Ultrasound of shoulder and knee improves the accuracy of the 2012 EULAR/ACR provisional classification criteria for polymyalgia rheumatica
Kei Kobayashi, Daiki Nakagomi, Yoshiaki Kobayashi, Chisaki Ajima, Shunichiro Hanai, Kensuke Koyama, Kei Ikeda
Rheumatology, keab506, https://doi.org/10.1093/rheumatology/keab506
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サマリー;肩および膝関節の超音波評価による 2012 年 ACR/EULAR リウマチ性多発筋痛症分類基準の精度の向上
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P:PMRが疑われる患者
I: 肩と膝の超音波評価で診断する
C:超音波評価をしないで2012 EULAR/ACR診断基準で診断する
O:診断正確性
<セッティング>
山梨大学医学部附属病院 2017年1月から2019年12月
<研究デザインの型>前向きコホート
<対象者>
■新規に発症した50歳以上で両肩痛があり、赤沈またはCRPが高い患者さん141人を対象に治療前の症状、検査結果、関節超音波所見を検討しました
■患者はステロイド含など免疫抑制薬を投与された患者は除外
■超音波検査で観察する関節部位は、肩関節と膝関節
上腕二頭筋長頭腱,三角筋下/肩峰下滑液包,棘上筋腱,肩甲下筋腱,肩甲上腕関節膝関節膝蓋上嚢,内側/外側膝関節面,内側/外側側副靱帯,膝窩筋腱
各部位の関節滑膜炎,腱鞘滑膜炎,滑液包炎,腱炎の有無を評価した.
<解析方法>
パラメトリック検定,ノンパラメトリック検定,カイ二乗検定、フィッシャーの正確検定、マクネマーの検定
<結果>
■1年後の最終診断の内訳は,PMR 60名,PMR疑い 21名,RA 60名
PMR疑いの主な最終診断は,RA(n=6),強直性脊椎炎(n=1),乾癬性関節炎(n=3)変形性関節症(n=3),未分化性関節炎(n=7),腱断裂(n=1)
■肩甲骨や膝関節の滑膜炎はPMR患者ではほとんど見られなかった(figure 1)
PMRでは肩峰下滑液包炎が高頻度に認められたが,肩峰下滑液包は肩の症状があり
ESR/CRPが上昇している同年齢・同性のRAにも多く認められたため特異度は低い
LHBT(上腕二頭筋長頭筋腱),PopT(膝窩筋腱),SSpT(棘上筋腱)とSScT(肩甲下筋腱)の腱鞘炎,膝内側および外側側副靭帯の炎症はPMRにより特異的であり(figure1),PMR分類の精度向上に寄与した(table3,table4,figure 2).
■PMRは肩だけでなく膝も超音波異常が頻繁に検出される関節であることを明らかにした.(figure1)また,PMRと診断された患者の95%が膝に何らかの超音波異常を有しており,77%が圧痛,10%が腫脹を有していた.この膝の病変の有病率はこれまでにPET-CT(84%)やPET-CT/MRI(76%)で報告されたものよりもさらに高かった.
■LHBT(上腕二頭筋長頭筋腱)とPopT(膝窩筋腱)の腱鞘炎は最も頻繁に検出された
超音波病変でありPMR患者では85%の患者が両方を有していた.
<結果の解釈・メカニズム>
■PMRは急性から亜急性に発症する炎症性リウマチ性疾患である.発症メカニズムはほとんど解明されておらず,特異的な血清学的または画像的バイオマーカーがないため,診断は困難である.EULAR/ACR基準に超音波検査項目を追加することでPMR分類の精度が上がることが証明された.ただし股関節のエコーは不要である.
(エコー所見を用いる場合8点満点5点以上をPMRと分類する)
対象部位)①三角筋下滑液包炎②上腕二頭筋腱鞘滑膜炎③肩甲上腕関節滑膜炎
■LHBT(上腕二頭筋長頭筋腱)とPopT(膝窩筋腱)が同時に障害される事実は解剖学的に類似していることに関連していると考えられる
■肩および膝の腱鞘炎や腱炎はPMRに特徴的であり,RAとの鑑別に有用と考えられる
<Limitation>
■本研究は日本で行われた単施設の研究であり他の国には一般化できない可能性がある
■サンプル数が限られており統計学的有意性を示せなかった
■股関節の評価を行っていないため、膝と股関節の間の直接的な比較や研究間の比較が困難
■腱と靭帯のGS異常については評価されておらず、PMRの分類やPDシグナルとの関連性における役割は不明のままである.
<この論文の好ましい点>
■PMRの診断において肩と膝の両方の超音波検査の価値を前向きコホートを用いて評価した初めての研究である点
■これまで鑑別が困難であったRAとPMRの区別が関節超音波で容易にできるようになる可能性を見いだせた点
担当:伊藤拳一