膠原病患者さんのニューモシスチス肺炎に対する治療および予後因子【Journal Club 20210526】

Estimation of treatment and prognostic factors of pneumocystis pneumonia in patients with connective tissue diseases

Yuichi Ishikawa, Kazuhisa Nakano, Kei Tokutsu, Hiroko Miyata, Yoshihisa Fujino, Shinya Matsuda,

Yoshiya Tanaka

The First Department of Internal Medicine, University of Occupational and Environmental Health, Japan, Kitakyushu, Japan

RMD Open 2021;7:e001508.

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<サマリー>
DPCデータを使用した膠原病に合併したニューモシスチス肺炎(PCP)を対象とした記述研究。34.2%が死亡し予後不良因子は高齢(HR1.06)と間質性肺炎合併(HR1.65)であった。
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<セッティング>
2014.4月-2016.3月までのDPCデータを使用

<研究デザインの型:RCT、横断研究、前向きコホートなど>
記述研究

<Population、およびその定義>
膠原病でありPCPを発症した方

①膠原病患者
定義:ICD-10  codesで診断
M329  (adult- onset  Still’s disease),  M352  (Behçet’s  disease),  M341  (CREST syndrome),  M308  (cutaneous  polyarteritis  nodosa), M329  (dermatomyositis),  M354  (eosinophilic  fasciitis), M301  (eosinophilic  granulomatosis  with  polyangiitis), M500  (Felty  syndrome),  M316  (giant- cell  arteritis), M313  (granulomatosis  with  polyangiitis),  M359  (IgG4- related disease), M510 (Kaplan syndrome), M321 (lupus nephritis), M530 (malignant rheumatoid arthritis (RA)), M300  (microscopic  polyangiitis),  M351  (mixed  CTD/overlap  syndrome),  M300  (polyarteritis  nodosa),  M352 (polymyalgia rheumatica (PMR)), M332 (polymyositis), M600 (remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting  oedema),  M339  (respiratory  disorders  due  to dermatomyositis),  M348  (respiratory  disorders  due  to systemic sclerosis), M600 (RA), M510 (rheumatoid interstitial lung disease (ILD)), M520 (rheumatoid vasculitis), M349  (scleroderma),  M610  (seronegative  RA),  M350 (Sjögren’s  syndrome),  M329  (systemic  lupus  erythematosus),  M340  (systemic  sclerosis)  and  M314  (Takayasu arthritis).

②PCP患者
定義:ICD-10 code J173
*PCPとして治療をしていない方、PCPとして治療を開始したものの診断変更のもと他の治療へスイッチした方は除外
*PCP治療は最低7日間実施した方を選定
*ST(最低4錠)、ペンタミジン、アトバコン(750㎎を2錠)

<主な要因、および、その定義>       
なし

<Control、および、その定義>
なし

<主なアウトカム、および、その定義>
・アウトカム:PCP治療後の30日および60日死亡率

<解析方法>
・記述
・単変量:t- test、Mann- Whitney  test、χ 2  test, Fisher’s  exact  test, log-rank test
・多変量解析(予後予測):Cox 比例ハザード回帰モデル
・交絡調整:age, sex, ILD、膠原病基礎疾患
・欠測対処:記載なし

<結果>
・333例の膠原病に合併するPCP症例を用いて解析
・年齢(中央値)71歳、女性は63.1%
・36.6%でILD合併
・RA OR PMR症例は、15.6%
・集中治療を要した症例:11.1%
・人工呼吸器管理を要した症例:24.9%
・ステロイド療法を行った症例:96.7%
・ステロイドパルス療法を実施した症例:30.7%
・ST治療のみを実施した症例:64.3%
・病院内死亡は34.1%
・死亡者では、血管炎やILDの合併が多かった。
・生存者では、ST単剤治療者がおおかった。
・COXを使用した予後因子の検討では、高齢 (HR 1.05, 95% CI 1.03 to 1.08)、 ILD合併  (HR 1.65, 95% CI 1.12 to 2.42)  が抽出された

<結果の解釈・メカニズム>
・予後因子の検討では、高齢、 ILD合併が抽出されたが、変数投入が不十分である可能性がある。しかしながら、臨床的な感覚や既報からは支持できる結果である。
・ST使用者がペンタミジンやアトバコンより予後がよかった結果という解釈は、多変量検討ではなくSTが優れているとは言えない。また、STが使用しづらい基礎疾患(CKDなど)を有したため予後が悪い集団が集まった可能性、STからペンタミジンやアトバコンにスイッチした症例はPCPではなくIP増悪や他の感染症であった可能性などもありうる。
・抗真菌剤やサイトメガロウイルスの治療も並行して行われている症例がそれぞれ33%、16.6%存在した。ST単独で無効であったために、追加の治療として行ったのか、当初から併用したのかは不明である。死亡症例に多かったのであれば後者と考えるが、論文ではその検討は行われていない。

<Limitation>
・観察研究であること
・PSL量、免疫抑制剤の種類や量、予防投与の有無、CKDなどの重要な因子が含まれていない。CKDはデータとしてあるはずなので、含んでの検討もあるとよい
・退院後や転院後の予後の追跡ができないため、アウトカムの評価が不十分である。
・PCP診断が不十分な可能性あり
・DPC施設外でのデータは含まれない
・ICD10コードと治療のみでの定義であるために、疑いとして治療が入った方がはいった可能性がありover diagnosisしている可能性がある

<どのように臨床に活かす?どのように今後の研究に活かす?>
・予後の因子として抽出された年齢、ILD合併は以前からいわれていることであり新規性は高くない。さらなる詳細な検討をする際には、PCP発生が少ないために小規模の多施設での検討では困難であることが想定され、NDBなど別の大規模データを使用しての検討が望まれる。
・PSL量、免疫抑制種類、予防投与の有無などによるPCP発症が重要なCQであり、上記のデータを使用しての解析ができる。

<この論文の好ましい点>
・膠原病関連研究でDPC研究を行っている数は多くなく、医療データの有効活用ができ、当領域における医療ビックデータの利活用の推進となりうる。

担当:矢嶋 宣幸

 

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