
Rituximabを使用したB細胞多量と少量の患者集団間で比較したが、CDAI50%の比較で有意な差はなし(p=0.81)。
【table4】副作用
有害事象(108例中リツキシマブ群76[70%]、117例中トシリズマブ群94[80%]、差10%[95%CI -1~21])および重篤な有害事象(108例中リツキシマブ群8[7%]、117例中トシリズマブ群12[10%]、差3%[-5~10])の発生率は、治療群間で有意な差はなかった。48 週間の試験期間中に悪性腫瘍の報告はなかった。
リツキシマブ群の 2 例(角膜融解(予期せぬ重篤な有害反応の疑いとして報告された)および自殺)とトシリズマブ群の 3 例(胸水、胸痛、サイトカイン放出症候群)は、重篤な有害事象により試験レジメンを中止した。なお、滑膜生検に関連する重篤な有害事象は報告されていない。
<結果の解釈・メカニズム>
初の生検ベースの研究であり、今回組織学的なスコアリングのゴールドスタンダードがなく、先行研究をもとにスコアリングのカットオフ値を設定したものの今回の試験では最適でなかった可能性。またRNAシークエンシングでは分化段階が異なるB細胞が検出でき、感度が高かった可能性。また病理検査と比較してRNAシークエンシングが客観的な評価ができた。
<Limitation>
B細胞の多寡について基準が間違っている可能性
トシリズマブ自体がB細胞の機能と生存を調整するため対照薬として不適の可能性
二重盲検化されてないこと(ただし倫理委員会が二重盲検化は実用的でないと判断)
以前の治療内容と併用薬については検討していないこと
主要アウトカムがCDAI50%であること
<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
今後同様の研究が他剤で行われれば滑膜生検の結果を用いて、個々のBIO選択が行える可能性がある。
滑膜生検で副作用があまり生じないことがわかった。
<この論文の好ましい点>
滑膜生検を組み込んだ研究であること。
<この論文にて理解できなかった点>
B細胞多量の患者でrituximabがtocilizumabに比べて治療反応が同等であったこと。
担当:林 智樹